グループワークでは、それぞれの法人の強みと課題を付箋に書き出す
介護の仕事において、最も大切なのは人材。中でも、研修が手薄になりがちなユニットリーダー育成のため、新たな研修が開発されました。
社会福祉法人小田原福祉会、社会福祉法人合掌苑、社会福祉法人福祉楽団の3つの社会福祉法人が、株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(以下、RMS)とともに開発したのが、「DRAW UP!研修」です。この研修について、3回に分けて紹介しています。
1回目は、研修開発に取り組んだ意図と、研修の前半部分について紹介しました。
2回目の今回は、研修の「STEP 2」と、この研修の意義についてお伝えします。
*「DRAW UP!研修」…1回目、2回目、3回目(最終回)はこちら
自他の介護事業所を比較し、様々な刺激を受ける
■STEP②の主なプログラム
研修のグループメンバーで互いの事業所を訪問し合う「相互現場訪問」。これを終え、「STEP 2」で研修メンバーが再び集まりました。
「相互現場訪問」での体験を踏まえて、「STEP 2」の1日目は、3法人が入り交じったグループで、それぞれの法人の強みと課題を付箋に書き出し、共有します。
どうすればよりよい職場になるのか、他の法人から見た意見も聞きながら考えていくのです。
この研修の対象であるユニットリーダーたちは、それぞれのユニットに張り付き、忙しい仕事に追われながら日々を過ごしています。
よりよいケアや職場のあり方を考えるにしても、自分の職場以外のスタイル、考え方に触れる機会はまだあまり多くありません。
比較対象を持たなければ、自法人の枠内での発想にとどまってしまうかもしれません。
そんなユニットリーダーたちにとって、他の法人で同じ立場にある介護職との相互交流はどれほど意義深いことでしょうか。
他の法人のやり方を聞く。相互訪問によって実際の現場を目の当たりにする。自法人のやり方についての意見を聞く。
同じ特別養護老人ホームなのに、こんなに違うんだ。ここの法人は、こんなにすごいことをやっているんだ。いや、うちだって負けていない。これはうちの方がすごいぞ――。そんな様々な思いを抱くことでしょう。
「STEP 2」の2日目は、3法人の入り交じったグループで出た意見を持って、今度は、同じ法人の5人ずつのグループに分かれて、自法人の強みと課題を再確認します。
様々な意見を共有することで、自法人、自分の職場、そして自分自身の強みと課題が明確化されていきます。そして、それを踏まえた上で、リーダーとして自分自身が何をすべきか、行動計画を立てるのです。
3法人は相互に情報をフルオープンに
この「DRAW UP!研修」を開発するに当たっては、RMSの藤江嘉彦さんが3法人に出向いて、職員から各法人の課題、目指すところを時間をかけて聞き取りました。
その上で研修を組み立て、さらに、当日のトレーナーも務めています。
こうした時間をかけた準備、きめ細かい対応により、参加者にこの研修の目指すところが明確に伝わり、深い体験を促すことができるのです。
また、この研修の実施に当たり、3法人はそれぞれに相互の情報、ノウハウを惜しむことなく公開しています。知りたいことは、聞けば何でも教えてもらえる。「相互現場訪問」のときには、見たいものをすべて見せてもらえる。
隠された部分があっては、なぜ自法人ではできないことがこの法人ではできるのかが、明確になりません。
全てがオープンであれば、できていないのは、実はアイデア不足であったり、意欲の問題であったりという、言い訳のできない事実を突きつけられることになります。だからこそ、それぞれの強みと課題が浮き彫りになるのです。
3法人は、この研修によって得られたノウハウをオープンにし、ロールモデルとして活用していってほしいとのこと。
介護人材は、もう一法人だけで育てていくのは難しい。そんな思いから始まった「DRAW UP!研修」。
最終回の次回は、研修を開発したRMSの藤江さん、そして、研修受講者の声を紹介します。
*「DRAW UP!研修」参加3法人
社会福祉法人小田原福祉会
社会福祉法人合掌苑
社会福祉法人福祉楽団
*取材協力
社会福祉法人小田原福祉会 法人事務局 人財育成センター センター長 井口健一郎さん
社会福祉法人合掌苑 マネージャー 森田健一さん
社会福祉法人福祉楽団 サポートセンター 人事部長 上野興治さん
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ ビジネス・テクノロジーデザイン部事業開発グループ 藤江嘉彦さん
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
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