本紙は、第8期の介護保険料について各都道府県にアンケートを行い、42都道府県から回答を得た。第1号被保険者の介護保険料基準月額の都道府県内平均額、各都道府県での保険料の最低・最高額保険者は表の通り。第7期の第1号被保険者の基準月額は平均5869円(前期比+6.4%)だった。介護サービスの利用実績などから今後の給付動向を推計するなどし、保険料が設定されるが、そこには保険者により様々な事情がある。
(表)第8期介護保険料(2021年度~23年度)都道府県別・最高保険者・最低保険者
北海道音威子府村(3300円)
道北部にある村の人口は、21年1月時点で699人と道内最少。高齢化率は31.2%、認定率は8.2%。要介護者のうち在宅サービス利用者は12人で、村社協の訪問介護と通所介護のほか、周辺自治体のサービスも利用する。村内には施設がなく、6人が近隣自治体の施設に入所する。
19年に村営で介護保険外の入居施設を整備した。食事など生活面で心配のある高齢者が入居し、在宅サービスを受けている。
介護保険料は、前期に引き続き、介護給付費準備基金を切り崩し抑制を図ったが、団塊の世代の村外への転出が進んでおり、将来の1号被保険者の減少を勘案し、今回は300円の値上げに踏み切った。
東京都青ヶ島村(9800円)
伊豆諸島南部にある島の人口は168人で、1号被保険者は37人。保険料は、前期から1200円上がった。在宅サービスの利用がなく、年間の総給付費約2000万円の全てが施設サービス費となっている。
人口が少なく高齢化率が20%程度のため、国の財政調整交付金が手当てされず、その分を1号被保険者で負担しているため高額になった。保険料上昇を抑えようと、一般介護予防での転倒予防教室、言語聴覚士による嚥下体操などに取り組んでいる。
埼玉県鳩山町(3800円)
都心まで約1.5時間のベッドタウンである鳩山町は、分譲開始から半世紀近いニュータウンを中心に、高齢化が著しい(3月1日時点で44.9%)。今期は後期高齢化率の上昇に伴い調整交付金の増額が見込めるほか、準備基金の活用で保険料を前期より200円下げた。介護予防事業にも注力し、認定率は昨年12月1日時点で11.0%と、県内で最も低い。
北海道夕張市(7875円)
高齢化率51.2%、認定率28.3%はいずれも道内最高。保険料は前期より1600円余り引き上げたが、最大の要因は1号被保険者数の急激な減少。
現在4000人余いる高齢者は、30年には3000人を割り込むと推計されている。高齢者のみ世帯や独居者も多く、受給者1人あたりの給付費は月2万9000円(20年度平均)と高い。
大阪市(8094円)
前期の保険料は7927円で、今期は2.1%アップ。「第8期計画段階で基金が90億円程度になり、これを充てて保険料の抑制を図った」と担当者。計画値に対する介護給付費実績の割合は18年度は97.8%(2401億円)、19年度は96.8%(2504億円)だった。
大阪市は政令市の中でも高齢化が進み、独居者も多い。認定率は20年3月末時点で25.3%(府21.7%、全国18.5%)と高い。
在宅サービス受給者1人当たりの給付費は11万3000円(全国9万9000円)で、高齢者1人当たり給付費も2万8000円(全国2万1400円)と高い。
東京23区の状況
東京23区内での最高額は足立区の6760円、最低額は千代田区の5400円。荒川区、江戸川区、品川区は500円引き上げた。
世田谷区は前期より270円下げた。新型コロナ感染症拡大を受け、住民の経済状況が大きく変わる可能性があり、また前期のサービス利用量が計画値を大きく下回ったことから準備基金より58億円を充当した。
前期から据え置いた中野区は、新型コロナ感染症拡大による外出控えからの心身機能低下で、サービス利用が増えたが、準備基金を取り崩して対応した。
最も高い足立区では、後期高齢者の増加や介護報酬のプラス改定などで、180円上げた。所得段階区分を14段階から17段階に細分化し、最高料率も基準額の4.5倍として高所得者の負担を引き上げた。
<シルバー産業新聞 2021年5月10日号>