毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「仕事は忙しい人に頼むもの?」という話題について紹介します。
介護職みんなが同意!?仕事を頼みたい人・頼みたくない人
チームで仕事をする場合、メンバー全員の仕事量が偏らないよう、管理職の人間が配慮するのは当たり前のこと。だが実際には、誰からも文句が出ないような体制を作るのはとても難しい。
ある介護施設でも、仕事量の偏りを巡ってスタッフの不満が高まる騒動が発生したという。
問題の介護施設は、居室が30部屋の介護付き有料老人ホーム。
都内の高級住宅地に建ち、月々の使用料が30万円近くにのぼるハイグレードな施設だが、内部では低レベルなトラブルが発生し、ガタガタの状態になってしまったそうだ。
施設のベテランスタッフのアイダさんが語る。
「ことの発端は、ある介護職の女性が、飲み会で『仕事を頼むなら忙しい人に頼むべき』という話をしたことです。その女性が、『忙しい人に頼み事をすると、忘れないようにすぐやるし、時間がないからさっさとやってくれるでしょ。ヒマそうな人は、まず仕事を頼むとイヤそうな顔をするし、タラタラやるからダメなのよ』と熱弁。
それを聞いた他のスタッフも『そうだそうだ』と同意し、その話題が盛り上がってしまったんです。
それ以来、一部のスタッフに仕事が集中するようになってしまいました」
介護に携わる者として意識が低すぎると言えばそれまでだが、どんな職場でもものすごくマジメな人とそうでない人、何となく仕事を頼みやすい人と頼みにくい人はいるものだ。
マジメな介護スタッフに仕事を振っていった結果、ついに…
ところが、アイダさんが働く有料老人ホームで、「忙しそうでマジメなスタッフに仕事を頼む」という雰囲気ができて数ヶ月のこと。
アイダさんの施設では、仕事を頼まれ続けたマジメなスタッフが、仕事量の偏りに激怒して、ついに退職。
施設長もこの問題に真剣に取り組まざるを得ない状況になってしまった。
そのときの様子をアイダさんが語る。
「ウチの施設ではこれまで、良い意味でも悪い意味でも“チーム”を重視しすぎてきました。
1人分の仕事量を定量化せず、『みんなで頑張って終わらせようね』という感覚で、その場その場を乗り切ってきたのです。
しかし今回の一件で、それではいけないということになり、1つ1つの仕事量をきちんと数値化して、各自に割り振ることにしたのです」
これによって騒動は沈静化し、スタッフ間のギスギスした雰囲気はようやくなくなったのだそう。
ただし施設長は、騒動以降『仕事量の平準化』という単語がすっかり口癖になっており、陰ではもっぱら“ヘージュン”というあだ名で呼ばれているそうだ。