昨年5月に新型コロナ感染症が5類に移行し、医療・介護施設では、感染時の就業制限を考慮しつつも、個人や事業所の判断に委ねられることになった。一方で、現在も多くの感染者を認め、気を抜けない状況が続く。
2023年5月8日、新型コロナ感染症の取り扱いが5類感染症に変更され、それ以降、全国約5000カ所の定点医療機関から報告された患者数が集計されている。
報告開始直後の同年5月には、全国の定点医療機関における患者総数は約1.3万人(1施設あたり平均2.6人)だったが、その後、感染が拡大し、8月には患者数が約10.1万人、1施設あたりの平均も20.5人とピークに達した。その後は減少傾向に転じたが、24年1月末には再び約8万人近くまで増加し、一旦減少したものの、7月22日~28日の集計では、患者数が約7.2万人、1施設あたりの平均14.6人と再び急増しており、予断を許さない状況が続いている(図1)。
図1 新型コロナ感染症の定点当たり報告数
基幹定点医療機関(全国約500カ所の300床以上の病院)から報告された新規入院患者数は、23年9月末の報告開始時点で2160人だった。これまでの最多報告数は24年1月15日~21日の3530人だったが、7月22日~7月28日には4579人と、定点報告開始以来の最高値を記録した(図2)。
図2 新型コロナ感染症の新規入院患者数
同期間における患者を年齢別に見ると、10歳未満と60歳以上がそれぞれ全体の14.8%および29.7%を占めていたが、新規入院患者ではそれぞれ全体の5.2%および83.4%を占めている。特に60歳以上の入院患者の割合が大きく、高齢者は依然として高いリスクを抱えていると言える。
新型コロナウイルスの流行が始まった20年の死者数は3466人だったが、重症化しやすい変異株「デルタ株」が流行した21年には1.7万人に増加した。22年には致死率が低下した「オミクロン株」が主流となったが、感染者数の急増に伴い、死者数も4.8万人に上った。23年は3.8万人とやや減少したが、今年も1月から3月までの累計で1.2万人が死亡しており、引き続き警戒が必要な状況にある。
現在も、新たな遺伝子変異を持つ系統や組み換え体の出現に対するゲノム解析による調査が続けられている。
国内では21年に検疫で初めてオミクロン感染例が確認されて以来、同系統の流行が続く。直近では、オミクロン株の亜系であるKP・3系統が大部分を占めており、症状は従来のオミクロン株と同様に、発熱や喉の痛みを訴えるケースが多く見られる。
KP・3株は自然感染やワクチン接種によって形成された抗体の効果が低いとの報告もある。
リスクの高い高齢者は、引き続き感染対策を行い、感染時には重症化を防ぐため、慎重に経過観察を行うことが求められる。
<シルバー産業新聞 2024年9月10日号>
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