障害福祉業界の中でも、児童支援に関わる仕事「児童発達支援管理責任者」、通称「児発管」。具体的な仕事内容や働く施設、児童発達支援管理責任者として働くために必要な資格や条件とは?
本記事では児童発達支援管理責任者(児発管)とは何か、児童発達支援管理責任者(児発管)になるには、などについて詳しく解説します!
目次
1 児童発達支援管理責任者(児発管)とは?
2 児童発達支援管理責任者の仕事内容
3 児童発達支援管理責任者が働く場所・就職先
4 児童発達支援管理責任者になるには
5 児童発達支援管理責任者の配置要件
6 児童発達支援管理責任者の仕事は大変?
7 児童発達支援管理責任者は仕事の幅が広く、やりがいのある仕事です
児童発達支援管理責任者とは、障害がある子どもの療育や保育にたずさわる専門職の1つです。児童発達支援センターや障害者支援を行う事業所など、児童発達支援のさまざまな現場で活躍しています。
これまでに日本では、1998年に身体障害・知的障害・精神障害のそれぞれの分野で、従事者の養成研修が開始。2006年に障害者自立支援法に基づき、相談支援従事者研修が始まっています。2008年には、障害児や地域移行支援などを学ぶ研修体制が整えられました。その後2012年に児童福祉法が改正され、児童発達支援の専門職として児童発達支援管理責任者が誕生しました。
そもそも「児童発達支援」とは障害のある子どもに対して、集団および個別療育を行う福祉サービスです。児童発達支援センターや障害者への支援を行う事業所などでサービス提供されています。
一人ひとりの障害の状態や特性に応じて、心身の発達を促し、日常生活や社会生活を円滑に営めるようにすることを目的に、福祉的、心理的、教育的、医療的な援助が行われます。
児童発達支援管理責任者は、児童発達支援の現場においてリーダー的な役割を担っています。
障害のある子どもの療育や保育に携わる児童発達支援管理責任者の仕事は多岐に渡ります。
ここでは、児童発達支援管理責任者の仕事内容について詳しく解説します。
児童発達支援管理責任者は子どもとその家族と面談してアセスメントを行い、意向を尊重した支援目標の設定や具体的な課題の洗い出しをします。
アセスメントとは、障害のある子どもの発達の状況や心身の健康状態、家庭環境、生活する地域社会などの情報を収集し、分析することです。
障害のある子どもの発達上の課題を見つけ、心身ともに安定した日常生活を送るための支援目標を立てるために行います。
アセスメントを実施する際は健康や生活、運動、言語、認知、行動、社会性などの幅広い領域で子どもの状態を総合的に把握することが大切です。
そのうえで、事業所でできること・家庭ですべきことを明確にし、課題を見つけて必要な支援を検討します。
一人ひとりの課題を適切に把握しなければ、必要な支援に繋げることはできないため、アセスメントの実施はとても重要です。
児童発達支援管理責任者はアセスメントの内容を踏まえて個別支援計画書を作成します。
個別支援計画書とは、事業所を利用する障害児の心身の発達上の課題や今後の目標などを記載した計画書です。子ども一人ひとりの課題やニーズに合わせた個別支援計画書を作成したえうで、サービスの提供を行います。
本人やその家族と相談をしながら支援内容を検討することが大切です。
個別支援計画書の完成後は実際にサービスを提供し、モニタリングを実施します。
モニタリングとは、提供した支援の効果を評価し、支援目標が達成されているかを確認するものです。
支援目標を達成できなかった場合は、目標の設定に問題がなかったか、支援の内容が適切であったかを振り返り、支援計画の変更を検討します。
また、新たな発達上の課題やニーズがあれば、支援目標や内容の調整を行うことも大切です。
少なくとも6カ月に1回以上はモニタリングを実施し、個別支援計画書の見直しを行います。
子どもの状態や家庭状況などに変化があった場合は、状況に応じたモニタリングの実施が必要です。
児童発達支援管理責任者は、職員への技術指導を通して提供サービスの質の向上に努めます。
児童発達支援の現場で個別支援計画書に基づいた療育や支援が行えているかどうかを確認し、必要に応じて職員への助言や指導を行います。
放課後等デイサービスなど通所施設の場合、学校や自宅までの送迎業務も担当することもあります。
送迎を行う際に学校の職員や家族とコミュニケーションを取ることができるため、教育機関との連携や家族のニーズの把握などに活かせます。
児童発達支援管理責任者は障害児支援サービスを提供する各事業所に配置が義務付けられており、障害児通所施設や障害児入所支援施設で活躍しています。
