ケアマネジャー(以下、ケアマネ)はケアプランの作成などを行う責任ある仕事です。
一方で、ケアマネとして働くうえで絶対にやってはいけないことも。
この記事ではケアマネがやってはいけないことと、頼まれたときの対応方法を紹介します。
目次
■ケアマネの仕事の範囲と役割
■ケアマネが絶対やってはいけないこと6選
1.サービス提供を正当な理由なく拒否する
2.利用者さんを特定の事業者に囲い込む
3.ケアプランの説明・同意をスキップする
4.利用者さんへ必要な手助けを怠る
5.業務上知り得た情報を勝手に漏らす
6.資格証の期限が切れた状態で業務を行う
■利用者さんに頼まれてもやってはいけないこと
・ケアマネ業務外のサービス
・金銭の管理
・病院への付き添い
・介護保険以外の行政手続きの手伝い
・身元保証人の役割を負う
■やってはいけないことを頼まれたときの対応方法
・利用者さんやご家族に丁寧に説明する
・行政や管理者に相談する
■ケアマネに関するよくある質問
・ケアマネへの苦情事例は?
・ケアマネが家族との関わりで気を付けることは?
■利用者さんやご家族に誠実に向き合いながら働こう
ケアマネの具体的な仕事内容は勤務先によっても異なりますが、主に下記のような業務を担当します。
ケアマネは利用者さんやご家族から相談を受け、適切な介護サービスを受けられるようにケアプランを作成し、事業者とのやりとりを行います。
サービス開始後は定期的にモニタリングを実施し、ケアプランを見直すのも大切な仕事のひとつです。
その他にも、国民健康保険団体連合会に介護給付費を請求する「給付管理」や、要介護認定の申請代行・訪問調査などを担うことがあります。
ケアマネの業務については介護保険法で定められています。
違反した場合は登録が削除されるなど、何らかの行政指導・処分を受けるケースもあるため注意が必要です。
ケアマネがやってはいけないこととして、以下の6つが挙げられます。
ケアマネは、利用申込者が希望する介護サービスについて、正当な理由なく拒否できません。
「関係性が悪いから」「苦手なタイプだから」と、ケアマネが個人的な感情に走り、事業者との連携やケアプランの作成を拒否すると、サービスを必要とする人に適切な支援が届かなくなってしまいます。
サービス提供を拒むことができるのは、以下のような「正当な理由」がある場合のみです。
・事業所の人員の問題で利用申込に応じきれない
・利用申込者の居住地が事業の実施地域外である
・利用申込者が他の指定居宅介護支援事業者にも依頼をしている
人員体制の問題で必要な支援ができない場合などは、正当な理由として断ることができます。
ただし、サービスの提供が困難な場合は、他の指定居宅介護支援事業者を紹介するなど必要な措置をとらなければなりません。
利用者さんには、介護サービスや事業所、施設などの情報を収集し、比較検討して適切に選ぶ権利があります。
ケアマネは、利用者さんが特定の事業者を利用するように誘導してはなりません。
常に本人やご家族の立場に立ち、質問や相談に対して公正な意見を述べて業務を行う必要があります。
ケアマネは作成したケアプランの内容について、利用者さんやそのご家族へ説明し、同意を得て交付する必要があります。
2021年の介護報酬改定により押印は不要となり、従来の書面に加え、電子署名等の電磁的方法も認められるようになりましたが、サービス開始前に説明・同意が必要であることには変わりありません。
利用者さんには必要な介護サービスを受ける権利があり、ケアマネには手助けをする義務があります。
必要な手助けの例は、以下のとおりです。
・受給資格の確認
・要介護認定の申請手続きの支援 など
たとえば、利用申込があった場合は、被保険者証で要介護認定の有無や有効期間を確認する必要があります。
利用申込者へ必要な介護サービスが滞らないよう、適切な対応をしなければなりません。
ケアマネは業務上知り得た人の秘密を、正当な理由なく漏らすことは禁じられています。
もちろん退職後も漏らしてはなりません。
また個人情報が記載された書類やUSBデータを紛失すると、意図しない形であっても、個人情報の漏洩の問題につながります。取り扱いには十分注意しましょう。
