◆介護老人保健施設(正職員/介護福祉士) → デイサービス(正職員/介護福祉士)
R・Jさん(男性・31歳)
●介護老人保健施設(勤務期間:8年/月収手取り25万円/ボーナスあり、残業約50時間)
●デイサービス(勤務期間:2年/月収手取り22万円/ボーナスあり、残業なし)
介護業界以外でのその他経験:ガソリンスタンド非常勤スタッフ
保有資格:ヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)、介護福祉士
家族構成:妻
*R・Jさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、
2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
【介護職になったきっかけ】バイト中、介護老人保健施設の役員に誘われた!
電気工事の仕事を継ぐわけでもなくアルバイト生活に
実家が電気工事の仕事をしていたので、僕は後を継ぐつもりで工業高校に入り、電気工事士の資格を取得する予定でした。しかし、決められた進路になんとなく疑問を持ち、電気工事士の資格も取得しないまま、高校を卒業してしまいました。
両親はがっかりしましたが、やりたくないまま家を継がれても困るのは当然です。
しかたなくそんな僕を受け入れ、資格もなく卒業するのを見守ってくれました。
高校を卒業後、自分は何がやりたいのか、わからないまま社会に出ました。
しかし、働かないわけにもいかないので、手っ取り早く高校からアルバイトをしていたガソリンスタンドに非常勤スタッフとして勤務しました。
気心の知れたスタッフや、リピーターのお客さんと和やかに会話ができる環境が気に入り、気付いたら2年も働いていました。
ところが、仲良くなったお客さんが、「いつまでもアルバイトでいてはダメだよ」と、気にしてくれました。
その方は介護老人保健施設(老健)の役員をしていて、「君は介護にむいているよ。うちの職場に来てみないか」と誘ってくれたんです。
そこで、たいした決意もなく、なんとなくその老健で介護職として働くことになりました。
介護についての抵抗はまったくないが、意欲もない
人に誘われて介護の仕事を始めたわけですから、「どうしても介護をやりたい」とか、「介護の世界で一流になりたい」とか、介護に対する目標や使命感のようなものはまったくありませんでした。
かといって、「お年寄りの介護をするなんてイヤだ」みたいな気持ちもなく、排せつの介助も入浴の介助も、まったく抵抗がありませんでした。
たぶん、もともと「人」が好きなのでしょう。
それが高齢者だろうが、若い人だろうが、あまり区別がなかったのだと思います。
当然、無資格で就職しましたが、介護の資格については、入職してから、法人が半分支払ってくれてヘルパー2級(現・介護職員初任者研修)の資格を取得しました。
老健ですから、処遇などの点については、介護業界ではよいほうだったと思います。
【はじめての介護職】心がこもっていない「ダメな介護職」
仕事は早いがケアが雑でよく注意された
職場の環境や初めての身体介助にはすんなりと慣れたものの、だからといって優良社員ではありませんでした。
むしろ、上司から見ると「ダメ組」のグループに入る、しょうもない若者だったと思います。
僕の老健での8年間は、大きく3つの時期に分かれるのですが、最初の3年はとにかく本当に「好ましくない」職員でした。
介護に対する情熱はまったくなく、さっさと仕事をすませようということばかり考えていました。
実際、妙に器用なところがあって、オムツ替えもシーツ替えも排せつ介助も、なにもかも早いのです。仕事が雑で心がこもっていないから、という側面もあります。
しかし、全部で150床もある大規模な老健で、仕事は常に忙しい。
僕のように次から次へと仕事をこなす若い職員は、一部の職員にはとても重宝されました。
「仕事が速くてほめられてるんだからいいじゃないか」という気持ちもあったので、先輩から「もっと丁寧にオムツ替えをしろ」とどれだけ言われても、直そうと思っていなかったんです。
僕の雑なオムツ替えのせいで、お尻にオムツが食い込んでしまい、赤くなったり入浴のときに少し痛い思いをした利用者さんもいたと思います。
今となっては、本当にひとりひとりの利用者さんに謝りたいくらいです。
遅刻の常習者だった
もうひとつ、僕の良くなかったところは、遅刻が多かったことです。
週のうち半分くらいは10~20分は遅れていました。
仕事に行きたくない特別な理由がないときでも遅れるし、行きたくないと思う理由があれば、もちろん遅れる。
当時、仕事に行きたくなかった一番の理由が、「理事長の存在」でした。