ここでは、児童発達支援管理責任者が働く場所や就職先について詳しく解説します。
障害児通所支援施設とは、障害のある子どもや発達に心配がある子どもが通い、療育を受ける施設です。
日常生活における基本的な動作や、集団生活に適応するための訓練、生活能力の向上のための訓練などの支援を行います。
具体的には、下記の施設が障害児通所支援施設の例として挙げられます。
対象の子どもが施設に通って支援を受けるだけでなく、職員が自宅等へ訪問して支援を行う事業所もあり、重度の障害を持つ子どもに必要なサービスを提供しています。
障害児入所支援施設とは、家庭での養育が困難な障害のある子どもを対象とした入所施設です。
基本的に18歳未満の障害のある子どもを対象とし、食事、入浴、排せつなどの日常生活に必要な身体介護や、技能訓練、コミュニケーションの支援を行います。
具体的には、下記の施設が障害児入所支援施設として挙げられます。
福祉型障害児入所施設は、身体、知的または精神に障害を持つ子どもを対象とした入所施設です。
医療型障害児入所施設は、治療が必要と認められた、身体、知的または精神に障害を持つ子どもが対象となっています。呼吸管理や経管栄養、喀痰吸引などの医療ケアや、生活に必要な看護が提供されます。
児童発達支援管理責任者になるには、実務経験の要件を満たし、基礎研修・実践研修を修了する必要があります。
基礎研修を修了したのち、2年以上の実務経験(OJT)を経て実践研修を修了すると児童発達支援管理責任者として働けます。実践研修を終了して実際に働き始めてからも、5年ごとに更新研修の受講が必要です。
ここでは、児童発達支援管理責任者になるために必要な実務経験と研修について解説します。
児童発達支援管理責任者になるには、下記の実務経験のうちのいずれかが必要です。
相談支援業務とは、身体や精神の障害、環境上の理由によって日常生活に支障がある方の相談に応じる業務です。利用者が自立した日常生活や社会生活を送ることができるよう、助言や指導を行います。
児童発達支援管理責任者になるための相談支援業務の要件は、業務内容や保有する資格により4つに分けられます。以下のいずれかの業務で、実務経験が5年以上必要です。
表内の()の施設については、高齢者等への支援施設に相当し、障害者や子どもを対象とする実務経験として認められていません。
そのため、5年以上必要とされる相談支援業務のうち、3年以上は障害者や子どもを対象とする施設での実務経験が必要となるため注意が必要です。
上記の「3.国家資格の保有」に当てはまる国家資格は以下の通りです。
<医師・歯科医師・薬剤師・保健師・助産師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・視能訓練士・義肢装具士・歯科衛生士・言語聴覚士・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師・栄養士・管理栄養士・精神保健福祉士>
なお、その他に、これらと同等の業務に準ずると知事が認めた業務に従事した場合も実務経験として含まれます。
直接支援業務とは、身体や精神の障害によって日常生活を送ることが困難な方を対象に、食事や入浴、排泄などの介護等の支援を行う業務です。
日常生活の基本動作や生活能力を向上させるための訓練、職業に関する教育・訓練なども行います。
児童発達支援管理責任者になるための要件を満たすためには、以下の施設での直接支援業務の実務経験が8年以上必要です。
ただし、表内の()は高齢者支援施設に相当するため、これらでの業務を除外した期間が3年以上必要となるため注意しましょう。
ただし、下記の資格保持者は直接支援業務が5年以上、かつ高齢者支援業務を除外した期間が3年以上でよいとされています。
なお、その他に、これらと同等の業務に準ずると知事が認めた業務に従事した場合も実務経験として含まれます。
指定の国家資格保有者の場合は必要とされる実務経験が短縮されます。
下記の国家資格を保有する場合、国家資格による業務経験が5年以上、かつ上記の相談支援・直接支援に従事した期間が3年以上あれば実務経験要件を満たせます。
児童発達支援管理責任者になるための要件である実務経験はとても複雑になっています。
従事した業務や保有する資格によって児童発達支援管理責任者になるために必要な年数が異なるため、自分がどの要件を満たすのか確認が必要です。
児童発達支援管理責任者になるには、実務経験の要件を満たしたうえで、基礎研修と実践研修の修了が必要です。
基礎研修を修了したのち、2年以上の実務経験(OJT)を経て実践研修の受講ができます。実践研修を修了すると正式に児童発達支援管理責任者として働けます。
