専門学校中退後、やりたい仕事がみつからず、日給で父親の仕事を手伝いながら、今の仕事に出会ったOさん。
介護の仕事を始めたきっかけや、この仕事がおもしろくなってきたいきさつをインタビューしました!
お話を伺った介護士さん
■今、どんな仕事をしていますか?
1つの施設で「訪問(訪問介護)」「通い(デイサービス)」「宿泊(ショートステイ)」の介護サービスを提供する『小規模多機能型居宅介護』という種類の施設で、介護職員をしています。
利用者さんのお宅を訪問したり、デイサービスに通ってくる利用者さんに楽しんでいただいたり、また宿泊中の介護をしたりしています。
■仕事のスケジュールを教えてください。
小規模多機能型居宅介護は、訪問、デイ、宿泊を組み合わせたワンストップの介護施設のようなものなので、1日の中でもさまざまな仕事をします。
8:50 出勤
9:00 夜勤の職員などから特記事項などを聞き、引き継ぎ。訪問の必要な利用者さん宅への訪問準備。
9:10~11:00 訪問3件。それぞれ必要な着替え、歯磨きなど、掃除、昼食準備などを行う。
11:15 施設に戻る。食事の準備や食事介助
13:00~14:00 休憩
14:00~16:00 デイでのレクリエーションを担当。一緒に話をしたり、手芸などの手伝いをしたり。途中、トイレ介助やおやつの準備なども。
16:00 デイ利用の利用者さんを送迎
17:00 体調が気になる利用者さん宅を訪問、元気でいてホッとする
17:30 施設に戻り、記録
18:00 退社 残業せずに帰るよう上司に言われているのでプライベートな時間も十分楽しめる
■以前はどんな仕事をしていましたか?
高校を卒業し、自動車整備の専門学校に通っていました。
でも、手先が器用でないので思うような仕上がりにならず、また学校も職場も上下関係が厳しい雰囲気で、自分には向かないのではないかと思い始め、中退してしまいました。
専門学校中退以後、何をしていいのかわからず進学も就職活動もしていなかった自分を見かねて、父が経営する工事会社で働かせてもらうことになりました。
月に10日ほど働き、「今のうちにやりたいことを見つけて職業にしなさい」と言われましたが、どんな仕事がやりたいのか、自分でもわからなくなって。求人に応募をしてみるものの、どこも「この仕事で一生やっていく自信がない」と思ってしまい、就職が迷宮入りした感じでした。
■介護職に転職したきっかけは?
見かねた父が、介護事業所で働く知人に、採用面接の約束を取り付けてくれてたんです。「とにかく色んな世界を見て働いてみろ」と。
その介護事業所が、今働いている小規模多機能型居宅介護事業所です。
それまで、自分が介護の仕事をするなんて、思ってもみませんでした。求人を見かけてもスルーしていたんです。
でも、本当に何をやっていいかわからなくなっていたので、きっかけがあるならなんでもいいや、くらいの気持ちで事業所に行ってみることにしたんです。
■未経験で介護職として転職することに不安はありませんでしたか?
介護のことを何も知らず、とりあえず紹介されたから行ってみようという気持ちで転職したのですが、いざ働いてみると、介護がいやだとか辛いとか思うことはなく、むしろ楽しいと感じたんです。
小さい頃から祖父と頻繁に会っていたので、お年寄りと話すのは自然にできました。認知症の方などは同じことを繰り返して言うのですが、それも「楽しいな」と思えるんです。ウンウン、と話を聞きながら、どう話題を変えて行こうか、と考えるのもおもしろい。
それに、戦争の話とか、いろんな経験談を話してくれるのも興味深い聞いています。なかなか聞けない貴重な話を聞かせてもらって、利用者さんとの会話に夢中になりました。
介護はきつい、汚い、危険の3Kと言われますが、ケア自体もそんなに大変だと感じませんでした。うちの施設は比較的元気な利用者さんが多いのも、初めての介護でも無理なく働けた理由の1つかもしれません。
■転職後、不安はいつ解消されましたか?
不安は、入職1日目からなくなりました。そもそもネクタイを締めて働くような仕事が苦手で、私服で通勤して自分らしく過ごせるところがいいな、と思っていたので、働き方も自分に合っていると思います。
■転職する前に準備したことはありますか?
入職するときに、介護職員初任者研修を受講してくるように施設長から言われました。受講費用は半分、法人が負担してくれました。
なので、入職したばかりの頃は、初任者研修を受けながら週に数日施設で働く、という形の勤務でした。
■転職前にしておいてよかったことはありますか?
最初に介護職員初任者研修を受けさせてもらってよかったと思います。
介護というものが身近にない生活をしていたので、介護の基礎をしっかり学ぶ機会があって、ありがたかったです。
■介護職に転職してよかったことは何ですか?
介護の知識が深くなると、人への接し方、声のかけ方が違ってきますね。利用者さんとの関係性もどんどん良い方に変わっていっていると感じます。
「この人は私のしてほしいことがわかってくれている」と信頼してくださる。「あなたがいるから安心できるわ」なんて言われると、本当にうれしくなります。
今後、祖父母がもっと年を取り、介護が必要になった時にも、今仕事で身につけている知識と経験を活かしたいと思います。
部品や建材を相手にする整備士や工事の仕事よりも、利用者さんと直接接する介護の仕事の方が、ずっと自分に合っているなと思っています。いまや整備士の自分は想像もできません。
■介護職に転職して大変だと思ったことは何ですか?
小規模多機能型居宅介護は1日のうちに訪問、デイでのケア、泊まりといろいろな介護サービスを提供しているので、1日があっという間に終わるんです。
訪問先で時間が押してしまったりすると、次の訪問先の利用者さんにご迷惑をかけてしまうので、どうしても時間通りにこなしていく必要があるのが心苦しいときもあります。
それでも、訪問先でトラブルがあってどうしても予定通りに進まない時は、すぐに施設に連絡してご家族に連絡するなどの対応をしてもらっています。
訪問先の利用者さんが具合が悪そうなときの判断も難しいときがありますね。まずは施設に電話して上長に判断を仰ぐことになりますが、現場でのとっさの判断力が、利用者さんを守るカギだと思います。
■これまでの経験やスキルで転職後に役立ったものはありますか?
小規模多機能型居宅介護ではデイサービスでの送迎の仕事があるので、車の免許があってよかったです。
また、小さい頃に祖父や祖父の友達など、お年寄りとよく話していたのが、今、役立っていると感じています。
それと意外だったのが「けん玉」です。子どもの頃、よくけん玉で遊んでいたのですが、デイのレクリエーションで披露すると、利用者さんにすごく喜ばれます。
どんなに小さなことでも、何か得意なことがあるとコミュニケーションのきっかけになるので、介護の現場では活かせると思いますよ。
■今後の目標や、やりたいことはありますか?
これからもどんどん上を目指します!
ただ、現場が大好きなので、本部の管理職になるより、現場で介護の力を磨いて、もっと利用者さんに満足してもらいたいですね。
介護の仕事って、ホント楽しいです。僕もやってみるまで、わかっていませんでした。先入観を捨ててまずはこの世界に入ってみるといいんじゃないかなと思います!
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