ケアマネが保有する介護支援専門員証には有効期限があり、原則5年ごとに法定研修の修了と更新手続きが必要です。
有効期限が切れた状態でケアマネの業務を行うと法令違反になるため、注意してください。
資格証の期限を失効してしまった場合、再交付を受けるには54時間の再研修を受講しなければなりません。
ケアマネは日常的に利用者さんからさまざまな相談を受けるため「ついでに」と用事を頼まれることもあるでしょう。
しかし、以下のようなお願いを安易に引き受けてしまうとトラブルに発展する可能性があります。
ここでは、利用者さんに頼まれてもやってはいけないことを紹介します。
ケアマネの業務は法律で定められており、業務範囲を超えた日常生活の手助けはできません。
業務外で頼まれがちなサービスには、以下のようなものがあります。
・買い物の代行
・家の掃除
・入退院時の生活用品の調達
・転倒などのトラブルによる緊急訪問 など
利用者さんにとってケアマネはとても頼りになる存在です。
しかし、介護保険法で定められた業務以外の支援を行ってしまうと、怪我や事故が起きた場合の責任の所在が曖昧になり、トラブルになる可能性があります。
また、規定の業務にプラスして時間やパワーを割くことで、ケアマネ自身が疲弊してしまうことも。
対応すべき業務の線引きを明確にする意識は必要です。
ケアマネは、利用者さんの年金などの収入と生活上の支出を考慮し、介護サービスの利用計画を立てます。
つまり、業務上、利用者さんの経済状況を把握する立場です。
そのため、利用者さんからは「ついでにお金の管理をしてほしい」と頼まれる可能性もありますが、金銭管理は業務範囲外の行為となります。
金銭管理を相談された場合、利用できる主な支援方法は次の2つです。
日常生活自立支援事業 | 成年後見制度 | |
利用対象者 | 認知症などによって判断能力が不十分かつ本人に契約能力がある方 | 認知症などによって判断能力が不十分な方 |
サービス内容 | ・日常生活費の管理 ・定期的な訪問 |
診断書などをもとに裁判所が必要な保護・支援を決定する |
相談先 | 都道府県・指定都市社会福祉協議会(窓口は市町村の社会福祉協議会等で実施) | 地域包括支援センター、社会福祉協議会、市区町村の相談窓口など |
利用者さんやご家族の状況にもよりますが、まずは地域の社会福祉協議会の窓口などで相談してみてください。
2021年の介護報酬改定により「通院時情報連携加算」がスタート。
利用者さんが医師の診察を受ける際にケアマネが同席し、医師側と共有した情報をケアプランに反映することで、加算が算定されるようになりました。
ここからもわかるように、ケアマネは医師との情報連携のため、診察に同席することが可能です。
ただし、ケアマネが利用者さんを車に乗せて自宅と病院間の送り迎えを行い、報酬を得ることはできません。
こういった「輸送サービス」の実施には、道路運送法上の許可・登録が必要で、運転二種免許を持たない人が行うと「白タク」行為とみなされる可能性があります。
利用者さんが通院時の介助を必要とする場合は、「介護タクシー」の利用などを検討するとよいでしょう。
介護保険適用の介護タクシーなら、要介護者に対して乗降車や受診手続きのサポートなどが提供されます。
ケアマネの業務には、介護保険関連の手続きが含まれます。
そのため、利用者さんは「他の行政手続きの代行も頼めるのでは?」と思い、お願いしてくることもあるでしょう。
しかし、ケアマネは介護保険以外の行政手続きはできないため注意が必要です。
例えば、以下の手続きの代行は業務の対象外になります。
・印鑑証明の取得
・住民票の取得
・固定資産税等の納税証明書の取得 など
利用者さんの入院などに伴い、身元保証人としての同意を頼まれるケースがあります。
しかし「家族代行」のような役割はケアマネの業務外であり、リスクや負担が大きいため、引き受けてはいけません。
厚生労働省は「身元保証人がいないことのみを理由に、入院を拒否することは医師法第19条第1項に抵触する」として、都道府県に通知しています。
