福祉系高校を卒業し、希望に燃えて介護業界で就職したMさん。
ところが施設長や先輩たちは、自分が楽することばかりを優先。許せないケアの連続で、ついに「次」に進む決意をしたと言います。
▲Mさん(20代後半・女性)
【前職:訪問介護(サ高住)・介護職】
・勤続年数 3年(正職員)
・給料 月20万円(ボーナスあり)
・勤務 8:00~17:00(早番)、9:00~18:00(遅番)、夜勤月1回、月9日休
【現職:訪問介護・サービス提供責任者】
・勤続年数 4年(正職員)
・給料 月30万円(ボーナスあり)
・勤務 変則勤務(実働8時間)、月9日休
【転職歴】
訪問介護員(前職)→サ責(現職)
目次
・ 福祉系高校を出てサ高住の訪問介護員へ
・ 許せないケアの連続!学んできた介護と全然違う
・ 起業?転職?ついに次の進路を決定
・ 転職してよかった!変化した介護の概念
・ 介護職の社会的なイメージアップに貢献したい
・ 「辞めたい」ときは一度利用者さん目線で立ち止まる
Q 介護職になろうと思ったきっかけは?
A 母が曾祖母の介護を楽しそうにしていたこと
小学生の頃、曾祖母の介護をする母の姿を見て「介護って面白そうだな」と思っていました。
介護に関して母はまったくの素人だったのですが、いろいろ調べながら工夫を凝らしていて、それが生き生きして見えたんです。介護を受ける曾祖母もとてもうれしそうにしていたのが印象的でした。
進路選択のときもそれが頭にあったので、介護を専門的に学べる福祉系高校を選択。介護福祉士の資格をとって卒業しました。
Q 高校卒業後の就職先はどう探した?
A 就活はせず、かかりつけ医が経営するサ高住に縁故で就職した
就職活動は特にしませんでした。
小さい頃から診てくれている内科の医師が、近くでサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)を運営していて、そこに併設されている訪問介護事業所に誘ってもらえたので。
「うちに来たら?」「はい、行きます」という簡単なやりとりだけで就職先を決めてしまって、面接すらしませんでした。
■サービス付き高齢者向け住宅とは?
バリアフリーが完備された高齢者向けの住まい。外部(または施設併設)の訪問介護事業所などと契約して、介護サービスを受けることができる。
Q 前職を辞めたいと思ったきっかけは?
A 施設長や先輩の介護への考え方にまったく賛同できない
高校で「あるべき介護のしかた」を習って就職したはずが、その施設でやっていることは学んできたことと全然違いました。
歩行が不安定な利用者さんには「歩行器代わりに」と点滴のスタンドを渡したり、夜中によくベッドから転倒する方には「ヘルメットをかぶって寝てもらえばいいんじゃないの」と言ったり……。そんなの、寝られるわけないじゃないですか。
びっくりしていたら「認知症なんだから、それくらいしないと」と馬鹿にしたように笑いながら言ったりして、許せない!と思うことばかりでした。
またある時は、よく転んでしまう方のお部屋に「家具をたくさん置いてつかまれるようにしよう」と。
転倒を防ぐなら、まず空間をすっきりさせて歩きやすくするほうがいいのに……。
他にも疑問に思うことはたくさんありましたが、先輩に理由を聞いても「施設長に指示されたから」という答えしか返ってきません。
そこに介護の知識や「自分がそうされたらイヤかも」という利用者さん目線の考えはなく、目の前の対処法しか考えていないようでした。
こういった環境が私にとっては違和感だらけでしたが、介護の資格や経験がなく入ってきた人は「ここのやり方が正しい」と思ってしまいますよね。
そしてみんな、できるだけ自分が楽できるような方向に流れてしまうんです。
Q 辞めたいのに3年もがんばった理由は?
A 高校の先生や両親に相談しても「辞めるな」という答えだったから
介護の考え方やケアの方法に賛同できなくて悩み、高校の先生に相談したのですが、「3年はがんばってみて」と言われてしまいました。今にして思えば、学校側と施設の関係もあるのかもしれません。
親にも「辞めたい」と伝えましたが、父は介護の仕事について全然わからず、黙っているばかり。母は正社員として働いたことがないので、仕事内容ではなくて待遇に目がいってしまう。「ちゃんとお給料をもらって定時に帰れるんだからいいじゃない」という感じでした。
周囲の大人がみな「辞めるな」と言うので、結局3年間我慢して勤めることになったのです。
Q 転職することにしたのはなぜ?
