毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「祖母の世話がきっかけでヘルパーになった女性の悩み」という話題について紹介します。
派遣社員ひとすじだったが、介護業界へ転職
介護業界で働く人に「なぜ介護業界に入ったんですか?」と尋ねると、高確率で出会うのが「身内の世話をしているうちに、介護の世界に興味がわいた」という人たちだ。
都内の事業所でヘルパーとして働くMさんも、そんな経緯で介護業界に飛び込んだうちの1人。だが、彼女はある悩みを抱えているという。
東京都下のベッドタウンで育ったMさんは3人兄妹の末っ子。大学を卒業したものの、希望通りの業界に就職することが叶わなかった。実家住まいのまま、派遣社員として会社を転々とする気ままな生活を送っていたが、やがて同居していた祖母の介護をするようになった。
Mさんは祖母に大変可愛がられたため、世話をすることは全く苦ではなかった。やがて祖母は認知症を発症し、ある時期からはMさんのことが分からなくなってしまう状態に。
数年に及ぶ介護の末に祖母は亡くなり、Mさんは「祖母をきちんと介護できなかった…」という思いを抱きつつ、介護の世界に飛び込むことを決めた。
それまでフラフラと気ままに仕事を渡り歩いていたMさん。しかし、介護の仕事は資格さえ取れば、一生働けると言っても差し支えのない仕事。意欲に燃えた。ホームヘルパー2級の後、ホームヘルパー1級(当時)の資格も順調に取得し、今も介護の仕事に励んでいる。
しかし彼女の心の中には、こんな思いがあるという。
ヘルパーとして成長すればするほど、後悔の念が…
「今やヘルパーになって10年以上が経ち、それこそ数えきれない人の世話をしてきたんですけど、『一番丁寧に介護してあげたかった自分の祖母に、一番下手な介護をしてしまったんだな』って、考えてしまうんです。
利用者を起こしたり、ご飯を食べさせたり、車いすに移動させたりするたびに、『おばあちゃんは背中が痛かったんじゃないかな』『おばあちゃんはあんまり食べたくなかったんじゃないかな』『車いすはお尻が痛かったのかも・・・』なんて、しばしば祖母のことを思い出してしまって……」
はたから見れば、何年間も祖母の介護をしただけでも立派な孫娘。しかしMさんは、自分がヘルパーとして成長すればするほど、祖母に対して「申し訳ない」という気になってしまうのだという。
このエピソードだけでもMさんの心根の優しさがうかがえる。一方で、Mさんは「でも、そんな祖母への後悔を理由にヘルパーをやめたら、祖母はきっと怒ると思う。だからヘルパーは絶対にやめない」と、心に決めているそうだ。
いつの日か彼女の悩みが晴れることを願わんばかりだが、そんな優しさを持ったMさんにとって、ヘルパーはまさに“天職”だったようだ。
公開日:2015/12/14
最終更新日:2019/4/8
介護求人ナビの求人数は業界最大級! エリア・職種・事業所の種類など、さまざまな条件で検索できます