2020年01月31日

『介護職がいなくなる：ケアの現場で何が起きているのか』 | 「介護求人ナビ　介護転職お役立ち情報」

■書名：介護職がいなくなる：ケアの現場で何が起きているのか
■著者：結城康博
■出版社：岩波書店
■発行年月：2019年9月

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離職防止のカギは「管理職」！介護職のストレスを知る管理職の元に人材が集まる

介護の人材不足が大きな社会問題になりつつある。介護の現場にいる人なら、実感として感じている人も多いのではないだろうか。本書を読むことで介護現場の現状を客観的に見つめ、解決に向けて一歩踏み出したいものだ。

介護職の人材不足の原因のひとつに、『介護職を目指す人が減っている』という事実がある。
介護福祉士養成学校は軒並み定員割れしているのだという。2016年度以降、定員の5割を切った状態が続いているというから驚かされる。

また、せっかく介護の仕事についても、離職していく人が多いのも深刻な問題だ。
2017年度の調査では、介護職の離職率は16.7%。その介護職を辞めた人のうち6割以上が、わずか3年未満で辞めているのだそうだ。

介護職が仕事を辞める理由はいくつかあるが、最も多い理由が『人間関係』。中でも著者は、「中間管理職による二次被害」を大きく問題視している。

本書の第三章「なぜ辞めてしまうのか」では、ハラスメントの意識が希薄なままの中間管理職が、被害にあった部下の介護職を、救うどころか苦しめているというのだ。

たとえば、利用者やその家族からハラスメントを受けたヘルパーのケース。
上司に相談しても辛さをわかってもらえず、むしろプロとして未熟だとみなされてしまう。この上司の対応によって、ヘルパーは二度傷つけられるというわけだ。
そうすると、「自分はヘルパーとして適さない」「転職したほうがいい」と悩んだ末、離職していってしまうのだ。

もう一つの例として、介護施設で利用者から繰り返し胸やお尻を触られた若い介護職のケース。
上司である中間管理職の女性に担当を変えてほしいと相談したところ、次のような反応をされたのだという。

＜あの男性要介護者は、必ず、若い介護職をターゲットに触る「癖」があるけど、中年の私には触ってこない。その意味では、触られるうちが「華」かもしれない。プロの介護職は、一部の要介護者に触られ、徐々に「かわし方」を覚えていくものだから、自分なりに「拒否」の技を考えてみて。私も、若い時は触られたけど、徐々に「かわし方」を身につけたものよ。相手は寝たきりの高齢者だからね＞

リーダーやマネージャーといった中間管理職の立場にある人は、似たようなことを言ったり、考えたりしたことはなかっただろうか。
ハラスメントの被害者である介護職に対しては、話を十分に聞き、迅速に対処することが必要であることを肝に銘じなければならない。

中間管理職が介護職のストレスを理解し和らげる努力をしている介護現場では、人手不足になりにくいという事実も紹介されていて希望を感じる。
このような職場では、働きやすさを介護職自身がアピールし、他から職員を呼び寄せている事例もあるそうだ。

本書は「岩波ブックレット」の一冊で、薄い小冊子となっている。介護に関心のある人なら誰でも、気軽に手に取り、介護人材不足を解決していくために何ができるかを考えてみたい。
特に、施設長やリーダー、フロア長、サービス提供責任者など、管理職や中間管理職の立場にいる人や目指す人にとっては、気づきが多いことだろう。

著者プロフィール（引用）

結城康博（ゆうき・やすひろ）さん
1969年生まれ。淑徳大学教授。法政大学大学院博士課程修了（政治学）。地域包括支援センター（社会福祉士・ケアマネジャー・介護福祉士）および民間居宅介護支援事業所勤務ののち、現職。著書に『国民健康保険』（岩波ブックレット）、『医療の値段――診療報酬と政治』『介護　現場からの検証』『在宅介護――「自分で選ぶ」視点から』（以上、岩波新書）など多数。

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