毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「キャラ変で人気者に」という話題について紹介します。
乗り気じゃなかったヘルパーの仕事。つい無愛想に…
ホームヘルパーというのは、色々な人に会うのが仕事。
利用者の気持ちに寄り添って介護をするのは当然のことだが、自分が楽しく働くことも大切だ。
都内の訪問介護事業所でホームヘルパーとして働くナカタさんは、同僚から聞いたさりげない一言により、ホームヘルパーの仕事が飛躍的に楽しくなったという。
ナカタさんは高校卒業後に内装会社に就職。マンションや住宅などの内装を仕上げる職人として働いてきたが、数年前に会社がつぶれてしまった。
同じ仕事を続けたかったものの、なかなか良い条件の会社がなくて困っていた時に、ナカタさんの窮状を知った友人から介護の仕事を勧められ、ホームヘルパーとして働くことに。
「内装の仕事は、マンション現場が主でした。
現場では、朝礼が終わると後は基本的に1人で作業を進めていきます。
もともと口数が多いタイプではなかったので、誰とも話すことなく作業をすることができる内装の仕事は気に入っていました」
ヘルパーになった当初は仕事に乗り気ではなく、「やることさえやれば無口でも構わないだろう」と思っていたというナカタさん。
笑顔もなければ会話もないナカタさんの評判は、当然のことながら芳しくなかった。
しかしある時、同僚たちとお酒を飲んでいて、あるスタッフがふと漏らした言葉がナカタさんを変えたそうだ。
ヘルパーとしての働き方を変えたきっかけは「キャラ変」?!
「ある同僚が、
『利用者によって自分の評価が全然違う。落ち着いていると言われたこともあれば、あわてんぼうだと言われたこともある。おしゃべり好きだと言われたこともあれば、寡黙だと言われたこともある。この仕事をしていると、それが面白い』
と言ったんです。
それに比べると、私の評価はどこへ行っても同じで、『愛想がない』『無口』というものばかり。
そこで“キャラ変”してみようと思ったのです」
「キャラ変」とは、若者の間で使われる言葉で、「キャラクター変更」を略したもの。
他人から見た自分の印象や性格を、これまでとはガラッと変えてしまおうということだ。
ナカタさんは、利用者によってポジティブなキャラクターを演じたり、積極的に話しかけたり、下らない冗談を飛ばしたりと、普段の自分とは少し違うキャラクターを演じるようにしてみた。
そうすると、普段の自分とは違うキャラクターが徐々に体に染み付いてきたそうだ。
「愛想を良くすれば、当然利用者の反応は良くなります。
それが面白くて続けているうちに、ヘルパーの仕事自体が楽しくなりましたし、最初は少し無理をして演じていた“明るいキャラ”が自分のものになりました。
久しぶりに会った友人や親戚は、私が明るく、おしゃべり好きになったことに非常に驚きます。その反応を見るのもまた面白いですね」
利用者にウソをつくのは倫理的に許されないが、相手に心地よく過ごしてもらうためにキャラクターを少し偽るぐらいなら許容範囲のはず。
今では、コミュニケーションの取り方に悩んだり愚痴をこぼしたりする若手がいると、「キャラ変」を勧めているそうだ。