毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「ツイッターに寄せられた介護士の怒り」という話題について紹介します。
一本のブログが首相を動かす時代に
ネットに匿名で寄せられた「保育園落ちた日本死ね」というブログ記事(*1)が、国政を揺るがす事態になっている。これは、「昨日見事に保育園落ちたわ」という人物が、その怒りをネットの匿名ブログに投稿したもの。
「一億総活躍社会じゃねーのかよ」
「子供産んだはいいけど希望通りに保育園に預けるのほぼ無理だからwって言ってて子供産むやつなんかいねーよ」
「保育園も増やせないし児童手当も数千円しか払えないけど少子化なんとかしたいんだよねーってそんなムシのいい話あるかよボケ」
と、激しい言葉で保育園に落ちた怒りを綴ったブログ記事は多くの賛同を呼んだ。
そして民主党の議員がこれを国会で取り上げると、安倍晋三首相は「匿名である以上、実際本当に起こっているか、確認しようがない」と回答。しかし、ツイッターでは「保育園落ちたの私だ」という声が次々と上がり、安倍首相も対応を余儀なくされた。
介護士たちの悲痛な声があがる
この流れを受け、ツイッターでは「介護士辞めたの私だ」というハッシュタグも発生した。介護士から寄せられた悲痛な叫びは、現場のリアルさが感じられるものばかりだ。そして問題提起でもある。寄せられた声の一部を紹介しよう。
「昔からなりたかった職業。立派な仕事だけど、ストレスと戦う日々 続けたくても続けられない この仕事大好きなのに。給料低いから馬鹿にされる。人の命預かってるのは看護師とも同じなのに。この給料じゃ生活も出来ない」
「仕事に誇りは持っていた。たくさん勉強したし、同僚にも恵まれた。暴力振るわれても利用者さんのことは本当の祖父母のように思っていた。でも誇りや優しさだけじゃ生きていけない。休む時間をください。仕事内容と時間に見合うだけの給料ください。社会で、認めてください。」
「辞めないよ。辞める理由はたくさんある。辞められない理由も辞めたくない理由も実はたくさんある。辞めたくない人が続けられますように、ちゃんと灯りをともしてあげて下さい。」
「介護士辞めたの私だ」というハッシュタグへの書き込み数はすでに1万件を超えている。
これらの声を「事実と特定できないので論評するに値しない」と切り捨てるのは簡単だ。確かにこういった発言の中には、「大袈裟に言っているもの」「真偽が定かでない伝聞情報を、さも事実であるかのように伝えるもの」も含まれている可能性はあるだろう。
しかし、「ツイッターで半匿名だからこそ本当のことを言える」という側面もあるはずだ。上述の「保育園落ちた」というブログ記事の件からも分かるように、今や匿名の、しかもただ1本のブログ記事に政府が反応し、対策が講じられる時代。うねりとなった現場の声が、介護士の状況を少しでも改善することは、決して夢ではなさそうだ。
※1 保育園落ちたブログ