2021年度より、居宅介護支援事業所の「管理者」の条件が変わる
2018年度介護保険法改正で、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネジャーとすることがほぼ決まりました(*)。
完全適用は2021年度から。それまでの3年間は経過期間とされています。
主任ケアマネジャーは、ケアマネジャーとしての経験が5年以上、あるいは、日本ケアマネジメント学会が認定した「認定ケアマネジャー」等で経験が3年以上ある者が、70時間以上の研修を受講することで取得できます。
逆に言うと、一定の期間、経験を積み、研修を受講すれば誰でも取得できる資格です。
そのため、この件について検討した介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会の議論の中でも、主任ケアマネジャーの資格を持っていればそれでいいのか?という指摘がありました。
資格を持っているだけでは、その資格に見合う知識やスキルを身につけているとは限らない。それは、主任ケアマネジャーに限らず、どんな資格にも言えることです。
特に対人援助の資格の場合、資格を取得したときがスタートだとも言われています。学んできた知識は、現場で実践していく中で身につき、レベルアップされるものだからです。
「主任ケアマネジャー」を管理者にすることは適切?
主任ケアマネジャーの研修では、以下のような内容が盛り込まれています。つまり、主任ケアマネジャーには、こうした役割が期待されているわけです。
● 他の介護支援専門員(ケアマネジャー)への適切な指導・助言
● 事業所における人材育成及び業務管理
● 地域包括ケアシステムを構築していくために必要な情報の収集・発信
● 事業所・職種間の調整を行うことによる地域課題の把握
● 地域に必要な社会資源の開発やネットワークの構築など、個別支援を通じた地域づくり
3年、あるいは5年の経験と70時間の研修で、こうした役割を担うことができるのか。やや疑問があります。
本来は、日常業務の中で、こうしたスキルが身につくような育成体制が整えられていることが望ましいでしょう。しかし、そうした環境がある事業所は多くありません。
■資質向上のための居宅介護支援事業所の取組(事業所票)(複数回答)
*介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会 第10回 資料1-5より<クリックで拡大>
上のグラフを見ると、「事業所内の人材育成のための体制を整えている」という居宅介護支援事業所は、主任ケアマネジャーが配置されている特定事業所でも37.0%。その他の事業所では20.8%に留まっています。
居宅介護支援事業所に限らず、介護事業者は小規模事業者が多いため、事業所内での育成体制が十分でなく、かつ、外部研修に派遣する余裕も持てないケースがままあると言われています。
より難しい業務に取り組んでいきたい。もっとスキルを身につけたい。
そう望む人は、その意欲をどう満たしていけばよいのか。
それを自分自身で考えなくてはならない場合もあるでしょう。
介護業界では、人材育成の体制を整えることも重要に
スキルアップの支援体制が乏しい。たとえスキルアップしてもそれが給与水準のアップに結びつかない。
それが、ケアマネジャーに限らない、介護業界の離職率の高さの背景にある。そう指摘する人もいます。
上のグラフでは、「主任ケアマネジャー等がスーパーバイズを行っている」という居宅介護支援事業所は、主任ケアマネジャーが配置されている特定事業所では5割を超えています。
そうしたデータもあって、今回、居宅介護支援事業所の管理者を主任ケアマネジャーに、という案が出たようです。とはいえケアマネジャーのスキルアップ、ケアマネジメントのレベルアップは、管理者を主任ケアマネジャーにすれば達成できるというものではありません。
併せて、小規模事業所であっても、人材育成を図れる体制整備を考えていくことが必要です。
こうしたことは、国に任せていてもなかなか前に進みません。
ケアマネジャーだけでなく、地域の介護事業所で合同研修を考えていくなど、そろそろ自発的なレベルアップへの取り組みを進めていくことが必要なのかもしれません。
<文:宮下公美子 (社会福祉士・臨床心理士・介護福祉ライター)>
*居宅介護支援の管理者、主任ケアマネに限定へ 2021年度から 経過期間3年(JOINT 2017年11月22日)