◆訪問リハビリテーション事業所(正職員/理学療法士) → 訪問介護事業所(正職員/介護職・サービス提供責任者)
W・Kさん(男性・33歳)
●訪問リハビリテーション事業所(勤務期間:3年/年収約350万円/ボーナスあり)
●訪問介護事業所(勤務期間:4年/年収約470万円/サービス提供責任者手当・ボーナスあり)
介護業界以外でのその他経験:回復期病院(理学療法士)
保有資格:理学療法士、実務者研修
家族構成:妻、子ども4人(8歳・6歳・4歳・2歳)
*W・Kさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
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【どんな形で転職するのか】理学療法士の資格と経験を生かした介護職
介護職になるために理学療法士の肩書きを捨てる気持ち
「介護」という仕事が自分の考える理想の支援ではないかと思っていたところで、訪問リハ・訪問介護を手がけている会社の社長と出会い、転職を決意しました。
僕はそのとき、理学療法士として7年のキャリアがありました。
しかし、この先ずっと理学療法士としてやっていくのか、という迷いもあったんです。
診療報酬が下がっていく中で、僕たち医療職の給料も下がっていかざるを得ません。
医療現場の中では医師が一番給料と地位が高く、看護師、そして理学療法士や作業療法士、とピラミッドができていて、それは給料の面でも似たようなピラミッドだと思うのです。
ますます医療現場でのポジションや収入が下がっていくのではないかと焦りに似た気持ちもありました。
もちろん、介護職だって、介護報酬の中でサービスを提供しているわけですから、厳しい状態なのはよくわかっています。
しかし、高齢化社会の中で、国が介護に力を入れ続けていくのは目に見えていますし、介護職の給料を高くしないと介護の手がなくなってしまう、と痛感している。
その点では、介護業界には未来があるな、と思えたし、介護業界に魅力を感じる面でもありました。
そこで、入社したいと考えていた会社の社長には、「理学療法士であることを忘れて、介護職として働きます」と言いました。
介護職の人は、医療職に遠慮する面もあり、やりにくいと思ったのです。
自分の理学療法士という資格を、介護の業界でひけらかすのはよくない、と。
介護×理学療法で、特色ある介護サービスを提供しよう
実は、転職先の会社の社長も、理学療法士の方です。
「せっかく取った国家資格を生かさないなんてもったいない。
むしろ、医療のバックボーンがしっかりしている介護なのだ、ということで、理学療法士の資格を大事にして、上手にアピールしなさい。
これからはうちの訪問介護事業所も、『医療のエビデンスのある介護』として、医療職の知識や経験に基づいた介護サービスを打ち出していこう。頼むよ」と言ってくれました。
理学療法士の経験も生かして、訪問介護事業所のサービス提供責任者(サ責)として活躍してほしい、ということです。
自分に期待してもらえて、とてもうれしい気持ちになりました。
【転職の前にしたこと】実務者研修450時間を受けてから転職
将来を見据えて、実務者研修が必要と考えた
「自宅での生活を支えるのは理学療法士ではなくて介護職だ!」という思いを強くしたものの、介護の資格を持っていない自分ではどうしようもない。
介護職になろうとしたら、手っ取り早く介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)を取るのが普通ですが、それでは足りないと思いました。
昔はヘルパー2級・初任者研修でも、サ責としてのデメリットはありませんでしたが、今はヘルパー2級や初任者研修だけでサ責になると、事業所に介護報酬の減額があり、実質的に難しいのです。
サ責になること、そして将来的に介護福祉士の資格を得ることを考えたら、実務者研修を修了しておくことが急務だと思えました。
ただ、実務者研修の研修時間は450時間。
研修だけ集中的に受ければ早く取得できますが、当時2人の子どもがいたので、生活を考えると、仕事をやめて研修だけに専念することはできませんでした。
仕事をしながら、土日を使って半年間で実務者研修を修了
結局、転職する前に、訪問リハビリテーションの仕事をしながら、土日の休みを使って実務者研修を受けました。1日9時間研修を受けても半年ぐらいかかってしまいますが、それはしかたがないと思いました。
実は、訪問リハビリテーション事業所では給料があまり高くなかったので、子どもたちを育てるためにも、他の事業所でもアルバイトとして理学療法士をしていました。
平日は訪問リハの勤務後にアルバイトをして、土日は9時間の研修を受け…それを半年間続けたのは、本当にきつかった。
それでも、転職したい、転職して介護職として花開きたい、という思いに突き動かされ、なんとか実務者研修を修了しました。
ちなみに、実務者研修の費用はすべて会社で支払ってくれました。
介護職の資格を持っていない時点で採用を決めてくれた社長に感謝したいですし、資格取得にも尽力してくださり、ありがたい限りです。
【転職先でのポジション】訪問介護事業のサービス提供責任者に!
