「介護業界を変えたい」という大きな希望を持って、飲食業界の大手が経営する有料老人ホームに入社したKさん。異業種から参入したホームであれば、新しい視点を持って介護に取り組んでいるのではないか、と思い就職を決めました。しかしそこでは、昔ながらのやり方をよしとする職員と新卒採用との間に大きなギャップがあったのです。そんな中、「利用者さん本位の介護」を貫こうとするKさん。どんな仕事ぶりだったのか、じっくりお伝えします。
*M・Kさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
M・Kさん(32歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…10年
●転職回数…1回
●今までの勤務先…有料老人ホーム
●現在の勤務先…自営業(ファイナンシャルプランナー)
●保有資格…介護福祉士、介護支援専門員、ファイナンシャルプランニング技能士
利用者さんの好きな時間まで寝かせてあげたい
意気に燃えて入社したものの、配属されたホームは、自社で立ち上げた施設ではなく、別の会社を合併した施設でした。看板は今の会社のものでも、前の事業所の建物を使い、職員もほとんどが前の会社の人でした。新卒の自分たち4人とホーム長だけが新しい会社に雇われた人間。以前からいた職員からしてみれば、僕らは目の上のたんこぶ。自分たちのやり方を踏襲させない邪魔者ということになるのでしょうか。こちらから「よろしくお願いします」と挨拶しても、無視されるのです。そんな大人げないことをするなんて、信じられないと思いました。
介護技術がつたない僕らに教えてくれるのは、以前からいた主任格の女性。50代だという彼女が教える技術は、ヘルパー2級のときに習ったこととも違う、古いタイプの技術のような気がしました。でも入社前からある程度の想像はついていたので、それほど驚きませんでした。むしろ驚いたり、ひるんだりすることも悔しいので、淡々と業務に向かうようになりました。
本社は「利用者さん本位」をスローガンにしているのに、旧ホームの職員たちは、決まった時間に利用者さんの行動を合わせようとします。食事時間も朝7時半と決めたら7時半に全員を集めて食事。寝ていても起こして食べていただくのです。でも、さっきまで寝ていたのなら、食欲もわきません。頭もはっきりせず、おいしさを感じないのではないかと、疑問でした。高い入居金を払って入ったのに、自分たちの好きな時間に食事をとることさえかなわないなんて。なんだか矛盾を感じました。
いつも遅くまで起きていて、朝寝坊な女性利用者さんは怒られてばかりでした。若い職員が偉そうにその女性利用者に話すのを聞いて、腹が立って。利用者さんにとって、そこは合宿所ではなく、自分の家なのです。高額な入居金を払っているのですからなおのこと、ホテルのように自由に振る舞いたいのが当たり前ではないですか。
そこで、自分が担当のときは、あえて起こすようなことをせず、ゆっくり眠ってもらっていました。それがまた、反感を買ったようで、旧ホームの職員から口をきいてもらえない原因になりました。でも、僕は平気でした。何より、利用者さんが喜んでくれる。その女性は入浴をとても嫌がる方だったんですが、僕のときだけは笑顔で入ってくれる。それを何度も繰り返しているうちに、僕を批判する人はいなくなりました。
積極的に勉強をし、後輩に伝えていく
本社や外部が主宰する介護の勉強会にも積極的に参加しました。そこで学ぶことは、僕が考えている介護が間違っていないことを証明してくれるようで、自信がつきました。教わった技術や知識を持ち帰って後輩に教え、自分が理想とする介護をする人がホーム職員の半分になった頃には、ホームの雰囲気が最初とはガラリと変わりました。
介護って、なんて奥が深い仕事なんだ。ルーティーンの仕事だけしている人にはわからない、複雑でクリエイティブでやりがいがある仕事。自分はこの仕事に就いて本当に正解だったと思ったものでした。
次回は異動した先の事業所で、さらに羽ばたくKさんの様子をお伝えします。
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