障害者の日常生活におけるさまざまな支援を行う専門職、生活支援員。
今回は障害者支援の仕事や生活支援員の仕事に興味がある方に向けて、仕事内容や活躍できる職場、給与や適性について解説します。ぜひ参考にご覧ください。
1 生活支援員とは?
2 生活支援員と似た介護・福祉の職種
3 生活支援員の主な仕事内容
4 生活支援員が活躍する職場
5 生活支援員の給与
6 生活支援員に向いている人の特徴
7 生活支援員の将来性
8 今後も注目が集まる生活支援員はやりがいのある仕事!
生活支援員とは、障害者施設や就労施設などで障害者の日常生活における自立支援を目的にさまざまなサポートを行う専門職です。
基本的には食事・入浴・排泄などの身体介護や、調理・掃除・洗濯などの家事支援、金銭管理などの直接的な支援を行います。施設によっては利用者が自立して生活するための就労支援のサポートも行うこともあります。
福祉・介護の仕事のなかには、似たような職種が多くあります。生活支援員に似た職種に関して、役割や業務内容を詳しく見ていきましょう。
主に高齢者介護の現場で活躍する専門職です。特別養護老人ホーム・老人保健施設などの介護施設や利用者さんの自宅などで介護サービスを提供します。
世代にかかわらず心身に障害がある利用者を対象とする生活支援員とは異なり、高齢者のみを対象としている点が大きな特徴でしょう。また関係各所への連絡・調整やマネジメント業務を行わず、介護サービスの提供だけに専念する点も生活支援員との違いといえます。
特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護施設において、相談業務や事務手続きの支援、関係各所への連絡・調整などを行う専門職です。生活相談員として働くには社会福祉士や社会福祉主事といった資格や、介護現場での相談業務の経験が求められます。
生活支援員とは名前が似た職種ですが、生活相談員は主に高齢者介護の現場で働いており、利用者や勤務先が異なります。
障害者の生活を支えるための地域生活支援拠点の整備が進められるなかで生まれた職種です。障害者が地域で自立して生活を行えるよう、地域の福祉サービス事業所・医療機関・公的機関との連携や連絡・調整、マネジメント業務などを行います。生活支援員よりも業務の幅が広い職種といえます。
母子・父子家庭の生活支援や子育てサポートなどを行う専門職です。母子家庭・父子家庭で子育て中の方が病気になってしまったり、仕事でどうしても帰りが遅い場合などに、代わりに子どもの面倒をみます。
子育て世帯への支援が中心であり、生活援助や保育に関する知識や研修が必要です。
上記の業務のほか、利用者の家族との連絡・調整、利用者が抱える課題の整理、支援内容に関するマネジメント業務など、細かい業務が多くあります。
基本的には朝から夕方までの日勤帯での業務です。通常業務を行いつつ、施設によっては見回りや施設入所希望者の家庭訪問、ボランティアや実習生の受け入れなども同時に行います。日によっては連絡調整やマネジメント業務が発生したりと、利用者や他事業所の状況を見ながら臨機応変な対応が求められることが多いでしょう。
生活支援員は基本的には心身に障害を抱えている方を対象にサポートを行う仕事なので、主な職場は障害者関連の施設です。生活支援員が活躍できる職場を具体的に解説します。
障害者が共同生活を送る施設です。大きく分けて4種類あります。
日常的に食事・入浴・排泄などの介護を行う「介護サービス包括型」、ほぼ一人暮らしに近い形で生活し、必要に応じてグループホームで食事・入浴などの支援を受ける「サテライト型」、日常生活の支援のみを行い、介護サービスを利用する場合は外部サービスを利用する「外部サービス利用型」、日中にのみ介護サービスを提供する「日中活動支援型」に分かれています。
生活支援員が活躍するのは、介護サービス包括型・サテライト型・日中活動支援型です。
自立に向けた就労支援を行う施設です。
障害のある方と雇用契約を結び、生産活動の機会提供や技術・知識の向上を促すことで就労を支援する「A型」と、A型での就労が難しい方を対象に雇用契約は結ばず生産活動の機会提供・就労支援を行う「B型」の2種類があります。
生活支援員は利用者の健康管理の指導や生活相談、作業におけるさまざまなサポートなどを行います。
一般企業へ入職するための支援や、職場へ定着するための相談業務などを行う施設です。その他にも就労に必要な基礎能力や習慣・技術の習得などを支援しています。
生活支援員は就労継続支援事業所と同様、利用者の健康管理に関する指導や生活相談などを行なっています。
