毎回、介護にまつわる問題点やちょっと困った介護スタッフの珍行動、介護現場での珍事件などを紹介するこのコーナー。
今週は、「情報開示で透明性を確保」という話題を紹介します。
時間外労働が100時間以上になった月も
大手広告代理店の新入社員が過労自殺したことにより、再び脚光を浴びたのが長時間労働の問題。
“ブラック企業”という単語が一般に広まり、過重労働撲滅が盛んに叫ばれても、一部の企業では一向に改善されていないことが今回の事件で明るみになったが、介護業界は長時間労働とどう向き合ってきたのか?
東京の多摩地区の介護施設に勤める30代の女性・Kさんが、勤務先の取り組みについて語る。
「私は20代後半で介護業界に入り、初めて勤めたのが今の施設なんですが、いま思えば、かつては労働基準法違反が横行していました。
月に2日しか休みがなかったり、時間外労働が100時間以上になったり、夜勤が月に10回以上あったり……。
当時は知識がなかったので、『介護業界ってそんなものかな』と思っていたんですけど、完全に“アウト”ですよね(苦笑)」
「何で辞めなかったんですか?」という問いに、「残業手当で給料が多かったので……」と答えたKさん。
施設は労働基準監督署に「思いっきりマークされた」ものの、「なぜか是正勧告は免れた」そう。
その後、労使間で話し合いの場がもたれ、状況は改善されたそうだ。
入口の掲示板に全職員のシフト表を張ることに
「まずは人員の補充を求めました。
そして、施設の状況を外部の人間が把握できるようにするため、施設内の情報を何でも公開するようにしたんです」
“情報を何でも公開する”ために、施設では思い切った処置が講じられたという。
施設の入口に掲示板を設置し、全職員のシフト表を掲示するようにしたのだ。
これにより、夜勤の後にそのまま日勤に入ったり、休みが取れずに連続出勤したりといった“働いてはいけないはずのスタッフが働いている状況”が生じないよう、誰でもひと目で確認できるようにしたのだ。
「シフトを掲示するにあたっては、一部の職員から『なぜ他人に自分の勤務状況を知られなければいけないのか』『個人情報の漏洩ではないか』『しょせん労基署向けのアピールにすぎない』といった反発の声もあがりました。
けれども、『労基署ににらまれるような状況はおかしい』という声が勝って、ずっとシフトを掲示しています」
こういった処置が取られて以来、以前のような酷い長時間労働は大幅に減ったのだとか。
どんな組織にも言えることだが、適切に運営していくためには、透明性は必須のもののようだ。