利用者さんから身元保証人の役割を依頼された場合は、まず病院に相談するとよいでしょう。
経済的に厳しい状況の利用者さんに関しては、地域包括支援センターや高齢福祉課など行政への相談がおすすめです。
利用者さんからやってはいけないことを頼まれた際、断りきれずに悩むケアマネも少なくありません。
そういったときは以下の方法で対応するようにしましょう。
利用者さんから業務範囲外のことを頼まれた場合は、まずケアマネができること・できないことを客観的に整理しましょう。
「自分だけ我慢すればいい」となんでも引き受けてしまうと、本来やるべき業務に手が回らなくなったり、法的な問題が生じたりするケースもあります。
できること・できないこととその理由を丁寧に説明し、利用者さんやご家族の理解を得るようにしましょう。
対応できない理由を説明しても理解が得られない場合や、嫌がらせ・クレームなど悪質な対応をされた場合は、地域包括支援センターや行政などしかるべき機関へ相談しましょう。
一人で抱え込んだままにすると、より大きなリスクにつながる可能性があります。
相談の際には客観的な証拠があると事実確認がしやすいため、管理者と相談したうえで、録音・録画などの対応も検討しましょう。
ケアマネは自身の役割を理解した上で、適切に利用者さんやご家族をサポートする必要があります。
ここでは、ケアマネの業務に関するよくある2つの質問とその回答を紹介します。
ケアマネに対する苦情の内容は、下記のようにさまざまです。
・相談しても親身になってくれない
・サービス内容の詳しい説明がない
・在宅介護を希望しているのに施設への入所を勧められる
・突然予定していたサービスの利用中止を告げられた
・一方的にケアプランを決められた
・対応や接遇に不満があり信頼できない
上記の苦情事例は、利用者さんとのコミュニケーション不足によって発生したケースが少なくありません。
利用者さんやご家族の気持ちを丁寧にヒアリングし、サービス内容や提供方法については根拠も併せて十分な説明を行うことが大切です。
利用者さんへ適切な支援を届けるためには、サービスを利用するご本人だけでなく、ご家族の理解や協力が不可欠です。
ケアマネはご家族と関わるうえで、以下のような点に気を付けましょう。
・相手の不安や困りごとに寄り添う
・ケアプランは根拠を持って説明する
・専門用語を多用しない
・接遇マナーを意識する
ケアマネは介護保険の専門家だからこそ、丁寧でわかりやすい言葉選びを心がけることが大切です。
専門用語ばかり使ったり、理解度を確認せずに話を進めてしまったりすると、ご家族の不信感につながります。
相手の立場に立ったコミュニケーションで、信頼関係を築いていきましょう。
ケアマネは、利用者さんやご家族の困りごとに寄り添い、サービス事業者との調整を行う介護保険のスペシャリストです。
業務にあたっては、ケアマネ自身も介護保険法で定められたルールを守って働く必要があります。
利用者さんやご家族と誠実に向き合うためにも、ケアマネとしての働き方やサービスの対応で「やってはいけないこと」を改めて確認しておくとよいでしょう。
介護求人ナビではケアマネを含む
介護・医療・福祉の求人を多数掲載中!
介護求人ナビは全国で40,000件以上の介護・福祉の求人情報を掲載した、介護業界最大級の求人サイトです。訪問介護やデイサービス、グループホーム、有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど高齢者介護の施設や、児童福祉や障害者支援に関わる施設・事業所の求人情報を多数掲載中。介護職、ヘルパー、ケアマネジャー、サービス提供責任者、ドライバーなど職種だけでなく、施設種類での検索や給与検索、土日休み・週休2日制・日勤のみ・夜勤専従・残業なしなど、こだわり条件での求人検索の機能も充実しているので、あなたにぴったりの介護求人が効率よく見つけられます。ブランク可な求人や未経験可の求人、研修制度ありの求人も掲載しているので、初めての転職でも安心!転職・就職・再就職・復職・アルバイト探しに、介護求人ナビをぜひご活用ください。
介護求人ナビに掲載している求人情報
記事一覧
新着求人
一覧を見る