毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「夜間開催の転職フェアで運命の出会い」という話題について紹介します。
転職活動の悩みは「時間のやりくり」
就職活動にせよ転職活動にせよ、悩みの種は時間のやりくり。
転職活動の場合、仕事を続けながら準備を進める人も多く、面接のために会社を休むのが面倒で、転職を躊躇(ちゅうちょ)している人も少なくないだろう。
都内の介護事業所でホームヘルパーとして働くキムラさんも、そんな悩みを抱えていた一人だ。
ブラックなアパレル会社で働いていたが…
キムラさんは現在30代のシングルマザーで、前職はアパレル。昨今、子育てに理解を示す企業が増えるなか、キムラさんが勤めていた会社は、俗に言う“ブラック企業”だった。キムラさんがいう。
「私が働いていたのはアパレルの大手企業でしたが、サービス残業は当たり前。お店ではその会社のブランド服の着用が義務付けられており、その購入費は自腹。急に熱が出て突然休むことがあれば、次の出勤時に上司に嫌味を言われるようなひどい労働環境でした」
本来なら訴えても良いような話だが、貯金はほぼゼロで、辞めても次の仕事のアテはなく、忙しすぎて転職活動もできないという悪循環に陥っていたキムラさん。
転職をあきらめかけていたキムラさんに希望の光が
働きながら転職先探しをするのをあきらめかけていた頃に見つけたのが、夜遅くまで開催される転職フェアだった。
「一度に色々な業界や企業の様子がわかる転職フェアにずっと行きたかったのですが、転職フェアはお昼の時間帯に開催されることが多く、仕事の都合で足を運ぶことができませんでした。
そんな時、仕事場の近くで、21時まで入場できる転職フェアが開催されることを知りました。『転職フェアって何でお昼にやるの?』と思っていた頃だったので、『ようやく転職フェアに行ける!』と、ワクワクしたのを覚えています」
初めて知った介護の世界へ、転職活動スタート!
会場に入ると、そこは介護や福祉関係の会社が集まる転職フェア。
それまで介護についてまったく知識のなかったキムラさんだが、ブースで話を聞くうちに、興味が沸いてきたという。
「私はその時まで、介護業界にはまったく興味がありませんでした。『お年寄りのお世話なんて私にはムリ』という偏見もありましたし、給料が安いものだと思い込んでいたんです。
しかし、話を聞くと、シフトが自分で決められる仕事や、時給が今の仕事よりだいぶ高い仕事、未経験でもOKな仕事もありました。
何より、介護について語ってくれたブースのスタッフの方々がとても生き生きして見えたんです。
しかも、会場では無料で証明写真の撮影をしてくれ、履歴書や職務経歴書の書き方を教えてくれるコーナーまであって、その日のうちに転職活動を進めちゃいました」
転職フェアの中には、そのようなサービスが行われているものは珍しくないが、キムラさんはこのサービスをフル活用したという。
転職フェアがきっかけだった介護職の定着率が高いワケ
その後、介護業界について丁寧に教えてくれた事業所にトントン拍子で転職し、今では介護職員初任者研修も受講して、ホームヘルパーとして活躍しているキムラさん。
入社後には、ブースで介護について説明してもらったスタッフと仲良くなったが、その女性はこう語っていたそうだ。
「夜に開催される転職フェアなら、普段とは違うタイプの人が来ると思って、チャンスだと思ったの。
こんな夜遅くに転職フェアに来る人は、それだけ転職に対して本気だろうし、説明すれば介護の仕事の良いところはわかってもらえる自信があったから」
実際、夜間の転職フェア経由で入職した介護スタッフは、定着率が非常に高いのだとか。キムラさんが勤める介護事業所では、その後もブースを出し続けており、キムラさんも近々“ブースの中の人”としてデビューする予定になっているそうだ。
転職フェアというと、確かに「お昼」というイメージは強いが、キムラさんのように「お昼は仕事で行けない」という人は多いはず。しかし数は少ないものの、夜まで開催されるものもあるので、あきらめずに探してみるのもよさそうだ。