障害者が入所する多機能型施設です。身体介助や生活支援、創作・生産活動の場の提供、就労・自立支援に関するさまざまな訓練などを行なっています。
生活支援員は日常生活における介護や相談業務、さまざまな関係機関・施設内における連携・連絡調整などの事務作業を担当します。
心身の障害により判断能力が不十分な利用者に対して、福祉サービスの利用援助を行なう社会福祉法人です。
生活支援員は利用者の自宅を訪問し、食事・入浴・排泄などの身体介助や調理・掃除・洗濯などの家事援助といった自宅での生活におけるサポートを行なっています。
厚生労働省「令和4年度障害福祉サービス等従事者処遇状況等調査結果」によると、生活支援員の平均給与は、常勤の場合で325,450円、非常勤の場合で109,110円です。(※)
障害福祉サービス事業所で働く福祉・介護職員全体(資格の有無に関わらず福祉・介護職員として事業所に雇われている者)の平均給与312,310円と比較すると、1万円ほど高い給与水準といえるでしょう。ただし給与は、施設の種類や規模、加算の取得状況などで大きく異なるので、転職・就職の際は求人情報をよく確認しましょう。
(※)令和4年度に福祉・介護職員処遇改善加算の届出をしている施設・事業所における給与
生活支援員は無資格からでも働ける職種ですが、性格や考え方で向き不向きはあるのでしょうか。生活支援員として働き始めてからギャップを感じないためにも、今の自分に適性があるのか確認しておきましょう。
生活支援員の業務には、利用者やその家族とのコミュニケーションが欠かせません。利用者・家族から悩みや困りごとを相談してもらうためには、積極的にコミュニケーションを取り、相手の話に耳を傾ける姿勢が大切です。関係各所との連絡・調整の際には、こちらの状況を説明する力、相手の状況を理解する力も求められます。日頃から人とコミュニケーションを図り、相手との意思疎通のために尽力できる人は生活支援員に向いているでしょう。
さまざまな心身の障害を抱えて生活している人の中には、自分の現状や将来について悲観してしまう人も少なくありません。素直につらい感情や思いを口にするのが難しいケースも多く、一人で悩みを抱えている人もいます。そうした利用者に前向きでありながら相手に寄り添った言葉をかけてあげたり、黙って話を聞くことができる方は生活支援員に向いているでしょう。
障害者を対象にした支援サービスを行っていると、利用者が突然パニック発作を起こしてしまうことがあります。障害や病気の影響で、急激な体調の変化が起きるケースも珍しくありません。もちろん知識や経験が蓄積されてこそ対処できる状況もありますが、日頃から危機管理意識を高くもち、緊急時にも冷静な判断ができる人は生活支援員に向いているといえるでしょう
食事・入浴・排泄などの身体介護業務には体力が欠かせません。特に入所型施設では一日中立ちっぱなしで入浴介助や排泄介助を行うこともあります。時には自分より体格の大きい利用者の対応を行うことも。介助を行うなかで体力だけに頼らない方法も身についていきますが、入職時点で最低限の筋力や持久力は必要でしょう。
生活支援員は未経験から始めることができる職種ですが、入職してからはさまざまな知識やスキルを求められます。自分ができる仕事の幅を広げたい、もっと利用者や同僚の役に立ちたいという意欲がある人は成長も早く、戦力として活躍できる適性を持っているといえるでしょう。
国は障害者支援の施策である障害者基本計画を掲げ、重点的に取り組む課題として障害者が活動し参加する基盤の整理などをあげています。また、厚生労働省の基本指針に従って市町村および都道府県が作成する障害福祉計画においても、障害福祉サービスの充実が推進されています。これらを考えると、今後、生活支援員はより需要が高まる仕事といえます。障害者支援を行う施設・事業所は増加傾向にあり、その分、生活支援員の求人数も増えています。この傾向は今後も続くと考えられるでしょう。
また、生活支援員として働きながらさまざまな経験・知識を積み重ねていくことで、サービス管理責任者・社会福祉士資格取得などキャリアアップを目指すことも可能です。
生活支援員は心身のさまざまな障害を抱えた方の生活を支える障害者支援の要となる職種です。直接介護や、関係各所との連絡調整、事務手続きのお手伝い、支援内容に関するマネジメント業務など、幅広い業務を行います。今後、需要がより高まり求人も増えることが予想されるので、未経験でも始めやすい仕事のひとつとなるでしょう。福祉や介護の業界で働きたいと考えている人はぜひ検討してみてくださいね。
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