毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「介護報酬引き下げ。新聞はどう評価?」という話題を紹介します。
介護報酬引き下げへの、新聞各紙の反応は?
政府は1月11日、3年ごとに見直しが行われる介護報酬について、2.27%引き下げることを決定した。政府にとって、膨らみ続ける介護報酬の抑制は大きな課題だが、一方で、引き下げが介護業界に与える影響は甚大だ。新聞大手各紙は、引き下げをどう見たのか?
●東京新聞
まず、もっとも厳しい言葉で介護報酬引き下げを批判したのが東京新聞だ。同紙は1月16日に「介護報酬下げ 現場が崩壊しかねない」という社説を発表し、
「人手不足がより深刻になり、介護の現場が崩壊しかねない」
「三年前と比べ消費者物価は4%超上昇していることを考えても、引き下げは乱暴だ」
「現場のニーズを反映していないのではないか」(一部抜粋)
と、引き下げが介護業界に与える影響を指摘。「このままでは職員が集まらずサービスの質が低下したり、サービスが必要でも利用できない『介護難民』が増えるのは必至だ」と、強い口調で政府の決定を批判している。
●毎日新聞
毎日新聞も東京新聞同様に“反対派”だ。毎日が社説で介護について論じたのは、報酬引き下げが決定する前の昨年12月26日だが、同紙は、「膨張する財政赤字を考えれば財務当局の危機感はわかるが」と、引き下げに一定に理解を示したものの、
「もともと経営が弱い地域福祉の基盤を崩してしまう恐れがある」
「介護報酬の削減は介護離職に拍車を掛け、労働力不足をさらに悪化させるだろう」
と、次々と問題点を指摘。「成長戦略の足をも引っ張りかねないマイナス改定はやめた方がいい」と、引き下げについて明確に反対している。
●朝日新聞
“中立”の立場を取ったのは朝日新聞だ。朝日も毎日同様、昨年12月に「介護報酬 『引き下げ』でいいのか」(12月18日付)という社説を発表したが、同紙は、
「賃上げしながら総額を減らせば、サービスが低下しかねない。このまま引き下げていいだろうか」
「政府は、一定の条件を満たした事業者には、報酬上乗せを厚くして、職員の処遇改善を図ろうとしている。改善策は必要でも、引き下げに伴うマイナスを打ち消すのに十分なのか」
と、課題を指摘するも、結論は、「政府には日本の介護全体を見渡した政策判断が求められる」と、やや玉虫色。読者に判断を委ねた形だ。
●産経新聞
一方、介護報酬引き下げを積極的に評価したのは産経新聞だ。同紙は1月15日、「介護報酬引き下げ 待遇改善に工夫を凝らせ」という社説で、
「課題となる職員の待遇改善に目を配った上での報酬引き下げは、やむを得ない判断といえよう」
と、これを評価。
●読売新聞
また読売新聞も、
「加算分が確実に賃金アップに反映されるよう、行政の厳格なチェックが必要だ」
「報酬の加算方法を工夫するなど、良質な事業者が報われる仕組みにすることが重要である」
など、“条件付き”ではあるが、
「消費税率10%への引き上げが先送りされ、社会保障の財源確保が遅れる中、歳出抑制のために報酬引き下げはやむを得まい」
と、引き下げについて理解を示している。
新聞記事のツイッター数から見る、世の中の反応は?
どの社説が介護関係者に受け入れられたかは、ツイッターの引用数を見れば一目瞭然だ。引き下げに対する社説での評価を並べると、
(引き下げを評価する) 産経>読売>朝日>毎日>東京 (評価しない)
という順になる。
しかし、ツイッターの引用数は、産経が31件、読売が22件、朝日が36件、毎日が114件、東京が934件と、東京新聞が他を圧倒。ツイッターの引用数が多いということは、その記事が共感され共有されている証でもある。
(共感・共有されている) 東京>毎日>朝日>産経>読売 (共感・共有されていない)
ツイッターユーザーから、
「これまずいんじゃない?介護充実させる気がないんじゃ…」
「これじゃなり手が集まらず 現場の負担が増え悪循環...」
「増員の必要がある、と分析して原資削るって、どういう計算なの」
と、怒りの声が寄せられており、今回の引き下げは介護関係者にとっては到底受け入れがたいものだったようだ。