◆特別養護老人ホーム(介護職)→訪問介護事業所(住宅型有料老人ホームに併設)(ヘルパー→サービス提供責任者)
T・Hさん(女性・43歳)
介護業界での経歴詳細
●特別養護老人ホーム(勤務期間:3年/月収約14万円程度)
●訪問介護事業所(住宅型有料老人ホームに併設)(勤務期間:2年/月収約24万円+ボーナス約4カ月分/介護福祉士手当あり)
介護業界以外での経験:大学病院事務職
保有資格:介護福祉士
家族構成:本人のみ(長男)
【初めての仕事】病院の事務職は働きやすかったけれど…
職員同士の仲が良く、働きやすかった医療事務
高校を卒業するときには、特別やりたい仕事もなく、スーパーマーケットで1年働いた後に派遣会社に登録。病院で事務職を募集しているのを知って、医療事務として働き始めました。
今でこそ病院の事務職(クラーク)はパソコンを使ってカルテを作るなど、仕事ぶりがスマートですが、当時は紙カルテの時代でした。
診察券を受け取ると、あいうえお順になっている紙カルテを取り出し、担当の医者に渡すのが事務職の仕事。
単純な業務ではありましたが、職場環境がよく、和気あいあいと働けました。
途中結婚もしましたが、そのまま勤め、3年が過ぎました。
その後、妊娠・出産を機に、医療事務の仕事は退職。専業主婦をしていました。
子どもが1歳になり、子育てにも余裕ができてきた頃に、もう一度働きたいと思い、家からほど近いファミリーレストランで、パートで働くことにしました。
他に本腰を入れて働ける仕事はないかな、と思いつつも、転職活動をする余裕もなく勤務していたら、ある日、医療事務時代の先輩に道でばったり会ったんです。
仕事への不満や悩みを話していたら、先輩に「もう一度うちの病院にいらっしゃいよ、ちょうど今、事務職を募集しているわよ。私が推薦しておくわ」と誘われました。
そこの病院は人間関係がとても良く、彼女のような気っぷのいい先輩が、後輩たちの面倒を見てくれる働きやすい環境だったのです。
それに、小さな子どもを保育園に預けながら働くと、熱を出したと保育園から呼び出されたり、行事があったりで、平日に休むことがありましたが、先輩はそういうことにも理解がありました。
「お願いします!」と即答し、先輩からの紹介で、もう一度雇ってもらえることになりました。
彼女の後をついて行けば、何も問題なく長く働ける環境に助けられ、復職後、11年も医療事務として勤めました。
どんなにがんばっても派遣社員のまま
居心地がよく、残業もなく、小さな子どもがいることにも理解がある。
この上なく良い職場環境でした。
けれど、身分的には、派遣社員。
病院に直接雇用されていたのではなく、派遣会社の登録スタッフだったんです。
出産前は、日給7,000円。その後、派遣会社が変わることになり、「元の派遣会社に所属して別の病院に勤めるか、新しい派遣会社に登録し直して今の職場に残るか」を迫られ、職場環境を変えたくなかったので、派遣会社を移ることに。
長く働いて時給も上がり、月収も増えましたが、ずっと正社員にはなれませんでした。
ケアについて一丸で考えられる介護職やナースがうらやましい!
長く病院の事務職として勤めたので、さまざまな部署に配属され、病棟での事務業務もひととおり経験しました。
いつの間にかリーダーになり、先輩として後輩をまとめる立場になりました。
ただ、朝や夕方の申し送り、ドクターとの話し合いなどで看護師や介護職が輪になって話している間も事務業務をするのですが、なんだか「あなたに話してもわからないから」と言われているような気がしてしまい、寂しくなることがありました。
あの輪に入りたい。
患者さんの介護や看護について、みんなで連携しながら考えていける立場になれたら……。
事務職は結局、患者さんに直接役立つ仕事はできないのかな、という思いも沸いてきたのです。
子どももそろそろ中学生。
何か資格を取って、自分の技術や経験に胸を張って働くことはできないか。
そんな思いが募り、次のステージに進みたいと思い始め、思い切って病院を退職しました。
【介護業界との出会い】実務者研修って?
「手に職をつける」ために、資格がほしい!
ずっと病院に勤めていたので、医療職で資格を取ることも考えましたが、看護師は長く学校に通わないといけないですし、授業料もかかるので、子育てとの両立は難しそう。理学療法士や作業療法士などの医療職も同様でした。
病院を退職後に失業保険をもらっていたので、その間に職業訓練校に通い、資格を取得し、すぐにその資格で働くのがよいと思い、よくパンフレットを見てみると、介護福祉士実務者研修という研修に目が留まりました。
介護職で唯一の国家資格が、介護福祉士。
その介護福祉士に近づくためには、実務者研修を受けることがマストです。
介護職として身体介護をするなら、介護職員初任者研修を受ければよく、それなら2~3カ月の研修とそれほど難しくない試験で資格を取得できると聞きました。
けれど、取得するなら国家資格だと思いましたし、きちんと長い研修を受けて、一人前の介護職になりたいという気持ちが強かったのです。
そして、職業訓練校で研修を受けるのなら、お金をもらいながら研修を受けられる。
これしかないと思い、実務者研修を受けることにしました。
実務者研修第一号として新しい校舎で学ぶ
実は、ヘルパー1級・2級・3級という資格から、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修というように、資格が変わったその年に、私は実務者研修を受けることになりました。
私が通ったスクールでは、研修を受けるために数学・国語・面接の試験がありましたので、受験のための勉強も必要でした。
息子の教科書なども借りながら、一生懸命勉強をして臨み、合格して通えることになったのです。
実務者研修のための校舎も新設したばかりで、何もかもが新しく、門出にぴったりだと思いました。
【はじめての介護職】オープニングスタッフとして特別養護老人ホームへ
実務者研修で学んだ内容は、すべてが現場に即したもので、介護職のプロになるということはどういうことなのか、よくわかりました。
実習も、特別養護老人ホームのほか、介護老人保健施設、認知症型グループホーム、有料老人ホーム、デイサービスなど、主な介護サービスすべてを見学・研修し、勤め先についての知識を得ることができました。
そんな中で私が就職先として選んだのは、特別養護老人ホーム(特養)でした。
「忙しい」と聞いていたけれど、やはり介護職として一人前になるには、特養で働いた経験が大事だと思いましたし、特養での介護の厳しさ、忙しさを乗り越えられれば、きっとどこでも働けるのではないか、という期待がありました。
ただ、古くからあるホームだと、先輩職員と新人との間に確執があるという話も聞きました。
なので、私はオープンして間もない施設を就職先に選びました。
オープニングスタッフとして、みんなが横一列で、力を合わせてホームを運営していく。
そんなイメージを持って、就職を決めたのです。
しかし、思いどおりにはいきませんでした。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
次回は、特別養護老人ホームでオープニングスタッフとして介護職を始めたTさんの悩みについて、語っていただきます。
次回「特養で辛い思いをしながら3年仕事を続けたワケは?~転職体験Tさん2」は、12月4日に公開予定です。
●○● 介護業界で転職する時の 基本ノウハウ ●○●
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