毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「ヘルパーとて人の子」という話題について紹介します。
怒りをこらえたベテラン介護職
頭にきたり、ムカつくことを表現する、「キレる」「マジギレ」「ブチギレ」といった単語はすっかり一般的な言葉となった。ヘルパーとて人の子。仕事中に思わずキレそうになることはないのだろうか?
ベテランの訪問ヘルパーとして、都内の事業所に勤めるHさんは、利用者の前で「キレたことはない」と語る。しかし、理不尽さを感じて、怒りをこらえた経験は何度かあるそうだ。
「長年ヘルパーをやっているんですけど、過去にヘルパーをいじめるのが趣味みたいになってる利用者さんがいました。その利用者は、こちらが何かをやろうとすると、『オレが指示してないことはやるな』と言い、向こうが何かして欲しい時は、『それを察して動くのがお前の仕事だ』『言われなきゃ動けないのか』と言い放つんです。『結局どうして欲しいの?』って話しですよね?
それから、これは利用者さんに悪気は無いのかもしれませんけど、普通の声で話すと『そんなに小さい声じゃ聞こえない』と怒り、それなら、と耳元で大きな声で話すと、『そんなに大きい声でしゃべるな』と、怒る人もいました。
自分では『キレたことはない』と思っていますけど、ムッとして口調が荒くなったり、作業が雑になったりしたことはあったでしょうね…」
キレた利用者に言い返してしまった新人ヘルパー
Hさんの部下の女性ヘルパーには、こんな人がいたそうだ。
「その新人の女性ヘルパーは、冷蔵庫の中の賞味期限切れの食材をよかれと思って捨てたところ、利用者さんに激しく怒られちゃったんですよね。で、かなり強い言葉で言い返したみたいで……。すぐにサ責(サービス提供責任者)やケアマネに連絡を取ってお詫びに伺い、なんとか和解できたんですが…。介護サービスは継続したものの、結局、その女性ヘルパーは、『向いていない』と言って自分から辞めてしまいましたね」
一般の社会にも、学校に理不尽な要求をするモンスターペアレントや、医療機関に理不尽な要求をするモンスターペイシェントがいる。利用者の生活に密に関わる介護の仕事も、理不尽な要求やワガママを受けることが少なくないかもしれない。
介護が必要な人の場合は、寂しさを感じていたり、病気や衰え、生活への不安も多い。ついそばにいる介護職につらく当たってしまうケースもあるだろう。また認知症が進むと、症状のひとつとして暴言などが出ることもある。
介護職だから、利用者のどんな理不尽な要求にも耐えなければいけないということはない。しかし介護の仕事をするならば、感情をコントロールする能力は、ある程度必要になりそうだ。
公開日:2016/2/8
最終更新日:2019/4/11