「指先の“ココ”を意識するだけで身体はどんどん変わってくるんですよ」と陽紀先生。そんなスゴい指先の“ココ”とはいったい……?
＜協力 身体技法研究家 甲野陽紀氏／文・構成 佐藤大成＞
桜色が映える季節になりましたね。こんにちは、身体技法研究家の甲野陽紀です。
前回のクエスチョンは「指先ってどこ?」でしたね。そう聞かれて、指の最先端部から1cmほどのあたりをなんとなく見つめてしまった方が多いのではないでしょうか。もちろん「そのへん」ではあるのですが、身体の感覚の変化という視点から見ていくと、もう少し細かく分けて考えることができるように思います。
右の3枚の写真は、指の最先端部から1cmほどの部分をさらに3つに分割してみたところ。白い紙に触れている指の部分が少しずつ違います。考えてみたいのは、この小さな違いによって何が変わってくるのか、ということです。ここで、前回試した「身体の安定感を増す手の形」を思い出してください(写真d)。
3つに分割した指先とくらべてみると……一目瞭然ですよね。＜写真b＞と＜写真d＞の手の感じはよく似ています。つまり、手全体を意識しなくても、指の先端部の半月状になった部分を「指先」として意識するだけで、手の形は自ずとよく似てくるのです。形が似るということは、身体と手のつながる感覚も似てくるということ。そうなんです、どうやらココが身体の安定感につながる指先の“ツボ”らしいのです。
その理由については、推論はさまざまできるのですが、たとえば、みなさんはなにか得体の知れないものに触れるとき、おそるおそる指先でチョンチョンとつついたりしませんか? そのとき使う指先の部位はおそらく、指の「再先端」でも「ハラ」でもなくて、この「半月状の部分」ではないでしょうか。“ココ”を指先として使えば身体は安定しますし、それは、その得体の知れない相手が急に飛びかかってきたときでもすぐに対応できる状態だともいえます。いわば、身体に安定感をもたらし、情報をキャッチする高感度センサーとしても働く優れた部位、それが指先の“ココ”なのです。
というわけで、わたしが「指先」というときは、この半月状の曲線部分をいつも意識しています。みなさんも、折りに触れて「指先のココ」を思い出して、意識してみてください。それだけで身体全体の“つながり感”が高まってくるはずです。
次回からテーマは「足」へ。
この人たちはいったい何をしているんでしょうね?
◆ Profile ◆
甲野陽紀(こうの•はるのり)
身体技法研究家。東京•多摩市生まれ。高校卒業後、「古武術介護」の提案者としても知られる武術研究家の父、甲野善紀氏の補佐役として各地の講習会などに同 行する中で、ささいな動きの違いから感覚がさまざまに変わっていくカラダの不思議さ、奥深さを改めて実感し、特定の方法やジャンルによらない独自の視点か らの身体技法の研究を始める。見る、触れる、曲げる、といった、わたしたちが日々、何気なく行っている動作からカラダを見つめ直すことで新しい感覚が生ま れていく“発見の体験”は、多くの方の共感を呼び、全国各地の講習会、講演会などで活躍中。スポーツや武術、音楽、医療、介護、運動嫌いの方のための身体 講座まで、講座のテーマは幅広く開かれており、ファン層も多彩。都内では、朝日カルチャーセンター新宿•湘南、よみうりカルチャー自由が丘などで定期的に 講習会を開催している。日々のくわしい活動はオフィシャルウエブサイトへ。
http://hkhp.p2.bindsite.jp/index.html
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