厚生労働省は30日、介護職員の処遇の動向を把握する調査の最新の結果を公表した。来年4月に迫る次の介護報酬改定をめぐる議論の基礎資料として使う。【Joint編集部】
昨年10月に新設された「特定処遇改善加算」を取得している事業所で、月給・常勤で働く介護職員の今年2月の平均給与は32万5550円。昨年2月と比べて1万8120円上がっていた。
これを勤続10年以上の介護福祉士に限ってみると、今年2月の平均給与は36万6900円。昨年2月と比べて2万740円上がっていた。特定処遇改善加算の事業所ベースの取得率は、今年2月が59.2%、直近の4月が64.3%となっている。
この調査は全国の特養や老健、グループホーム、訪問、通所、小多機など、1万1323事業所が対象。今年4月に実施され、64.9%の7346事業所が有効な回答を寄せている。結果は専門家で作る「経営調査委員会」に報告された。
第31回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会資料
ここでいう給与(*)は、介護職員がひと月に得るお金の総額に相当するもの。単純に12をかければ、それがトータル年収とほぼ等しくなる数字のとり方になっている。
* ここでいう給与
基本給+各種手当+ボーナスなど。税金や保険料が引かれる前の額面で手取りではない。各種手当には、残業代や夜勤手当など月ごとに変動するものも含まれる。ボーナスや一時金が出ているところでは、昨年10月から今年3月までに支給された額の6分の1が足されている。
調査結果によると、特定処遇改善加算を配分した職員の範囲は「経験・技能のある介護職員」が93.4%、「他の介護職員」が85.4%、「その他の職種(相談員、看護職、事務職、ケアマネなど)」が60.0%。「経験・技能のある介護職員」への配分の仕方は、以下の通りとなっている。
賃上げの具体的な実施方法では、「手当の引き上げ・新設」が54.0%で最多。「定期昇給」が51.4%、「賞与の引き上げ・新設」が25.9%、「給与表の改定」が18.6%だった。
このほか、特定処遇改善加算を取得していない理由では、「職種間の賃金バランスが取れなくなる(38.8%)」「事務が煩雑(38.2%)」などが目立っている。特定処遇改善加算を取得しておらず、従来の処遇改善加算の「III」以上を取得している事業所の介護職員の平均給与は、今年2月で28万7880円。27万8760円だった昨年2月と比べて、9120円上がっていた。
特定処遇改善加算は、介護職員の深刻な人手不足の解消に向けた国の施策の柱。原則として月8万円以上の賃上げとなる人を設定する、などのルールがある。勤続10年以上の介護福祉士など、経験・技能のあるリーダー級の介護職員の賃上げを優先させる決まりだが、事業者が実情に応じて柔軟に配分することも認められている。
<介護のニュースサイト JOINT 2020.10.30>