毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「利用者や家族の大きな誤解」という話題について紹介します。
介護スタッフは、全員「介護の資格」を持っている?
介護施設が増加し、介護現場での問題も報じられるなか「良い施設を見分ける方法」への関心はますます高まっている。しかし情報が足りないがゆえに、大きな勘違いをしてしまうこともあるようだ。今回は、介護求人ナビの記者であるYが実際に体験した話を紹介しよう。
記者Yの友人Mさんは、80代の父親が入る高齢者施設を探している最中。Yが介護に詳しいことを聞き、こう切り出した。
「いま父親が入る施設を探しててさ~。この間も1軒見学に行ったんだけど、無資格のスタッフがいる所とかもあるんだって?それ、かなり問題じゃない?」
そこで話を聞いてみると、友人Mさんは、高齢者のお世話をする介護施設のスタッフは、全員何らかの介護の資格を持っているものと思い込んでいたという。そこで記者のYは、職種や事業所によっては、資格がなくても介護現場で働くのは可能であることを説明。それゆえ介護施設のスタッフが、全員介護の資格を持っているとは限らないことを伝えた。すると友人のMさんは「う~ん、そうなんだ。勝手にそう思い込んでたわ」と、つぶやいたという。
利用者や家族の誤解をなくすには…
実際に介護現場で働いていると、こうした利用者や家族の理解不足による誤解に遭遇することも少なくないだろう。
以前このコーナーでも取り上げたが、例えば訪問ヘルパーの生活援助における「家族の食事も一緒に作って」「窓ふきをやってほしい」「銀行でお金を下ろしてきて欲しい」といった要望はよく耳にする事例。
これらはいずれも「(原則的に)ヘルパーがやっていけない行為」なので、やってあげたくてもできない。しかしそれに対し、「気が利かない」「意地が悪い」「役に立たない」と不満をぶつける利用者は少なくない。これを“とばっちり”と感じるヘルパーがいても仕方がない。
先述の友人Mさんは、「無資格のスタッフはいるはずがない」と誤解していたわけだが、介護求人ナビでは、求人情報を検索する際に「こだわり条件」として「無資格」というキーワードを用意している。例えば「東京都 無資格」で検索した場合、2800件以上の求人がヒットする(2019年4月6日現在)。
もちろん無資格のスタッフには、できること(やっていいこと)・できないこと(やってはいけないこと)があり、長く働こうとするのであれば、資格を取ったほうが良いのは間違いない。しかしそのことと、「無資格スタッフ=問題」と判断されるということは全く別の話だ。
理解不足は、関わる両者にすれ違いを生む。面と向かって利用者に不満を言われるのは、ある意味ラッキーだ。そうすれば、すれ違いに気付くことができ、説明のチャンスがある。しかし多くの人は、友人のMさんのように面と向かっては口に出さず、心の中では不満や不信を感じているかもしれない。
利用者および家族が“筋違いな”不満を持つことは多い。しかし、それは悪意から出たものではなく、無知から出たものも多いのだ。しっかり説明することで、防ぐことができる。
施設やスタッフは、利用者や家族と話すときに「この人は、介護のことをどこまで知っているだろう?」と想像することも、必要かもしれない。密なるコミュニケーションが求められているようだ。
公開日:2015/10/26
最終更新日:2019/4/6