老健の理事長は精神科のドクターで、非常に厳格で難しい人でした。ちょっとしたことに目を光らせ、「やり方が悪い」「やり直せ」と大声で怒られる。
介護職でも看護師でも容赦なく、利用者さんの前でしかるので、スタッフみんなが理事長の回診を怖がり、緊張していました。
そんな場にはいたくない、逃げてしまえ、と思い、理事長が回診に来るとわかっている日は、わざと回診の時間が過ぎてから出社することもありました。
当然、僕が逃げているのは、上司にもバレバレです。何度も注意されました。
でも、注意されても「すみません」と言っておきながら、また遅刻を繰り返す。
今思えば顔が赤くなるほどひどい態度で、遅刻も押し切っていました。
【介護職への目覚め】転機となったのは、「優秀な彼女」
そんな僕が「変わった」のは、入職して3年ほどたったときでした。
優秀な介護職になりたい、出世したいと、切実に思ったのです。
不真面目な介護職だった僕がそのように思うようになったことは、ある女性との出会いに起因します。
彼女は、僕が老健に入職して2年目に、新卒で作業療法士として入職した子でした。
最初から「ずば抜けて優秀な女性が入ってきた」とうわさされていました。
父親は大手企業の研究職、母親は大学の准教授、という家に生まれ、見た目もかわいい、頭もいい。まさに才色兼備とはこのことだ、というような子でした。
新人とは思えない働きぶりで、「将来の部長候補」とすぐに認められたほどでした。
そんな彼女が、僕のことを気に入ってくれた。
舞い上がりました。そして、付き合ってすぐに彼女と結婚したいと考えました。
それには、彼女の両親に認めてもらえるような人間にならなければ――。
今のままの自分では、きっと彼女も両親に紹介しにくいだろう。
堂々と紹介してもらえるような自分になろう、それには、優秀な仕事人になるということだ。
はじめて介護職としての仕事に燃えました。
【介護職としての成長期】介護技術だけでなく基本から自分を変えていく日々
介護福祉士の資格を取得して土台を作った
まず、介護職としての自分を高めるために、介護福祉士の資格を取得しました。
介護職としての勤務が3年を超え、ちょうど受験資格の要件もそろったところでした。勉強をして資格を取得したときには、すごく達成感がありました。
自分にはヘルパー2級しか資格がなかったのですが、介護福祉士の国家資格を得て、ある意味、専門職としてやっと一人前になる土台ができたと思えました。
国家資格って大事だな、と思えました。
彼女は学校を卒業した時点で作業療法士の国家資格を得ていましたし、やっと彼女と同じ土俵に乗れたというか、自分のレベルを上げて彼女に追いついたような気もしました。
あいさつをきちんとし、遅刻をやめたら評価が上がった!
彼女は、職場では「仕事もふるまいも最上級」と言われていた人。彼女から言われたことも、きちんと守るようにしました。
「あいさつをきちんとしたほうがいいよ」という基本的なことも、僕はちゃんとできていなかったんです。
「おはよっす!」程度にはしていましたが、それを、相手の目を見て頭を下げ、「おはようございます」と言うようにしました。
自分が相手に対して、きちんと敬意を払うようになったら、相手の方も、自分に対して「きちんとできるようになった」と評価してくれるようになった。
あいさつのしかたを変えただけで、自分も相手も変わることがわかり、とてもびっくりしました。
以前のように「あいつはダメだ」ではなく、「よくなってきたじゃないか」と思ってくれていることをうれしく思い、自信も生まれます。
それを繰り返していくうちに、「もっときちんとできる自分になろう」と、自らを変えていける力を得てきたと実感しています。
それと、遅刻グセも直しました。そうすると、周りのスタッフからの視線が変わりました。
これまで「ダメ介護職」と見られていた僕が、いつしか「優秀なグループ」の仲間入りをしていたんです。
あいさつや遅刻なんてささいなこと、介護ができてさえいればいいだろう、と考えていたのですが、自分の態度や行動を変えただけで、こんなに周囲からの評価が変わるのか、と身をもって知りました。
次回は、介護職としての意欲に燃えて働き始めた矢先に、挫折を味わうRさんの思いをお伝えします。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
*R・Jさんの「転職 成功・失敗 体験談」…1回目、
2回目、
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4回目(最終回)はこちら
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