毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「働く理由はお金じゃないのに、リッチな介護スタッフ」という話題について紹介します。
お金は二の次で働いている介護スタッフがいる?!
多くの人にとって、働くことの第一の目的は「お金を稼ぐこと」。
しかし、世の中には「お金は二の次」で働いている人もいるようだ。
ある介護付き有料老人ホームには、給与など二の次で働くスタッフが何人もいるという。
「あんな理由で働いているなんて信じられませんでした」──そう語るのは、上述した介護付き有料老人ホームで働くアキノさん。
彼女が働く介護付き有料老人ホームは、都内の高級住宅街に建つハイグレードな施設。入居金や月々の費用は庶民に手が届くレベルではなく、入居者には一流企業で役員を務めていたような人や医師、その家族などが多い。
同じ介護職なのに、生活レベルが違いすぎるスタッフ
アキノさん自身は純粋に家計を助けるために働いているが、周りのスタッフと仲良くなるうちに、生活レベルに関する話が噛み合わないスタッフが何人も在籍していることが分かってきたという。
アキノさんがいう。
「私はこの施設で働き始めてまだ1年ほどしか経っていませんが、一部の女性スタッフが、『家族で海外旅行に行ってきた』『別荘に行ってきた』など、どう考えてもお金持ちだとしか思えないような話をするのです。
最初は冗談を行っているのかと思いましたが、お土産などもくれますし、持っているカバンなども高級なブランドのものばかり。
『どうやって買ったんですか?』とは聞けませんし、私と同じようなお給料のはずなのにどうやってやりくりしているのか、ずっと不思議に思っていました」
介護施設で働く介護職がリッチな生活を送っていても何ら問題はないが、同じ職場に生活レベルがまったく違う人がいれば、気になるのは当たり前だ。
リッチな生活を送る介護職のヒミツ
同僚の介護スタッフが海外旅行に行ったりブランドのバッグを持ったりしていることを不思議に感じていたアキノさんだが、ある時、飲み会の席で別のスタッフから真相を聞かされたそうだ。
「リッチなスタッフはみな、近所の豪邸の住民だったんです。お金のために働く必要などないのですが、『家にいたくないから働いている』のだとか。
彼女たちはいずれも子育ては終わっていて、自宅でのんびり暮らしていればいいものの、お姑さんや息子の嫁などと折り合いが悪くて居心地が悪いので、日中だけでも外に出るためにウチで働いているという話を聞いてしまいました」
生活のためにあくせく働いている人からすれば、うらやましいことこの上ない話。
しかし、「外に出ていたい」という理由で働く彼女たちは、介護職としてとても有能だという。
入居者の無理難題も、なんのその!
「入居者さんの中には、無理難題を言ってスタッフを困らせる人もいます。私などは、それをやんわり断ったり、やりすごしたりするのに一苦労。
ですが、リッチなスタッフたちは、無理難題を言う入居者さんには平気で『そんなことはできません』『そういうことを言うと、出ていってもらうことになりますよ』などと言っています。万が一、仕事がなくなっても、路頭に迷う心配がないから思い切りがいいのでしょうか。
けれども、私がそんなことを言ったらきっと大問題になるのに、彼女たちが言うと、不思議なことに入居者さんはおとなしくなるんですよね。彼女たちがいなければ、間違いなくこの施設は回りません」
富裕層トークができるのも「適材適所」?!
また、彼女たちには、アキノさんが逆立ちしても敵わないスキルがあるという。
「私みたいな庶民は、入居者さんに美味しい高級料理のお店や高級ブランドの話をされてもお手上げですが、彼女たちは生活レベルが近いのか、よく“富裕層トーク”で盛り上がっています。そういった点はどうやっても敵わないですね」
これを“適材適所”と呼ぶべきなのかは分からないが、施設運営に欠かせない存在であることは確かなよう。
いささか特殊な例ではあるが、「家にいたくない」という理由で働き始めた人でもきちんと活躍できるのは、介護業界の懐の深さを表す1つの実証例と言えそうだ。
公開日:2019/3/11
最終更新日:2019/5/28