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2019年01月01日

ロボット・コミュニケーター 吉藤健太朗さん 2 ~介護業界・注目の人 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

「情熱かいごびと」の第2回目では、吉藤オリィさんに大学入学から、OriHimeが誕生するまでのいきさつを語ってもらいました。OriHimeは、人と人とをつなぐデバイスの役目を果たして孤独を解決するロボット。開発するに至る、ユニークな取り組みの数々に、吉藤さんらしさがにじみ出ています。




2-1

○●○ プロフィール ○●○



吉藤オリィ(本名 吉藤健太朗)さん

株式会社オリィ研究所 代表取締役所長。
小学校5年~中学2年まで不登校。中学のときにロボット技術に感動し、工業高校へ進学。在学中に電動車椅子の開発に携わり、2005年にアメリカで開催されたインテル国際学生科学技術フェア(ISEC)にて団体研究部門GrandAward3位を受賞。福祉機器ロボットの道を志す。工業高等専門学校で人工知能を学んだのち、早稲田大学創造理工学部へ進学。入院や療養中の人を癒すロボットの研究開発、講演活動などを行う。2011年からは早稲田大学インキュベーションに入居、制作したロボットやサービスを必要としている人に届ける活動を開始し、自らの研究所も設立。

*掲載内容は取材時(2014年)の情報となります。

ロボット製作の前に、まずはコミュニケーション力を養う



2014年3月、マーチエキュート神田万世橋に設置されたOriHime体験コーナー。
2014年3月、マーチエキュート神田万世橋に設置されたOriHime体験コーナー。

――早稲田大学に入学してからのご自分なりの目標は、何だったのですか?

まずは、コミュニケーション能力の習得です。小学校5年から中学2年まで不登校でしたし、人と仲良くなるのをあきらめていた感じでしたから。工業高校のときもあまり友達はできませんでした。高専にいた頃も、ほぼゼロです。しかし、それでは、私の目指す「人と人とをつなぐロボット」は作れないと感じていました。

早稲田大学には、5万人の学生と3000を超えるサークルがあります。サークルに入れば、社交性を磨けると思い、片っ端から調べた結果、社交性を磨くのだから、社交ダンス部がいいのではないかと入部しました。けれど、それは間違いでした、当然ですね(笑)。

サークルっていうのは、男女が出会う場なのだ、という考え方のところも多く、多くは会費の高い飲み会を繰り返し、オールだなんだ、やっているわけです。最初は、「これがコミュニケーションならしかたがない」と我慢していましたが、こんなことをやっていても、自分が考えるコミュニケーション力は学べないと思い、半年で退部しました(笑)。

そして、冬休みや春休みなど、長い休暇に帰省するときにはヒッチハイクをするようになりました。東京から実家のある奈良まで9時間。その間、乗せてくれているドライバーさんを楽しませるのですよ。これこそ、コミュニケーション力の習得だ、と。

――ドライバーさんを、どうやって楽しませるのですか?

はじめは、ニュースなどで時事ネタを仕入れて、おもしろい話をたくさんして飽きさせないようにしようと考えました。けれど、それは失敗。うるさがられてしまいました。

人と仲良くするためには、エンタテイナーになる必要はないんですね。それより、「人の話を聴く力」が大事だと。運転手さんの人生観を聴いて、趣味の話を聴いて、話のポイントをつかんで、その方がほめてほしそうなところでオウム返しをする。「え、ホームランすか! すごい」と(笑)。そうやって、少しずつコミュニケーション力を養いました。

そして次は人脈づくりといいますか、私と同じように科学に自分の夢を賭けている仲間と集うために、私が参加して賞をいただいた高校生科学技術チャレンジ(JSEC)に出場した人たちに声をかけて、同窓会を立ち上げました。その仲間とはいい付き合いが続いていて、自分の研究所である㈱オリィ研究所を発展させるときに、この同窓会の仲間が何人も加わってくれています。

また、教員だった父親が、奈良県の野外活動センターに転職したのですが、その野外センターで学ぶ子どもたちの世話役としてバイトをさせてもらい、子どもたちとのコミュニケーションの場も持ちました。

こうして、大学時代にたくさんの人たちとコミュニケーションをしたことが、のちのちの財産になりましたね。


論文を書くより、実際の開発がしたくて、研究所を設立



――では、大学生活や大学での研究はとても充実していたのですね。

いや、大学での研究活動というものには、少し疑問を持っていました。

大学での研究活動は、論文を書くことが中心ですよね。教授にも、「学生なのだから、まず物理や数学の基礎力を学べ、そして論文を書く力を養え。いい成績をとることに集中しなさい」と言われる。それはそうなんだけど、いま自分のやりたいこととは、ちょっと違うな、と思ってしまうのです。

工業高校のときは、久保田先生を師匠とし、朝から晩まで開発のために体や頭を動かした。実際に作ったもので、世の中の役に立つこともできる。あの存在のあり方こそが、自分が考える研究だと思うのですが、大学だと、物づくり中心にはなかなかできない。後に工房を作ってもらうことになるのですが、そこまで待てなくて、「自分で物づくりの研究所を作ってしまおう」と、オリィ研究所を立ち上げました。
研究所といっても、自室の6畳に、バイトで得たお金や、父親からの借金で必要な機器を買い揃えて並べただけですが、ここを根城に、「家族や友人とつながれるコミュニケーション・デバイスとしてのロボット」づくりに、ひたすら励みました。
ちなみにオリィという私と研究所の名前は、「折り紙」からきています。趣味が講じて創作折り紙を始め、あちこちで教えたり講演をしたりするようになり、大学で「オリガミ王子」などと呼ばれていたことに由来しています。

他学部のビジネスや美術の講義を受けたり、パントマイムのサークルで人の動きを研究してロボットに生かしたりと、またもや自分の好きなことだけをやる生活になりました。

そうして、2年間、だれにも何も言わずにロボットの開発を続け、2011年にOriHimeを発表しました。

OriHimeの説明をしながら、手元も見ずに折り紙でバラを作成。
OriHimeの説明をしながら、手元も見ずに折り紙でバラを作成。

名付けて「吉藤ローズ」。中心には棒付きキャンディが隠れているという遊び心も。
名付けて「吉藤ローズ」。中心には棒付きキャンディが隠れているという遊び心も。























早稲田大学として参加した国際ロボット展での1コマ。
早稲田大学として参加した国際ロボット展での1コマ。

――発表後は、たちまち注目されるようになりましたよね。

科学の世界でも注目されましたし、大学でも「おもしろいことをやっているね」と認められ、早稲田発のロボットということで、2011年の国際ロボット展にも出品しました。
この時期から、大学との連携が生まれ、一緒に研究をする仲間にも恵まれました。そして、実際に病院などで試験利用もしていただけるようになり、本当の意味で医療や福祉に役に立つためのスタートラインに立ったのです。

第3回に続きます。






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