◆デイサービス(正社員) → 介護老人保健施設(派遣→正職員)
I・Uさん(女性・41歳)
●デイサービス(勤務期間:1年10カ月/年収:約300万円)
●介護老人保健施設(勤務期間:1年/年収:約420万円)
介護の仕事歴(上記以外):介護付き有料老人ホーム(正社員/2年6カ月)
保有資格:ヘルパー2級(現介護職員初任者研修)、介護福祉士
家族構成:両親、長男(中学2年生)、長女(中学3年生)
*W・Rさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、
2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
【介護の仕事をするきっかけ】人の役に立ち、資格を糧にキャリアアップできる
高級な化粧品を販売することに違和感があった
子どもたちが3歳と4歳のときに離婚をし、仕事をしなければと考えて、化粧品の美容部員になりました。
そこで販売する化粧品は高く、化粧水が1万円以上です。
その分、効果や安全性には自信があるとうたってきましたが、正直、「無添加」で人気がある2000円の化粧水と、成分はほとんど変わりません。
高級感あふれるパッケージと、有名女優が出てくるテレビコマーシャル。そのイメージで、だましているようなものだと感じていた矢先でした。
きっかけは東日本大震災
東日本大震災が起こり、こんな化粧品を売っている場合ではない、という気持ちが強くなって……。
もっと人の役に立つ仕事がしたい。身体がうまく動かない人やお金があまりない人にも手を貸せるような。たとえばそれは介護の仕事なのではないか……?
仕事というものの価値観を根底から考え直しました。そして、介護の仕事について調べ、介護職はすたれることがない、基本的に売り手市場の仕事だということもわかりました。
資格を次々と取得していけばキャリアアップもできる。
美容部員のように、若さで勝負する仕事でもありません。30代半ばを迎えて、このことも自分には大きかった。
ヘルパー2級(現介護職員初任者研修)の資格を取得し、介護付き有料老人ホームに勤務しました。
【1回目の転職のきっかけ】介護付き有料老人ホーム→デイサービス
はじめての介護の仕事は、勤務先に対するこだわりがなかった
有料老人ホームに就職しよう、という強い意志があったわけではありません。
むしろ、条件重視でした。「子どもが小さいので夜勤がなく、自宅から通えるところ」と思ってハローワークで探したのです。
介護施設による特徴もまだよくわからないときだったので、正直、有料老人ホームでも、特別養護老人ホームでも、夜勤なしで働かせてくれるのなら、どこでもよかったのです。
たまたまその条件でOKを出してくれたのが、近くの介護付き有料老人ホームでした。
高級で入居金が高い有料老人ホームだったので、利用者さんも裕福な方が多かった。上品で教養のある方が多いだけあって会話から学ぶことも多く、その点では正解だったと思いました。
夜勤の人もいるのに先に帰るのがうしろめたい
しかし、フロア全体の24人をひとりで見る時間もあり、とても忙しいのです。
自室に入ってしまう方が多く、中で何をしているかが見えないところもあり、事故が起きないか、心配でした。
高価な入居金や利用料に見合わない介護をしているようで、うしろめたさもありました。
また、若い職員が多いことや、残業ができずにひとりで先に帰ってしまうことにも、やりにくさを感じて……。
それなら、全員が日勤であり、夜勤のないデイサービスのほうが働きやすいと考えました。
【2回目の転職のきっかけ】デイサービス→介護老人保健施設
分刻みの忙しさ、非効率な残業、人間関係の悪さ
デイサービスなら、最初から全員が日勤なので、気がラクだと思いました。
ところが、デイサービスの1日はとても忙しい。人手不足だったこともあるのでしょう。
私は車の免許を持っていることもあり、送迎も担当しました。
利用者さんをデイサービスに迎えたら、すぐに入浴介助、昼食のしたく、レクリエーション、そして車でご自宅まで送っていきます。
その間は、まさに分刻みです。スタッフが少ないこともありますし、歩きまわる利用者さんの転倒にも気をつけねばなりません。
それに、利用者さんをご自宅に送ったら勤務が終わるわけではなく、そのあとは頻繁に会議があるのです。
管理職扱いで入職したのですが、同じ役職の女性の働き方がとても効率が悪い。彼女が会議の進行をすると、5時からの会議が2時間も3時間もかかるのです。
早く帰れないジレンマを、また感じなくてはなりませんでした。
彼女の介護の価値観も、私とは合わなかった。
利用者さんを平気で怒鳴ったり、まるで「訓練」のように命令して、リハビリのようなことをさせる。
利用者さんは、ここに来ることが楽しいんだろうか、と考え込んでしまいました。
残業代カット、その結果人手不足に
それに、1年たつと経営状態が悪くなり、残業代がカットに。人がやめていくので、普段の勤務も人手不足でさらに忙しい。
さらにひどかったのは、年2回あるはずのボーナスも1回しか出ないのです。
年収で350万円ぐらいを期待していたのに、300万円になるかならないか。しかも、正職員のはずなのに確定申告が必要で、そこから所得税や住民税が引かれるのも、わけがわからず、実際に自分に入る給料は想定よりかなり低いものでした。
すべてがいやになって、「辞めます!」と宣言しました。
介護福祉士の資格をとれる時期になっていたので、勉強して無事、資格を取得。この資格を持って、別のところに就職しようと決めました。
環境を変えたかったし、ドクターや理学療法士も常駐する介護老人保健施設(老健)に行くのはどうかと考えました。
少々疲れてしまったので、今回は「派遣」の形を選びました。
これなら日勤で、残業なしで帰れる。ちょうど子どもたちが思春期にさしかかり、難しいときなので、子どもたちと接する時間もきちんと確保したい。
残業なしの働き方が大事だと考えました。
介護老人保健施設 同じ施設で、派遣→日勤常勤の正職員へ
派遣は残業もなく時給も高い
派遣の身分は、私のように家庭があり夜勤ができない人や、体調不良や資格試験を抱えている人にとっては非常にありがたいです。
残業は基本的になし。余計な任務はなく、時給も高い。
私の場合は介護福祉士資格を持っていたためか、時給1500円でした。8時間働けば、1日1万2000円になります。
週休2日をしっかり確保したとして、月に26~27万円になります。年収だと……あれ、320万円!?
驚きました。あんなに残業続きで嫌な思いをしていたデイサービス時代よりも、給料が高いのです。
週5日働くので、社会保険もきちんと整備してくれる。我慢していたのがバカみたいだと思いました。
「派遣から正職員になってもらえないか」と打診が
派遣で4カ月働いて契約を更新するときに、法人から「正職員になってもらえないか」と言われました。
でも、私は夜勤をするつもりがなく、日勤で基本的に土日は休みたい、と思っているのです。
そんな条件で正職員になることはできないと思っていたのですが、「それでもいいから正職員で」と言われました。
介護の現場は辞める人が多いこともあり、施設側はいつも穴埋めを考えなければならず大変。絆を深めて働いてもらえるなら、派遣より正職員のほうがありがたいというのもあるようです。
そんないきさつで、「夜勤をしない、土日休みの正職員」として働くことができました。
お給料はボーナスがある分、以前よりもいいのです。正職員になって半年ですが、このままでいくと年収は400万円以上になりそうです。
次回は、「デイサービスと老健の転職前後の違い」について、詳しく聞きます。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*W・Rさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、
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