■書名:介護職のための困りごと&お悩み解決ハンドブック
■監修:因 利恵
■出版社:ナツメ社
■発行年月:2017年7月
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介護職の悩みはこうして解決!介護現場でありがちなトラブルの対処法を紹介
ヘルパーとして長い経験と実績のある著者が、介護職のリアルな悩みをすくい上げて対処法をまとめた一冊。
介護職の中でも特に利用者宅で訪問介護を行うヘルパーに的を絞った「ヘルパーのための」ハンドブックだ。
本書の一番の特長は、ヘルパーが介護現場で出会いがちなトラブルや悩みを、幅広く集めて豊富に掲載していることだろう。
主なものだけでも、その数は73事例。200名以上のヘルパーやサービス提供責任者にアンケートを行い、その結果をもとにしたとのことで、現場の生の声がていねいに拾われている。
例えば、本書で取り上げられているトラブルは次のようなものだ。
・訪問したら「帰っていい」と言われた
・おむつ交換をさせてくれない
・家族と利用者の希望が異なる
・器物を破損してしまった
・根ほり葉ほりプライベートな話を尋ねられる
このようなトラブルや悩みを、「1人暮らしの高齢者への支援」「老老介護の高齢者への支援」「家族と同居している高齢者への支援」「緊急時の対応」「仕事上でのトラブルへの対応」の5つのパターンに分類。第1章から第5章にパターン別にまとめて、それぞれの対処法を解説している。
巻末には、「コミュニケーション」「家族対応」「排泄」のように内容別の索引もあるので、そこから自分の悩みに該当するページを探すこともできる。
個々のトラブルの解説ページでは、問題解決のために必要な情報が十分に紹介されている。注意するべきことや問題解決方法の説明が具体的に書かれており、大変わかりやすい。
トラブル009「訪問したら排泄の失敗をしていた」を例に本書の内容を見てみよう。
排泄の失敗といえば、利用者自身にとってもショックなハプニングだ。それだけに、ヘルパーがどう対応するかが重要になってくる。
本書では、解決のカギは「利用者の尊厳を守る」という意識だと考え、これをまずページのトップに掲げている。
そして、続く本文では具体的な対応として、「あらら、大変」「困ったわ、どうしよう」などの言葉は利用者を傷つけてしまうので言わないこと、優しい声かけをして心理的ケアもしっかり行うことなどをアドバイスしている。
さらに現場の介護職にとってありがたいのは、声かけ例が挙げてあることだろう。
〈声かけ例〉
・誰にでもよくあることなんですよ
・心配しなくて大丈夫。ある程度年をとるとあちこちが衰えてくるのは、みなさん同じです
・尿や便が出なくて悩んでいる人も多いんですよ。出てよかった
排泄の失敗で自尊心が傷つき気落ちしている人への声かけは、とりわけ難しい。こうした声かけの具体例はとても参考になるはずだ。
続くページでは、さらに4つの関連する困りごとを解説。
「トイレに間に合わない」「頻繁にトイレに行きたがる」といったありがちなケースから、「手を入れておむつをずらしてしまう」「便器にたまった水で手を洗う」のように一歩進んだ内容まで、ふんだんな事例が取り上げられている。
介護職やヘルパーを悩ます介護現場のトラブルのほとんどは、本書で解決のヒントをみつけられそうだ。
特に、利用者宅へ訪問して介護を行うヘルパーや、サービス提供責任者の方にとって、そばにあれば安心な一冊となることだろう。
監修者プロフィール
因 利恵(いん・としえ)さん
ホームヘルパー歴20年の経験と実績をもとに、大学での教鞭や介護関係機関の委員、要職を歴任。「無理をしない介護」を社会に広めている。日本ホームヘルパー協会名誉会長、日本介護福祉士会常任理事、福岡県介護福祉士会会長。