厚生労働省の発表によると、介護人材は今後、2020年度(令和2年度)末に約216万人、2025年度(令和7年度)末に約245万人が必要と推計されています。
(参考:厚生労働省「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」)
2020年には約26万人、2025年には約55万人の介護人材が不足する恐れがあり、年間で6万人程度の介護人材を確保する必要があります。
2025年には団塊の世代の全てが75歳以上の後期高齢者となります。つまり、介護を必要とする人も飛躍的に増加することが予測されます。
そのため、今のうちから介護職員の数を増やしていかなければ追いつきません。
勤続10年で8万円給与アップ!介護福祉士の賃金改善の制度って?
介護職員を増やすためにはまず給与水準を全産業平均賃金以上まで引き上げなければなりません。その介護職員への処遇改善の要ともいえる政策が
「介護職員処遇改善加算」の制度です。
2009年(平成21年)10月の「介護職員処遇改善交付金」から発展し、2012年度(平成24年度)より「介護職員処遇改善加算」として介護報酬の加算として組み込まれているこの制度により、現在まですでに介護職員一人あたり月額57,000円相当(介護職員処遇改善加算Ⅰの場合)の賃金改善が行われています。
そして、2019年(令和1年)10月からは、介護人材確保のための取組をより一層進めるため、介護福祉士などの経験や技能のある職員、具体的には介護事業所における勤続10年以上の介護福祉士に対し、月額平均80,000円相当の処遇改善を行う「介護職員等特定処遇加算」が創設されました。
介護職員の給料アップ・待遇改善の取り組みは、どのように進められてきたのでしょうか?
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ベテラン介護福祉士は今後さらに注目される?
基本的に給与の原資となる介護報酬については、介護保険料との兼ね合いがあるため、介護職員処遇改善加算を一律に引き上げるためには介護保険被保険者の負担を増やすか、基本報酬などの他の報酬を減らすなどの対応が求められます。
限られた財源で介護保険制度の持続可能な運用を続けていくためには、介護報酬を一律に引き上げるのでなく、介護福祉士などの国家資格保有者や勤続年数の長い職員といった経験や技能に応じた職員への処遇改善に視線が注がれる可能性もあります。
介護士の賃金の実態は?
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介護士全体の給与の底上げを!
しかしながら、高齢化の進行に伴い介護を必要とする人が増え続けるなか、2025年問題を前に需要と供給の乖離は避けなければなりません。
そのためには、上記のような国家資格保有者や勤続年数の長い職員にとらわれず、
介護職員全体の給与の更なる底上げも必要であるという視点もあります。
これら「介護職員処遇改善加算」に関する議論については、介護報酬の改定時期や消費税の増税など、介護保険制度全体の在り方を検討する際の議題となっており、2021年(令和3年)の介護報酬改定においても、「介護職員処遇改善加算」及び「介護職員等特定処遇改善加算」の効果を検証した上で、加算の拡充や改善が検討されることとなっています。
いずれにしても、国としては介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止や定着促進、生産性の向上といった総合的な介護人材確保の対策が必要であるという認識であることから、介護福祉士などの国家資格保有者の存在価値は大きく、引き続き給与にも反映されることが期待されます。
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