毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。今週は、「アミューズメント型デイサービスの是非」という話題について紹介します。
神戸市がアミューズメント型デイサービスを規制へ
兵庫県神戸市が2015年8月11日、パチンコや麻雀などの遊技を主な介護サービスとする「アミューズメント型デイサービス」について、これを介護事業所に指定しないようにできる条例改正案を提案することを発表。これが波紋を呼んでいる。(*1)
アミューズメント型デイサービスとは、パチンコや麻雀、ルーレット、トランプ、カードゲームといった娯楽を楽しむことで、介護予防を図るデイサービスのこと。
神戸市はホームページで、こういったデイサービスについて、以下の内容を発信している。(一部抜粋)
<介護保険制度は、利用する高齢者が「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう必要な保険医療サービスおよび福祉サービスに係る給付を行う」と規定しています。
…アミューズメント型デイサービスとは、ルーレットやトランプのような娯楽性のある設備を使って介護予防を図る通所介護(デイサービス)です。サービスの提供方法も様々であり、一日の内時間を決めてゲーム等を楽しむ通所介護(デイサービス)や、一方、終日ゲーム等を楽しむ通所介護(デイサービス)もあります。
…とりわけ機能訓練室内にパチンコ、麻雀、カードゲーム等に特化した設備を備え遊技場の様な雰囲気の中で、遊技を機能訓練の常時主体とする通所介護(デイサービス)は、介護保険法に基づく本来の趣旨にそった適正なサービスとは考えられず、アミューズメント型デイサービスの適切な運営を図る必要があると考えています。>
また、規制が必要と考える理由として「遊技を常時主体とした機能訓練の不適切」、「疑似通貨等の使用が、射幸心、依存性を著しく高めるおそれ」、「賭博又は風俗営業等を連想させる広告の危険性」の3点を指摘し、条例改正の必要性を唱えている。
ネットで賛否両論。あなたはどう思う?
この条例改正案は、ネットでも大きな話題となっている。Yahoo!は、8月12日から22日までの期間でこの件に関するアンケートを行ない、2万2181人が回答(*2)。その結果、「規制すべき」が50.6%(1万1231票)、「規制すべきでない」が49.4%(10950票)と、意見は完全に二分した。コメント欄を見ると、規制派からは、
「パチンコや麻雀をするのが悪いとは思わないけど、介護とは違う気がする」
「人生に娯楽は必要ですが、ギャンブルを介護の名で提供するのは違うのでは?」
「脳の刺激になるよう、選択肢を考えて欲しい。パチンコは脳の刺激になりません」
「介護保険制度を利用するなら、規制されて当然。介護保険制度を利用しないならば、自由」
といったコメントが寄せられる一方、規制反対派からは、
「全てダメではなく、範囲を限定した賭け事も悪くは無いと考えます」
「パチンコもマージャンも頭を使うので認知症予防や認知症の進み具合も遅くなるのでは?規制には反対です」
などの意見が登場。また、
「介護した事がないとわからないだろうが、施設にいても家にいてもやることがない人が多い。なんでもいいから『目的』を作ってあげるだけで人間はイキイキする」
「介護される本人たちに聞いてみたら?介護する側の意見だけで判断するのはフェアじゃない」
などの声も。
現在は「要介護3」の認定を受け、都内の介護施設に入居している70代の男性・Yさんは、かつて訪問介護を利用していた際、介護保険で雀荘に行けないかと打診して断られた経験を振り返る。
「誰だって好きで介護を受けているわけじゃない。それなのに麻雀もダメ、パチンコもダメ、あれもこれもダメで、結局テレビを見るしかやることがない。『年を取ったら楽しんじゃいけない』『介護を受ける人間は、介護を受けられるだけで幸せ』みたいな扱いをされるのは不愉快極まりない」
介護を受ける側には、心の底にこのような不満が大なり小なりあるようだ。
今回、神戸市が規制する背景にはさまざまな理由があると思われ、一刀両断に良い・悪いということはできない。ただ、介護業界は人手不足や財源不足、高齢化率の急上昇など、問題が山積。今後も注目されることは間違いなく、時には風あたりが強くなることもありそうだ。
しかし少なくとも、介護現場の人間としては、被介護者の「QOL(Quality of Life=生活の質」を高めることは、常に意識していきたいものだ。
*1 介護保険事業のアミューズメント型デイサービスの規制(神戸市)
*2「娯楽型」介護施設の規制、あなたはどう思う?「Yahoo!ニュース 意識調査」