A 訪問介護事業所を立ち上げようと思い、現職の社長に相談した結果「転職」にたどり着いた
前職で我慢を重ねて3年くらいたった頃、ふと「ここで不満を言い続けるより、自分の理想の介護が実現できる事業所を立ち上げればいいんじゃないか」と考えるようになりました。
ただ具体的な進め方がわからなかったので、「すでに起業している人に話を聞こう!」と、高校経由で現職の法人の社長に連絡。学校の授業にも来てくれていた方なので、参考になるお話が聞けるだろうと思ったのです。
社長は私の介護への思いをじっくり聞いて、立ち上げの相談に乗ってくれました。
でも、何度も話を聞いてもらっているうちに「自分はまだ若いし、もっと経営のことを学んでから起業したほうがいいんじゃないか」と思い直すように。
それに社長が運営する事業所や施設でも私の目指す介護は実現できそうだったので、「まず社長の下で修行させてもらいたい」と思ったのです。
その考えを伝えたところ快く了承してもらえて、今働いている訪問介護事業所への転職が決まりました。
Q 転職してみてどうだった?
A 自宅に伺う訪問介護は、その方を知るヒントが多くやりがいがある!
転職して、本当によかったです。
今の職場ではサービス提供責任者の役職に就いていますが、業務は利用者さんの自宅に伺う訪問介護が中心。毎日「やりがいがあるな」と思いますし、地域を回って訪問することで「地元の役に立っている」実感も得られます。
転職して「介護」に対する考え方も変わりました。
今まで介護といったらおむつ交換、食事介助、入浴介助など「作業」になってしまいがちでしたが、そうではなく、「介護とはその人の人生を応援するために、なにを手伝ったらいいのか考えて実践すること」だと思うようになったのです。
自宅に伺う訪問介護は、利用者さんのこれまでの生き方やご家族・近所の方との関係性など、その方らしさを知った上で支援方法を考えられるのが楽しいですね。
また、施設で介護をしていると「利用者さんは外に出てはいけない」というのが常識で、玄関や窓にさまざまな施錠の工夫がされています。それはもちろん安全を守るためなのですが、ご自宅にいる方なら、認知症の症状があっても、行き慣れたコンビニで普通に買い物をしたり、近所の集会に出ていたりする。
そういう当たり前の暮らしに寄り添えるのが、訪問介護の面白さだと思います。
Q 介護業界での今後の目標は?
A 介護のよさを講演やイベントで伝えられるようになりたい
介護の仕事を長く続けるのはもちろんですが、介護職の社会的なイメージを改善していくことも、今後の目標の1つです。
介護の仕事には「きつい・汚い」などの印象を持っている方もいますが、そんなネガティブなことばかりじゃないですから。
介護のいい部分や楽しい部分をちゃんと情報発信して、この業界を盛り上げていきたいです。
特に同世代やこれから就職する後輩の皆さんに、講演やイベントでお話していけたらと思っています。
また、社内では少しずつキャリアを積んできましたが、新人職員さんに指導するうえで、お局にならないように気をつけています(笑)信頼できるチームを築いて、利用者さんを応援していきたいです。
Q 今まさに介護職を「辞めようかな」と思っている人へアドバイスは?
A 利用者さん目線で考えてみるのも一つ。
人間関係は「一緒にスポーツする感覚」があるといい
介護の仕事を辞めるか迷ったときは、一度目の前の利用者さんとじっくり向き合って、ベストな選択を考えてみる視点も必要かなと思います。きっとあなたを頼りにしている方がいらっしゃるでしょう。
ただ、利用者さんは私たちが思っている以上に職員の行動や思いを察知しているので、「ムリしなくていいのよ」などと言って下さる場合もあるかもしれません。
辞めると決めたら、利用者さんに迷惑をかけないようしっかりと引き継ぎをしたり、お別れの挨拶をしたり、ケジメをつけることも大事だと思います。
それからこれは私が心がけていることですが、一緒に働く人とは「チームでスポーツをする感覚」でいられるといいですよね。
利用者さんをより良くお手伝いするために、好き嫌いで仕事をするのではなく、組織として機能するためのコミュニケーションを大切にしています。
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社会福祉士、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級。
幅広くライターとして活動中、親の介護を機に2012年に社会福祉士国家資格を取得。以後、法定成年後見人として支援が必要な方の財産管理や身上監護も行う。
現在は介護、医療、教育、子育て、食などのテーマを中心にWEB・雑誌・書籍などの記事執筆を多数担当。
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