◆グループホーム(正社員/介護職)→訪問介護事業所(準社員/サービス提供責任者)
K・Sさん(男性・36歳)
介護業界での経歴詳細
●グループホーム併設レストラン(給仕係)(勤務期間:半年/月収手取り約14万円)
●グループホーム(介護職)(勤務期間:5年/月収手取り約16万円)
●訪問介護事業所(ヘルパー→サービス提供責任者)(勤務期間:2年半/月収手取り約20万円)
→訪問介護事業所(管理者)(勤務期間:2年半/月収手取り約20万円+管理者手当・ボーナスあり)
→訪問介護事業所(準社員/サービス提供責任者)(勤務期間:1年半/月収手取り約16万円)
保有資格:介護福祉士
家族構成:妻
*K・Sさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目、2回目、
3回目、
4回目(最終回)はこちら
【介護現場の楽しさを実感】「科学的介護の実践」を身近に感じる
目の前の困りごとを理論で解決していく介護
入社した会社は、認知症対応型グループホームに特化した会社でした。
認知症を科学で解き明かし、そのデータをもとに介護をしていこう、という理念を持っていました。
それだけに、科学分野の知識に長けた先輩、経験の深い看護師、てきぱきと判断して仕事を進めていく理学療法士や作業療法士がいて、非常に刺激的でした。
医学、看護学、介護学、心理学……、さまざまな学問の必要な部分を抽出しながら行う社内研修は、今でもすばらしいものだったと思っています。
人間を取り囲む、科学的・物理的な環境を整えれば、人間は生物学的に安定する、などという論理も飛び交いました。
たとえば、「あの利用者さんには水分が足りないのではないか?」という疑問に対して、多くの介護事業所は、「じゃ、適宜水を飲んでもらおう」と感覚的に実践するのかもしれません。
しかし、僕が働いていたグループホームでは、感覚的な判断を最小にして、もっと科学的な理由や原因を考えて実践していました。
「水分不足では、必要なホルモン物質が出て行かない」
「物理的な環境の整備ができていないと水を飲める状態になりにくくなる」
「では物理的な整備とは何か、整えられた環境の中でどれくらいの量の水を飲んでいただけばいいか」
「その水を心地よく飲んでいただくにはどのような環境と声かけが必要か」
などの疑問に対する答えを、個別のデータをもとに、構築していく。
そして、実践した後にもデータをとり、その方にとって必要な水分量や飲むタイミングなどを適切にとらえていくのでした。
レストランより、介護職として働いている方が楽しい!
介護とは奥が深く、すばらしい仕事なのだ、としみじみ思いました。
そして、すぐに自分の中ではレストランスタッフとしてよりも、介護職として仕事をしていきたいという気持ちが固まっていきました。
やはり、自分を介護職としてスカウトした管理者のねらいは、正しかったのでしょう。
自分には介護職が合っていると、心から思えたのです。
【転職への思い】閉じた世界から飛び出したい
グループホームの中だけの「安定した生活支援」
最初は、夢中で介護技術や知識を学びました。
そして、学んだことを利用者さんへのケアで実際に実践させていただき、喜んでいただけることもうれしかった。
また、手に入れた技術や知識を、仲間と分け合い、伝え合える環境にも満足して、やりがいを感じる毎日でした。
しかし、入社して4年目くらいになると、次第に「これでいいのか」という思いを抱えるようになりました。
ここでやっている介護は、たぶんすばらしい。
でも、5軒あるグループホームの中での実践でしかない。
利用者さんたちに、よい影響があるものの、この閉じた世界の中でしか効果を実感していただけないと感じたのです。
たしかに我々は、施設でできることを最大限にやってきました。
でも、利用者さんたちは本当に施設にいて満足だったのだろうか。
スタッフはそれなりにいい人ととらえられていたかもしれないけれど、家に帰りたい気持ちもあったでしょう。
「生物的に安定している状態」は実現できても、文化的・情緒的満足を感じてもらえていただろうか。
そもそも、利用者さんが元々どんな暮らしをしていたのか、それすらも知らなかったのです。
