2人のお子さんを育てながら、生命保険会社のトップ営業として、毎月素晴らしい成績を上げてきたA・Fさん。使命感を持って金融業界で努力してきましたが、2011年の東日本大震災を経験し、生き方を変えてみようと深く感じ入って、介護業界を目指しました。4つの職場で、それぞれにまた悩み、疑問を感じることもありましたが、どこででも熱心に働いてきました。彼女は、介護の現場の仕事を、「生命保険の営業に比べれば、趣味みたいに楽しい仕事」と言います。その真意とは? 4回に分けて、お伝えします。他業界と介護業界の違いを感じながら、読んでみてください。
*A・Fさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
A・Fさん(41歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…3年半
●介護の仕事に就く前…生命保険会社の営業
●転職回数…3回
●いままでの勤務先…有料老人ホーム、訪問介護、デイサービス
●保有資格…介護職員基礎研修(*)
*2012年度末に廃止。現在の実務者研修にあたる
月40万円を得る営業の仕事に没頭していたが…
派遣の事務職として働いているときに、夫と知り合って、結婚。でも、働くのが好きなんですよね。子どもを立て続けに産んで、目まぐるしかったのですが、育児が少し落ち着いて、子どもが2歳と3歳になったときに、生命保険会社の営業を始めました。
この仕事は、常に募集をしているから、入社するのはわりとカンタンなんです。それに、目標は設定されますが、子どもがいても働きやすい面はあります。
ひととおりの知識を得たら、自分で営業先を見つけて、どんどん営業していくんですよね。打ち合わせの時間は、自分とお相手との都合で決めていいので、保育園のお迎えの時間よりも前に入れていけばいいんです。また、子どもが熱を出して、急に迎えに行かなくてはならないときも、どうしてもその日でなければならない打ち合わせがなければ、仕事を切り上げて保育園に向かうことができます。だから、子育てをしながら勤務している人は多いです。
私は営業に向いているんでしょうね。当初から、わりと営業成績がよかったんです。しかし、努力もしました。友達に営業をするのはいやなので、保育園では職業を一切口にせず、お客様はおひとりおひとり開拓しました。金融の勉強にも力を入れましたね。プロとしてきちんとした知識がないと、お客様の信頼を得られませんから。
月に2人は新規のお客さんを得るのが、ノルマ。1人も契約をとれないと、契約職員でも、パート並みの報酬になってしまいます。金曜日が毎週のノルマの締めですが、いい形で業務報告ができないと、土日でがんばって月曜日にその成果を報告する。常に仕事に追われている状態でした。しかし、私はノルマを外すことなくやって来られ、月に30~40万円の報酬を得てきました。預金もどんどん増え、将来、子どもたちが進学するときのための蓄えもできてきました。これでいいんだ、このままもう少しお金を稼ごう。
けれど、そんな考えも、2011年の東日本大震災で、すっかり変わってしまいました。
東日本大震災以降、人の役に立ちたくなって
あの日、子どもたちは小学校に行っていました。私は、新しく生命保険に入ってくれそうな方の職場で営業中でした。いきなり事務所がグラグラ揺れて、パニック状態に。子どもの学校から離れたところにいたので、子どもたちの安否がとにかく心配でした。
少し揺れが収まったら、事務所にご挨拶をし、学校に向けて走りに走りました。電車もバスもタクシーも使える状態ではないですから、ヒールの靴で必死に走って……。ようやく子どもに会えたときには、ホッとして涙が止まりませんでした。
翌日の新聞にもテレビにも、東北での大惨事の様子が流され、多くの方が亡くなり、苦しみ……。それを見ているうちに、自分自身の生き方についても、考え直しました。
私はいったい、何をしてきたのだろう。自分がたくさんの給料をもらいたいために、優秀な営業だと言われたいために、営業件数を増やしていく。そして、さまざまなテクニックを使って、お客様から契約を、お金を引き出していく。その成果として、報酬をもらう。時には、「この商品は、お客様にはまったくふさわしくない」「あの外資の保険商品のほうがずっとお得だ」と思っても、自分の成果のために、契約をもらう……。手にした給料明細には、自分のエゴが映し出されているような気がしました。
お金、お金の毎日が急に空しく思え、お金から離れたところで働ける仕事がしたい、と思うようになりました。子どもにも誇れる仕事をしたい、それは今の仕事ではない……。そう考えたら、決断が早い私です。所長に「辞めたい」と告げました。
所長には、強く引き止められました。所内の営業部員の中でも、成績上位の私が抜けられては、売り上げにも響きます。それはわかっていたから、すぐにはやめられないと思っていました。けれど、事務所の売り上げのために働くのではない。自分の就労が、世の中のためになっていなければ、働く価値もない……。そう思う気持ちは変わらず、根気よく所長を説得し、3カ月後には退職をしました。
次回は、ヘルパー2級の研修を受けて有料老人ホームに就職するAさんの様子をお伝えします。
*A・Fさんの「私が転職した理由」…1回目、
2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
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