毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「翻訳業界からなぜ介護業界へ」という話題について紹介します。
英語のスキルを武器に、翻訳会社へ就職
かつて日本経済が右肩上がりの成長を続けていた頃は、「年功序列」や「終身雇用」というシステムが機能していたが、今や転職をしたことがない若い世代を探す方が難しい時代。介護業界にも、異業種からの参入組は少なくない。
現在、介護施設で介護職として働くタケシさん(43才)は、“元・翻訳者”という異例の経歴の持ち主。タケシさんはなぜ介護職になったのか。
もともと開業医の父親のもとで生まれ育ち、幼い頃から医者になることを期待されて育てられてきたタケシさん。
しかし、中高一貫の進学校に進んだものの、成績は今ひとつふるわず、そもそも「『医者になりたい』という気持ちがまったく湧いてこなかった」という。
結局2年間浪人した後、地方にある国立大学の文系の学部に合格。さらには海外への留学も経験。
英語のスキルを身に付けたタケシさんは、帰国後に翻訳会社に入社し、「普通の人よりは詳しいでしょ」という乱暴な理由で、主に医療関係の翻訳を請け負っていたという。
しかしそんなタケシさんのもとに、テクノロジーの進化が襲いかかることになる。
翻訳者から介護職へと転職
タケシさんが語る。
「私が翻訳業界に入った2000年頃には、すでに世の中に『機械翻訳』というものはありましたが、ここ数年『無料の翻訳サイト』が猛烈に進歩しました。
そのため、これまで私の会社に仕事を発注していたクライアントが、一旦、翻訳サイトにかけた後、分からない所だけ発注するようになったんです。これで仕事が激減しました。
近年、『○○年後になくなる仕事』というネタが話題になりますが、翻訳業界では『文芸作品以外、人間の翻訳が出る幕はなくなる』と言われています」
そこで一念発起して、介護の世界に転職を考えたタケシさん。しかし「英語」というスキルを持つ彼が、なぜ介護業界を目指したのか?
「実は以前、翻訳の仕事で付き合いのあった介護業界の人から、『ウチの業界には英語ができる人がまったくいない』という話しを聞いたことがあったんです。
その時は、『使う機会がないなら、必要ないよな』と思っていたんですけど、たまたまネットのニュースを見ていたら、介護業界は人手が足りないので、海外から働き手を募るっていうじゃないですか?
正直、今や世の中には『英語が話せます』なんていう日本人はそこらじゅうにゴロゴロいますが、どうやら“介護業界には、英語ができる人材がいないらしい”、しかも“これから外国人が入ってくるので、英語ができるなら重宝されるはず”ということで、介護業界を選びました。
それに、おばあちゃん子だったこともあり、そもそもお年寄りが好きだったんです」
介護職に転職してから、いまのところは英語の出番がないというが、仕事はやりがいがあり満足しているという。
また、親から期待された医者にならなかったことで、長らく実家とは疎遠になっていたそうだが、高齢者が増え続けている現在、最近では父親から「ウチの病院の横に介護施設を作るから、お前が経営しろ」と、はっぱをかけられているそうだ。
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公開日:2017/4/17
最終更新日:2019/10/15