一度は、医療の世界で高齢者や患者さんを支えようと考えたOさん。
しかし、介護の世界の魅力を再確認し、またデイサービスの仕事に戻ってきます。
ところが、介護保険導入後の介護の世界はなかなか厳しい。
理想に燃えて戻ってきた介護業界ですが、夜勤を体験し、とことん疲れ果てて……。
仕事や人生の悩みを抱えたOさんの様子をお伝えします。
*O・Nさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
O・Nさん(42歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…14年
●介護の仕事に就く前…リハビリテーションクリニックのスタッフ
●介護業界での転職回数…5回
●いままでの勤務先…デイサービス、居宅介護支援事業所
●保有資格…社会福祉主事、介護福祉士、介護支援相談員
医療の知識がある介護職員として強みを生かす
医療関係者として患者さんに恐縮されるより、介護の世界で利用者さんのすぐ近くで元気を与えたい。
そんな思いで、管理者、相談員として戻ってきたデイサービス。
今度は家から30分ほどの場所にある、小ぢんまりとしたデイで働くことにしました。
介護の世界に戻ってみると、「やっぱりここが私の働き場所だ」と思えました。
利用者さんの笑顔も、わがままも近くにある。
いっしょに悩んだり喜んだりできる介護の仕事が、私には向いているんだと再確認しました。
ただ、医療の世界で働かせてもらったことは、本当にいい経験でした。
「介護業界の人は医療に弱い」とよく言われますが、私は治療や投薬のこともわかるようになっていたので、利用者さんを医療につなげてあげることも容易にできましたし、体調管理もしやすい。
介護の現場でもとても役に立ちました。
また、その後、ケアマネジャーになってからも、医療知識があること、医療業界とのつながりがあることは、強みになりました。
介護の世界にいても、医療の勉強をするなり、医療関係者といい関係を築くなりして知識を増やしておいたほうが絶対にいいです。
後輩たちにもそうすすめています。
経験を積んだことで、無我夢中だった以前のデイサービス時代よりも、余裕を持ち、広い視野で仕事に取り組むことができました。
「デイサービスは、元気な高齢者がレクリエーションをして家に帰るだけ」などと言われがちですが、そんなことは言わせない。
これまでデイサービスに来られなかったような方も来てもらえる環境を整えたいとがんばりました。
たとえば、エレベーターのないマンションの3階に住んでいる高齢者を、おんぶして送迎しました。
当時、私は40㎏台しかなく、みんなに「折れそうだからやめて」と言われたので、無理に体重を増やしたりしました。
また、医療知識があったので、重度の方を受け入れました。
重度の方だって外に出してあげたい。
それに、介護が大変な家族にもレスパイト(息抜き、休憩)を与えたいという気持ちが強かったのです。
重度の利用者さんの家族こそ、大変です。
私たちが引き受けることで、家族の方が朝から夕方まで介護の手を休めることができたら、心も体もリフレッシュできます。
「夕方5時までゆっくりしてね。おでかけして帰りが間に合わなかったら、電話1本くれればいいから」
そんなふうに家族の方に声をかけていました。
そのうち、デイで宿泊も始めました。
これは私の提案ではなく、会社の方針でした。
会社としては、増えてきたデイサービスの中で差別化を図りたかっただけかもしれません。
しかし私は、「夜間、利用者さんと接することでこれまで見えなかった利用者さんの素顔をさらに知ることができる」と前向きにとらえました。
疲れはてた家族を支える方法としても必要だと思えたから、スタッフ全員で取り組もう、と意気に燃えました。
夜勤続きの生活の中で、ついにバーンアウト
ところが、夜勤のある生活は、やってみるととても大変でした。
それでも私は体育大学出身、体力も気力もあるほうですが、スタッフの中には体がついていかない人がいる。
突然休まれると、誰かが代わりを務めなければなりません。
私など、叔母の葬儀の前の日も夜勤、告別式が終わるとその足でまた夜勤、というときもありました。
こうなると、所内の雰囲気が悪くなる。
日勤と夜勤との引継ぎもぎくしゃくします。
私がその雰囲気の悪さを改善し、まとめ上げなければならない立場だと思うからこそ、夜勤を積極的に引き受けました。
しかし結局、私自身も体調不良で気持ちが前を向かなくなりました。
いわゆるバーンアウト(燃え尽き症候群)になってしまったのです。
理想を掲げて戻ってきた介護の世界に、こんなにうちのめされるなんて。
自分自身にも失望しかけました。
でも、ちょうどその頃、介護の経験が5年を迎えようとしていました。
今は少し現場をお休みしよう。
そして、ケアマネジャーの資格を取り、別のかたちで高齢者の方々を支えよう。
そう思い直し、「受験勉強をするから」と、職場を退職することにしました。
次回の最終回は、ケアマネジャーになってからのOさんの様子をお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*O・Nさんの「私が転職した理由」…
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