毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「ないない尽くしでも問題ナシ?」という話題について紹介します。
学歴なし職歴なし資格なしは、転職に不利なの?
仕事を探す際に必ずしなくてはいけないのは、自分の能力ややる気をアピールすること。
しかし現実的には、アピールできるような資格や能力がなかなか見当たらず、転職には不利だと思えるような経歴の人もいるはずだ。
現在、都内の介護施設で働くルカさんは、学歴も資格もない“ないない尽くし”なうえ、仕事も10年近くブランクがあったが、現在は介護施設で正社員として働いている。
ルカさんは21歳で結婚してすぐに子どもが生まれ、専業主婦になったものの、30代を前にして離婚。子どもを連れてシングルマザーになった。
養育費だけでは到底生活ができないため、必要に迫られて仕事を探し始めたが、世間の風は冷たかったそうだ。
「私は高校を中退してフリーターのまま結婚したため、履歴書に書けるような職歴は一切なく、仕事のブランクも10年以上ありました。
車の免許も持っていないため、履歴書の資格欄に書けることも1つもない。
正社員の仕事を探しましたが、面接にさえたどり着けないことがほとんどでした」
そのため、スーパーのレジ打ち、ビル清掃、工場での組み立てと梱包など、短期のアルバイトを続けたルカさん。
ある時、「介護施設の調理補助」というアルバイトの仕事を見つけて面接を受けたところ、思わぬ提案を受けたという。
手厚いサポートのある介護施設で、念願の正社員に!
「私が応募したのは、『食事をお皿に盛って、施設の利用者さんに提供する』という仕事内容だったのですが、面接官の方と話していて、『本当は正社員の仕事を探している』と漏らしたところ、『ウチでチャレンジしてみない?』と言われたのです。
私は、介護の仕事をするためには資格が必要だと思っていましたし、資格を取るために勉強する時間もお金もないので、介護業界に入ることはまったく考えたことがありませんでした。
けれども面接官の方は、資格がなくてもできる仕事があること、資格を取得するためのサポート体制も整っていること、さらに資格を取れたらどれだけ稼げるかなどを丁寧に教えてくれたんです」
あまりの好条件に、一にも二にもなく飛びついたルカさん。
いざ介護職として入社してみると、周りのスタッフはルカさんよりもはるかに“うわて”だったという。
「スタッフの中には、『60代になって初めて働いた』という女性がいましたし、“元・ひきこもり”だという方もいました。
けれども社内研修がとてもしっかりしているので、利用者さんには満足して頂いていますし、介護の仕事が未経験だった私も介護職員初任者研修を取ることができました。
いま、ウチの会社では、夜勤に入ると夜勤手当がもらえるし、資格を取れば基本給のほかに資格手当が付きます。
私のように職歴や経験がなく働き始めたのにこれだけの給料をもらえる仕事は、なかなかないと思います」
介護職として働き始めて、働く楽しさと学ぶ楽しさに目覚めたルカさんは、現在、介護福祉士の取得を目指しているという。
「30歳をすぎて、人生で初めてマジメに勉強した」と語るルカさん。
高校時代の荒れたルカさんを知る友人は、資格取得を目指して勉強に励む彼女を見て、目を細めているそうだ。