毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「施設内の募金箱で珍騒動」という話題について紹介します。
社会貢献の気持ちを忘れないように、募金箱を設置した老人ホーム
自然災害の恐ろしさを感じさせる出来事が相次いで起こり、心が塞ぐなか、せめてもの救いとなるのが善意の輪の広がり。
被災地への善意が目に見える形で現れるのが、ボランティア活動や募金活動だ。
先日、都内のある介護付き有料老人ホームでは、募金箱を巡って珍騒動が起きたという。
その介護付き有料老人ホームは、都内でも有数の高級住宅街に建ち、月々の利用料が数十万円という富裕層向けの施設。
入居者はおしなべて教養が高く、レクリエーションのメニューを見ても、英会話、短歌・俳句・川柳、生け花、習字、陶芸、クラシック音楽の鑑賞会など、高尚なものが多い。
特徴的なのは、施設のあちらこちらに置かれた募金箱だ。
施設で働くカワイさんがいう。
「介護業界歴が長い施設長によれば、どれだけ社会的地位が高かった人でも、介護施設に入ると社会への関心を一気に失い、急激に老け込んだり、認知症が進んでしまったりする人が多いそうなんです。
そういった事態を防ぐため、ウチの施設では、入居者さんが新聞を読む時間をわざわざ設けており、入居者さんがくつろぐテレビルームでは、可能な限りニュース番組にチャンネルを合わせるようにしています。
施設の中に募金箱を設置したのも、施設長の方針です。
募金をすることで、自分も社会に貢献しているということを利用者さんに実感してもらう狙いがあります」
この老人ホームには、一流企業でバリバリ活躍したエリートビジネスマン、弁護士、医師、大学教授など、もともと社会的地位が高かった入居者が多く、募金の熱心さはかなりのもので、募金がいくら貯まったのかを報告するイベントも定期的に行われているという。
しかし、つい先日、募金箱をめぐって前代未聞の騒動が起きたそうだ。
まさか盗難事件??募金箱の中を探る利用者を発見!
「ある男性利用者さんが、募金箱にゴソゴソと手を突っ込んでいたんです。
驚いたスタッフが『○○さん、何してるんですかっ!』と、キツい口調で問いかけると、その男性は『違う、違う……』と言うばかり。
これまで盗難事件など一度も起きたことがなかったので、施設長が男性を呼んで事情を聞くことになったんです」
騒動を起こした利用者さんに施設長が事情を聞くと、意外な事実が判明したという。
「その男性利用者さんは、6月に起きた大阪北部地震向けの募金箱にお金を入れたものの、その後、生まれ故郷である広島で豪雨災害が発生したため、『寄付金は大阪ではなく、広島に送りたい』と思って、募金箱を探っていたようでした。
募金箱は、使途が明確になるように、募金先が常に記されているのです。
男性は大阪のニュースを見て募金したものの、その後、広島のニュースを見て大いにショックを受け、『故郷に1円でも多くの募金を』と思い、募金箱を探るという行動に出たのでした」
施設長は男性の言い分に理解を示したものの、募金先の変更は認めず、「じゃあ私が広島に募金します」と言って、ポケットマネーで豪雨災害先に募金をしたのだそう。
男性は施設長の男気に感銘を受け、二度と募金箱をいじらないことを約束したという。
老人ホームの利用者でも、社会に貢献したいと思っていることがわかる、ほほえましい事件だ。