毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「業務中のマスクはあり?なし?」という話題を紹介します。
冬になると増える「マスク姿」
冬が近付くにつれて一気に増えるのが、マスクをつけている人の姿。近年ではおしゃれの一環としてマスクをつける人もいるという。
多くの高齢者と接する介護業界でも、感染予防など衛生面を考えてマスクが必需品である施設や職場もある。
風邪じゃなくてもマスクがしたい!その理由は…
マスクの季節が楽しみだというのは、都内の介護付き有料老人ホームで働く女性・ゴトウさんだ。
「私はあがり症で、初対面の人と接する時には緊張してなかなか話ができません。
マスクで半分顔が隠れていると緊張が和らぐので、できればずっとマスクをしていたいくらいです。
けれども入居しているお年寄りの中には、マスクをしていることを『表情がわからない』と不愉快に思う方や、『声が聞き取りにくい』とおっしゃる方もいるので、業務中につけっぱなしにするのはやめるようにしています」
マスク反対派は「感染予防でもマスクそのものがイヤ」
できれば一年中マスクをつけたいという人がいれば、マスクが大嫌いだという人もいる。
ゴトウさんと同じ施設で働くヒラノさんは、“マスク大嫌い派”だ。
「私が働く施設では、面会者にはマスク着用をお願いしていて、インフルエンザが流行する時期になると、職員もマスクをつけるようにお達しが出ます。
職員のマスク着用は一応“推奨”ということにはなっていますが、ほぼ全員つけています。
ですが、私はマスクがどうしても苦手で……。
マスクをつけると息苦しいような感覚になりますし、10分もつけていると、耳の後ろが痛くて仕方ないんです。
我慢してつけていますが、マスクの季節になると憂鬱です」
マスクをすると耳のゴムは確かに痛くなるが、ゴムがゆるいとマスクの諸々の効果が薄れてしまう。マスクが苦手な人にとっては、なかなか難しいところだ。
『ヘルパーがマスクをしていた』とクレーム?
都内のある訪問介護事業所では、つい最近、マスクが原因で思わぬ問題になったそうだ。事業所でサービス提供責任者として働くハセガワさんがこう語る。
「先日、ある利用者の方から、『ヘルパーがマスクをしている』というクレームが入りました。
クレームの意味が今ひとつ分からないので、担当のヘルパーに確認すると、本人も『マスクをしていただけ』と言うばかりです」
クレームの原因は流行りの“あのマスク”
マスクをしていたことがどうしてクレームになるのか、おかしいと思ったハセガワさん。
利用者のお宅へ行って確認すると、その思わぬ理由が分かったという。
「マスク姿にクレームが入ったそのヘルパーは、最近流行りの黒いマスクをしていたんです。
ヘルパー本人は、『何が悪いのかさっぱり分からない』といった様子でしたが、人と接する仕事で黒いマスクは印象が良くないですよね」
確かに、黒いマスクの何がダメなのか、理由を聞かれれば返答に詰まるが、人と接する仕事であるヘルパーとしてふさわしくないのは間違いない。
ハセガワさんの事業所でも、「どうして黒だとダメなんだろうね」「でもいい印象はしないよね」という会話が交わされたそうだが、訪問時のマニュアルには近々「マスク(白以外は不可)」という一文が付け加えられるのだそう。
自分のおしゃれや好みに気を使うのも結構だが、介護職やヘルパーは、「相手がどう思うか」という視点を常に失ってはいけないようだ。