■書名:根拠からわかる介護技術の基本
■著者:前川美智子
■発行元:中央法規出版
■ 発行年月:2008年5月20日
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介護技術の「根拠」「目的」を理解し、要介護者の気持ちに寄り添うケアを
「要介護者の食事は、ごはんやおかずよりも、汁物を先に」
「足浴をさせるときは、足の裏を一定の方向で強く洗う」
これらの対応は、介護の現場で要介護者に対して、求められていることの一例だ。
実際に介護技術を学んだときも同様に指導され、現場でも当たり前のように行われている。そのため、特に疑問を持つことなく、日々要介護者との対応に使用していることが多いと思われるが、それらの行為一つひとつに「根拠」があることを考えたことはあるだろうか。
本書は、介護に携わる専門職に必要な基礎介護技術とともに、「なぜ、このような順番で支援するのか」「なぜこのやり方なのか」など、その「根拠」について解説している。
例えば、冒頭で紹介した「食事のときに汁物を最初に勧める」のは何故だろうか。
これは、加齢に伴って、唾液の分泌量が減ることから、要介護者が咀嚼(そしゃく)しやすいようにすることが理由だ。あらかじめ、お茶や汁物などの水分で口腔内を湿らしておくと、食事がしやすくなり、さらに唾液の分泌も促進される。
本書では「コミュニケーション」「食事」「移動」「体位変換」「排泄」「入浴」など、様々な場面で求められるケアの方法について、Q&A方式で解説している。
「シーツに糊づけしてはいけない理由は?」「呼吸は本人に気づかれないよう測るのはなぜ?」「利用者に友達のように話してはいけない理由は?」など。また、イラストも豊富なので、視覚から「根拠」が理解しやすい。
日々行っている対応や技術に「なるほど、このような意味があったのか」と納得できる内容だ。
<介護技術の習得は、介護職にとっての基本ではありますが、介護者が個々の介護技術の目的や意味を納得したうえで、利用者へ安全に安楽に提供できることは、常に重要なテーマであり、利用者の生活を支えるケアの根底となります>
「介護職」となっているが、家庭で要介護者と暮らす人にも役立つ内容も豊富に盛り込まれている。「これまで病院でこのように指導されてきたから」「何となく」と行ってきた様々なケアの方法を見直すきっかけにもなりそうだ。
日々、介護に携わっていると対応もルーティンになり、要介護者の気持ちをおざなりにしたケアになることも考えられる。
介護の基本技術の「目的」や「根拠」を理解することで、要介護者の気持ちに寄り添ったケアができるのではないだろうか。
<松原圭子>
著者プロフィール
前川美智子(まえかわ・みちこ)さん
日本福祉教育専門学校専任講師、淑徳短期大学教授、東京福祉大学教授を経て、現在は国際医療福祉大学医療福祉学部特任教授。看護師、介護福祉士、介護支援専門員の資格を持つ。「介護技術ポケットブック」(日総研)など、介護に関する著書も多数。