毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、『介護=つらい仕事』は誤解?という話題について紹介します。
世間一般の、介護の仕事のイメージは?
安倍晋三首相が新たな取り組みのテーマに介護問題を取り上げ、新聞やテレビなどで介護がピックアップされる機会が増えている。超ハイスピードで少子高齢化が進み、すでに介護人材が不足しているなか、課題とされているのが介護業界の労働条件。近年では“ブラック企業”などという労働条件の悪さを表す単語も一般化したが、介護業界はどうなのだろうか?
2015年にリクルートキャリアが行った「介護サービス業 職業イメージ調査 2015」によると、介護サービス業に対する全国の学生・社会人のイメージは以下のようなものだった。
・「社会的な意義が大きい仕事だと思う」38.8%
・「今後成長していく業界だと思う」30.9%
と、ポジティブなイメージがある一方で、
・「体力的にきつい仕事の多い業界だと思う」61.0%
・「精神的にきつい仕事が多い業界だと思う」53.8%
と、ネガティブなイメージも強い。
また
48.0%の人が「給与水準が低めの業界だと思う」と回答している。
「介護の仕事は、特別大変」ではない?
しかし介護現場で働く人たちの中には、そういったネガティブなイメージに強い違和感を抱く人は少なくない。都内の事業所でヘルパーとして働く30代の男性・Oさんは、こう憤る。
「ヘルパーの仕事は、確かに稼ぎが良いとは言えないですし、体力的にも大変ですし、勤務時間も不規則です。けれども、例えば工事現場で働く人と比べれば、冬は暖房が、夏は冷房が利いた所で働けますし、力仕事と言っても工事現場ほどではないでしょうし、利用者から感謝の言葉をもらったりすることもあります。
介護の仕事は、決してラクな仕事ではありませんが、特別大変な仕事ではないんです。けれども、介護の仕事がピックアップされる時というのは、必ず『人手が足りない』『給料が安い』『職員が利用者を虐待した』といったニュースばかり。そんなニュースばっかり見せられたら、誰も介護業界に入ろうなんて思わないですよね」
ヘルパーの給与は、主婦のパートではむしろ高い!
また、近畿地方でヘルパーとして働く40代の女性・Tさんは、「給料が安い」というイメージに、強く反発する。
「介護業界の給料が安いって思ってる人は、一度も介護の仕事を探してみたことがないんじゃないですか? 私が住んでいる地域で、主婦が昼間にパートで時給1000円以上を稼ごうと思ったら、候補となるのはヘルパーしかありません。私は未経験で入りましたし、時間の融通も利きますし、人手が不足しているので少々のワガママもきいてもらえます。地元の知り合いの和も広がりますし、ヘルパーの仕事をすごく気に入っています。」
TさんもOさんと同様、ネガティブなことばかりがニュースなどで報じられることには不満があるのだそう。
確かに報じる側からすれば、問題点を探して報じるのが仕事。報道によって世間の目が向くことで、政治が動き、待遇や環境が改善される効果もある。
その一方で、いたずらに危機感や不安感を煽る報道は、かえって介護の仕事を敬遠させることにつながり、人材不足を加速させてしまう。また、現場の人間が傷つき、仕事へのやる気がそがれてしまうことも。
報道する際には、世間のイメージと実際の仕事のギャップや、介護の仕事の良い部分にも、ぜひ目を向けてほしいものだ。
公開日:2016/1/25
最終更新日:2019/6/1