片道1時間以上かけて通勤してきたけれど、定年まであと10年。地元の施設に移ったほうが無理なく長く働けて、地域にも貢献できるのでは?そう思って転職したものの……。
Mさんが転職後に抱える、リアルな悩みや今後への思いを聞きました。
▲Mさん(50代前半・男性)
【前職:有料老人ホーム・介護職(フロアリーダー)】
・勤続年数 11年(正職員)
・給料 月28~30万円(ボーナスあり)
・勤務 9:00~18:00(早番)、夜勤あり、月9日休
【現職:小規模多機能型居宅介護・管理者候補】
・勤続年数 3ヵ月(正職員)
・給料 月28~30万円(ボーナスあり)
・勤務 9:00~18:00(早番)、夜勤あり、月9日休
【転職歴】
飲食業→人材派遣会社→業務委託営業→有料老人ホーム→小規模多機能型居宅介護
目次
・ 大手法人の理念に共感して介護業界へ!
・ この先の10年を見据え、地元に転職
・ 面接を通して前職と同じ給料に
・ 転職先で「お局」スタッフに悩まされる
・ 職場環境を改善して個別ケアを実践したい
・ 介護職を「辞めたい」人へ
Q 介護職になろうと思ったきっかけは?
A 大手介護法人の理念に惹かれて「資格もあるしやってみよう」と決めた
もともと介護の仕事をする予定はありませんでしたが、実家に来ていたヘルパーさんの影響で資格を取ることに。
当時は営業職に就いていて、介護のことはまったくわからなかったのですが、その方の仕事ぶりを見て「すごいな」と思ったんです。母は認知症で暴言は吐くし、けっこう暴れたりもしたのですが、対応力が抜群で。そんな姿を見て、少し介護のことを勉強したくなり、ヘルパー2級(現在の介護職員初任者研修にあたる)を取得しました。
その後、たまたま大手の介護事業法人のホームページを見かけて読んでみたら、利用者のことも職員のことも大事にするような感じで、そのポリシーにすごく惹かれて。福利厚生もよさそうですし、「介護の仕事もいいんじゃないかな」と思いました。未経験でしたが資格があったので、思い切って応募してみたのが、この業界に飛び込んだ最初の一歩です。
Q 前職を辞めたいと思ったきっかけは?
A 10年後を考えたら地元で就職したほうがいい。個別ケアも深めたかった
前職の有料老人ホームには11年勤めましたが、とてもいい職場だったんです。
職員は年代を越えて仲が良く、利用者さんへの敬意がある。長い時間をかけてアセスメントをして、何をしたらその方らしく暮らせるかを職員みんなで考えて実践していました。そうした事例を法人全体で共有する機会もあり、前向きな風土で、そこに不満はなかったんです。
でも、ちょっと通勤が大変でした。もともと自宅の近くで採用していただいたんですが、家庭の事情で隣の県に引っ越すことになって。電車で1時間余りでしたが、やや遠かった。
自分はそろそろ55歳になります。あと10年で定年。そう考えるといつまでも他県で勤務するより、自分の住む地域に貢献して働くほうがいいんじゃないかと考えるようになりました。
また、集団ケアより個別ケアに興味があったことも、転職した理由の1つです。
在宅中心の介護なら個別ケアに特化できると思い、小規模多機能型居宅介護を運営する法人に転職しました。
■小規模多機能型居宅介護とは?
訪問、通い(デイサービス)、泊まりを組み合わせて、利用さんの意向や体調に沿ったケアを行う介護サービス
Q 今の職場にはスムーズに転職できた?
A 給与の調整で少し時間がかかった
面接では好感を持ってもらいましたが、給与の折り合いがつきませんでした。前職よりだいぶ安い金額だったので、即決はできないな……と。
以前は大手法人でしたし、勤務歴も11年と長かったのでその差も大きかったかもしれません。地域の最低賃金の違いも影響していたと思います。ただ妥協はできなかったので「この条件だと難しい」と伝えました。
すると、しばらくして先方から連絡があり、「管理者候補」ということで前職と同じ給与を提示してくれたんです。それで「そこまでしてくれるなら」と入職することにしました。最初の面接から半年くらいかかりましたね。
Q 新しい職場に転職した感想は?
A 「人間関係に課題があるな」という印象
転職先の施設は1年半前にオープンしたのですが、そこから10名の職員が退職していたようです。まだここに来て3ヵ月しかたっていないのでわからない部分もありますが、主に人間関係が問題なのかな、と感じています。
年配の女性スタッフ2名が「お局」のような存在になってしまっているんですよね。
他の職員の行動に常に目を光らせていて、だれかがちょっと失敗をすると「なにやってんの!」と叱責が厳しい。言っていることは正論なのですが、もう少しやわらかく言わないと、若いスタッフは萎縮してしまいます。
同じ敷地内にある訪問介護の事業所は和気あいあいなので、やっぱりこのふたりが牛耳っていることが、退職率の高さにつながっていそうです。
Q 転職してやりたかった「個別ケア」はできている?
A 現状できていない。前例のないケアを嫌う風土がある
個別ケアがしたくて在宅中心の小規模多機能を選んだのですが、今の職場ではほぼできていません。
利用者さんやご家族の希望があっても、今までやってこなかったケアは、職員がお断りしてしまうケースすらあります。
例えば「デイで編み物がしたい」という利用者さんがいても、認知症があるから難しいと決めつけて、本人の希望とは違う集団体操に参加してもらったり……。
それくらいなら、以前にいた有料老人ホームのほうが有意義なケアができていたと感じてしまいます。
Q 介護業界での今後の目標は?
A 管理者候補として、働きやすい職場づくりと個別ケアの充実化を目指したい
人間関係に課題があるままだと、いくら志のある新人が入ってきてもすぐに辞めてしまいます。
まずは思い切って所長に実態を伝え、お局のふたりに面談をしてもらうところからスタートしました。自分は新参者なので、あまりでしゃばるのはよくないかもしれませんが、「管理者候補」として関係性を築きながら少しずつ職場環境を改善していきたいです。
また、個別ケアの実践事例を増やしながら、利用者さんの「やりたいこと」「やれなかったこと」を叶えていける施設にしたいと考えています。
数か月後には管理者研修があるので、それも受けさせてもらい、この職場でキャリアアップしていきたいです。
Q 今まさに介護職を「辞めようかな」と思っている人へアドバイスは?
A 介護自体はすばらしい仕事。人間関係に惑わされるともったいない
介護職は、高齢の方がご自身だけではうまくできないことを少しサポートして、やりたいことを実現していただく仕事だと思っています。だからこそ、その方に充実した毎日を送っていただくためにも、個別ケアを深めることに意義があるのです。
その原則からはずれないような職場づくりができるといいですよね。
人間関係は働きやすさに直結する重要な問題ですが、そこに惑わされて介護のすばらしさを忘れてしまったら本末転倒です。
職場環境をみんなで努力してよいものにして、利用者さんや社会に貢献していけるといいなと思います。
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社会福祉士、介護職員初任者研修、福祉住環境コーディネーター2級。
約30年前よりファッションや芸能、子育て、教育などを中心にライターとして活動。2012年、親の介護を機に社会福祉士国家資格を取得し、高齢者介護・医療・健康分野でのライターとしても活躍中。
現在は、法定成年後見人として支援が必要な方の財産管理や身上監護も行う。
介護、医療、教育、子育てなどのテーマを中心にWEB雑誌・書籍などの記事執筆を多数担当。
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