介護職だけど、在宅介護も介護保険の仕組みもわからない自分に焦り
自分たちは、この施設の小さな世界にしか生きていないのだな、と実感しました。
それに、世の中では「介護」という言葉で、グループホームも特別養護老人ホームも在宅の訪問介護やデイサービスなどもひとくくりにされることが多いですが、介護福祉士の資格を持っていてもグループホームの現場しか知らない自分に「訪問介護に行ってください」と言われても、戸惑うばかりで、適切な介護なんてできないと思ってしまいます。
介護の世界にいるのに、「介護保険のことを教えてほしい」と言われても、本当に大まかなことしかわかりません。
介護の世界はとてつもなく広いのに、そして、介護は「これでいい」という正解がなく、何年やっても、掘っても掘っても掘り切れることがないのに。
もっといろいろな世界を知りたくなってきました。
【転職のもう1つの決め手】給与体系のあいまいさへの不安
切実な転職のきっかけもありました。
同じグループホームで介護職として働く女性と、結婚することになったのです。
お互いに給与はわかっているだけに、「この給与で家族がこの先、満足して暮らせていけるのか」という疑問がわいてきました。
僕の当時の給料は月に手取りで16~17万円。
夜勤手当はあったものの、それも込みの金額でした。
年俸制で、ボーナスはありません。
入社したときから5年たっても、給与はそれほど変わらない。
残業時間がきちんと反映された給与なのか、という点も限りなくグレーでした。
介護についてはきちんと理論があっても、お金の動きにあいまいな面がありました。
この企業体質が、実は経営にも影響していることが、だんだんわかってきました。
結婚する前に仕事を辞めるなんてとんでもない、と言う考えもありましたが、介護職として5年働いて、ケアについても給与についても、欲が出てきていたのかもしれません。
新卒のときの和装具メーカーの初任給20数万円や、ファミリーレストランでのアルバイト勤務の手取り20万円前後と比べても、今の給与のままでいいのか、という不安もありました。
『次のステップに進むために、この会社を辞めよう。』
結局、レストランスタッフとしての半年間、グループホームでの5年間の勤務の後、僕は最初に勤務した介護事業法人を辞職しました。
【介護業界での転職】利用者さんの人生に寄り添う訪問介護へ転職
失業手当をもらい、経理について勉強
グループホームを退職した後は、失業保険をもらって3か月ほどハローワークに通っていました。
そして、その後3か月ほどは、ハローワークがやっている職業訓練校に通いました。
「介護職はお金の管理や動きに弱い」ということを痛感したので、経理や総務の研修を毎日みっちり受けることにしたのです。
毎日通うことで、月に15万円ほどの手当てが入ることも、魅力でした。
そして、ハローワーク主催なので、その間、自分の希望する職種の企業の紹介もしてもらえました。
面接があるときには、研修を休んでいいことにもなっていたので、自分にとっては非常にありがたいしくみでした。
友人からの紹介で訪問介護事業所に転職
介護業界でいくつかの面接を受けましたが、結果的には、アルバイト時代に知り合った同僚が所属する訪問介護事業所に転職しました。
安定した法人ですし、地元での評判も悪くない。
グループホームにずっといて、利用者さんひとりひとりの人生をもっと知りたい、在宅介護に携わりたいと思っていたので、訪問介護事業所に勤務することが、希望でもあったのです。
そして、転職先が決まって勤務が始まり、間もなく、お付き合いしていた前職場の女性と結婚式を挙げました。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
次回は、現在勤務している訪問介護事業所での仕事内容や、グループホームでの仕事内容との違いをお伝えします。
次回「僕の「働き方改革」は、週休3日のサービス提供責任者~転職体験Kさん3」は、9月18日に公開予定です。
*K・Sさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
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