ここでは、基礎研修と実践研修について詳しく解説します。
基礎研修は実務経験の要件を満たす予定の2年前から受講が可能です。
もともとは相談支援従事者初任者研修とサービス管理責任者等研修の2つに分けられていましたが、制度改正により共通の「基礎研修」になりました。
【講義の部分】
障害者の地域支援と相談支援従事者の役割に関する講義 | 5時間 |
障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律および児童福祉法の概要ならびにサービス提供のプロセスに関する講義 | 3時間 |
相談支援におけるケアマネジメント手法に関する講義 | 3時間 |
【演習部分】
サービス管理責任者の基本姿勢とサービス提供のプロセスに関する講義 | 7.5時間 |
サービス提供プロセスの管理に関する演習 | 7.5時間 |
基礎研修を修了したあとは、個別支援計画の作成や支援業務の実務経験(OJT)が2年以上必要です。OJTとは、「On the Job Training」の略で、いわゆる実地研修です。現場で実際に働きながら、必要な知識や技術を身に付けていきます。
2年以上の実務経験(OJT)を経て、実践研修に進めます。
実践研修は人材育成や地域連携など実践的な内容となっており、演習が中心の研修になっています。講義と演習で合計14.5時間の研修です。
実践研修を修了すると、正式に児童発達支援管理責任者として働けます。
実践研修の内容は下記の通りです。
障害福祉の動向に関する講義 | 1時間 |
サービス提供に関する講義および演習 | 6.5時間 |
人材育成の手法に関する講義および演習 | 3.5時間 |
多職種および地域連携に関する講義および演習 | 3.5時間 |
なお、児童発達支援管理責任者として働き続けるには、5年ごとに更新研修を受講する必要があります。
更新研修は、児童発達支援管理責任者として自らの振り返りを行い、今後の課題を明確化するとともに、知識や技術の向上を図る目的で実施されます。
児童発達支援管理責任者は、事業所ごとに1名の配置が義務付けられています。
しかし現在、児童発達支援管理責任者の確保が難しくなっています。
2019年(平成31年)に児童発達支援の質を高めるため児童発達支援管理責任者の研修制度が改正され、児童発達支援管理責任者になるために必要となる実務経験や研修内容が変更されたことが要因です。
制度改正により、基礎研修を修了したのち、新たに2年以上の実務経験(OJT)を経て実践研修を受講することが必要になりました。
そのため、新制度に移行するにあたり新たな要件を満たす児童発達支援管理責任者が少なく、配置が困難な状況となったのです。
このような状況を受けて一時的に要件が緩和され、実践研修を受講していなくても、実務要件を満たしている場合は、児童発達支援管理責任者とみなして配置が行われています。
児童発達支援管理責任者のみなし配置には一定の要件を満たす必要があり、以下の要件をすべて満たした日からみなし配置が可能となります。
なお、みなし配置が可能な期間は、基礎研修を修了してから3年以内です。
配置期間を過ぎるとみなし配置として認められず、正式に児童発達支援管理責任者となるまで配置ができません。
児童発達支援管理責任者の仕事は大変だと感じる場合もあります。
児童発達支援管理責任者は、障害がある子どもや家族への支援を行うだけでなく、現場職員への指導・助言なども行う発達支援のリーダー的な役割を担っているため、仕事量が多いということが大変さの理由のひとつです。
また、子どもや家族、事業所や関係機関の職員など、児童発達支援管理責任者は人と関わる機会が多い仕事です。責任者という立場から、トラブルがあれば児童発達支援管理責任者が対応することもあり、責任の重さや人間関係にストレスを感じることもあるかもしれません。
しかし、児童発達支援管理責任者の仕事は大変だと感じる一方で、やりがいのある魅力的な仕事です。
支援を行うなかで、子どもたちの成長を感じられたときや、家族が前向きに子育てに取り組む姿をみられた時には大きな喜びを感じられるでしょう。
児童発達支援管理責任者は障害がある子どもの保育・療育にたずさわる専門職で、必要な支援を届けるためにさまざまな業務を行うリーダー的な役割を担っています。
仕事の幅が広く、通所施設や入所施設、訪問サービスなど、児童発達支援のさまざまな現場での活躍が期待できるでしょう。
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