毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「テレビ番組の介護特集。それを見た視聴者は?」という話題について紹介します。
介護報酬の引き下げ、介護職不足…「介護業界の現状」に、一般市民は衝撃?
安倍晋三首相が2015年9月に発表した「新3本の矢」に、「介護離職ゼロ」という項目が含まれていた。介護問題が改めてクローズアップされ、テレビでは介護を特集する番組が相次いで放送されている。2015年12月12日には、『NHKスペシャル』が「私たちのこれから #介護危機 あなたの老後を守るには」というテーマで介護問題をピックアップ。番組を見た視聴者からネットに寄せられた書き込みを見ると、介護問題に関する認識が透けて見える。
この番組は、「バブル崩壊後、およそ20年にわたり経済低迷が続いた、いわゆる“失われた20年”を経た日本社会が、20年後、どうなっているのか?」を問うシリーズの第3回。年金や医療費などを問う「老後危機」、非正規雇用や貧富の差の拡大を検証する「雇用激変」などに続く第3回のテーマとして取り上げられたのが、今回の「介護危機」だ。
現在の介護業界が抱えている問題や、来るべき未来の介護業界の見通しなどが様々な形で提示された。
番組内容は、介護がおかれている状況を丁寧に説明するものだった。介護保険制度の説明と自己負担額の引き上げ、介護報酬の引き下げ、介護業界の人手不足とそれに対する取り組み(地元住民やボランティア)などを紹介。スタジオでは介護業界で働く人、介護問題の専門家、芸能人、一般視聴者が議論を繰り広げた。
当日に紹介された内容は、介護業界で働く人間にとっては「当たり前」「常識」の範囲内だったが、一般市民にとっては衝撃だったようだ。番組では、「#介護危機」というツイッターのハッシュタグ(「お題」のようなもの)を作って、番組内容に関する意見や議論を募ったが、そこに寄せられたコメントには、以下のようにシビアな書き込みが続出した。
「長生きしても、いいことない」
「介護危機以前に、日本はもうすでにダメ」
また、介護職の人手不足に関する議論に対しては、
「やりがいと楽しさだけでは、介護士の人手不足は解消されないのでは…」
「人が足りないから、余計に仕事がしんどくなる。…負のスパイラル」
「介護報酬を下げちゃダメ。工夫して、むしろ上げなきゃ」
「介護の仕事に携わる人に、軽減税率を適応すればいい?」
といった意見が寄せられ、わずか1時間の放送時間で、書き込み数は2000件以上に達した。
悪いことばかりじゃない、介護の「良いニュース」をもっと取り上げるべき?
番組は、多くの介護関係者も見たようだが、その反応は様々だ。ツイッターなどでは、
「介護の仕事は楽しいけれど、本当に忙しいし大変。待遇を改善するべき」
「キツくて、体がダメになりそう。給料が上がらないなら辞めたい」
「消費税を上げる前に、介護現場で働く人の給料をあげてほしい」
「介護士の離職率の原因を明らかにするために、もっと現場の声を聞くべき」
など、問題点を訴える番組内容に賛同し、不満や改善を訴える声が多い。
その一方で、
「介護のイメージが悪くなるニュースばかり報道し過ぎ。良いニュースも伝えないと、誰も介護職に就かないのでは」
「介護の仕事は、きついけど辞めようと思わないな。確かに嫌なこともあるけど、楽しくはあるな」
「介護の仕事は楽しい。もっとそこら辺の理解を深めたい」
「介護は大変ってイメージが強いけど、仕事なんだから大変なのは仕方ない。それよりやりがいのある仕事だということを、若い人に気づいて欲しい」
と、不安ばかりクローズアップされがちな現状を指摘する意見も少なくない。
介護に対する国民の関心度の高くなっている今こそ、介護業界の現在と未来についても、多くの人が語り、考える機会が増えていってほしい。
公開日:2016/1/4
最終更新日:2019/4/9