転職後は、もちろん訪問介護事業所に所属。最初は訪問ヘルパーとして働き始めることに。
とにかく、介護職は初めての経験です。先輩の女性職員に介護の仕事を一から教えてもらいました。
とはいえ、以前も訪問リハビリで利用者さんのご自宅に伺っていましたし、病院勤務のときには患者さんのオムツ替えなどもやっていましたから、介護職未経験としては、比較的スムーズになじめたかなと思っています。
それに、以前から、理学療法士とはいえ、「医療でしかサポートしない」などとは思っていませんでした。
自宅にお伺いするのですから、家での暮らし全体を見渡し、「役に立つ仕事を」と考えていたので、介護のマインドの部分でも問題なかったと思っています。
ただ、最初からサービス担当責任者(サ責)として入職はしていたんですが、介護のイロハも知らなかったのではじめは名ばかりでした。周囲に教えていただきながら、なんとかやっていきました。
【転職後の処遇】給料は最大限に優遇してくれた
転職当時は、妻が3人目の子どもを妊娠したばかりでした。
妻からすれば、安定した職場とアルバイト先があるのに、そしてこれから生まれる子どもがいるのに、どうして転職するの!?という気持ちだったと思います。
だから、給料は減らしたくない。
それで、社長には図々しく、「以前の職場の給料とアルバイトの賃金分を足した給料をもらえないか」とお願いしました。
社長は手当や賞与、その他あれこれ工夫してくれて、なんとかその水準に近い金額を提示してくれました。
本当にうれしかったし、その思いと金額に見合う仕事、それ以上の仕事をしなければと心に近い、今に至っています。
入社後3か月の試用期間は、当然ながら提示いただいた金額よりは安かったです。
でも今は、年収500万円に近い金額をもらっていて、正直、どの職員よりも自分の給料が高い。
この給料で働き続けるには会社の売り上げを伸ばさないといけないので、おのずと自分は何をしなければいけないかを考えるようになりました。
【転職後のキャリアプラン】会社のためにできることをいつも考えている
今、会社の売り上げのために必要なことは、利用者さんを増やす「営業」と、「経営の多角化」でしょうか。
サ責としての仕事だけを担うのではなく、近隣の居宅介護事業所には頻繁に顔を出し、電話やメールでアピールし、利用者さんを紹介してくれるよう、営業しています。
地域包括支援センターにも顔を出し、最近の介護の状況などの情報収集もさせていただいています。
その上で、うちの事業所独自の「色」を出して、利用者さんに魅力と感じていただかなくては、と思っています。
その「色」というのは、まさに社長が言った「医療のエビデンスのある介護」です。
うちの事業所の特徴である「医療のエビデンスのある介護」を徹底し、わかっていただくためにも、自社の介護職や、地域の専門職などとの連携もとても重要。
毎日、何をすべきかをしっかりと考えて行動するようにしています。
【実際に転職して成功?失敗?】成功したと周囲に言われたい!
成功か失敗か、というのは、自分の軸だけでは答えられません。
周囲から見て、「成功!」と思われないと意味がない、と思っています。
そのために、営業実績などを作ろうとしていますが、まだまだですね。
事業所の責任ある立場として、何をすべきか。社長と相談しながら、実現していきたいです。
副社長のような位置づけで、事業を考え、会社全体の実績を伸ばしていけたときこそ、「成功」だと言えると思っています。
次回は、現在の仕事内容について、さらに詳しく語っていただきます。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
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●先輩たちの職場選びの失敗事例に学ぼう
→ 「こんなはずじゃなかった…」 転職先選び 私の失敗談
●○● 介護業界で転職する時の 基本ノウハウ ●○●
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