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2019年01月08日

NPO法人Dカフェnet代表理事 竹内弘道さん 1 ~介護業界・注目の人 | 「介護求人ナビ 介護転職お役立ち情報」

介護・福祉の世界で、情熱を持ってキラキラと輝いて生きている人をご紹介する「情熱かいごびと」。
今回からは、自ら認知症のお母様を介護した経験から、認知症の会と認知症カフェを開催する竹内弘道さんです。竹内さんのお話をうかがっていると、認知症の方にどう接したらいいのか、よくわかります。



○●○ プロフィール ○●○

prof竹内弘道(たけうち・ひろみち)さん

1944年生まれ。ふたり暮らしの母親が認知症になり、12年間自宅で介護、97歳の母親を見送る。介護の最中に出会った「目黒認知症家族会たけのこ」の世話人となる。また、東京都目黒区の自宅の2階を地域に開放し、月に2回、認知症カフェ「Dカフェ・ラミヨ」を開催。認知症専門医との勉強会など、多彩な内容で注目を集める。2014年7月からは2か所目のDカフェ、「Dカフェ・ニコス」をデイサービスの休館日利用として開催。今後もさまざまな認知症に関する活動を展開予定。

Dカフェnet公式ホームページ

*掲載内容は取材時(2014年)の情報となります。

母親の妄想を知って、これは認知症だと感じて

アルツハイマー型認知症だった竹内伊代さん。戦争や疎開を経験し、女手一つで竹内さんを育ててきたお母様でした。
アルツハイマー型認知症だった竹内伊代さん。戦争や疎開を経験し、女手一つで竹内さんを育ててきたお母様でした。

――竹内さんは、認知症になったお母様の介護を12年間続けてこられたのですよね。最初にお母様が認知症になったと感じたのは、どんなときでしたか?

母が車椅子になって、いよいよ介護、という体制になったのは、母が85歳のときでしたけれど、その前から感じてはいました。同じことを何度も繰り返して言ったり、忘れっぽくなったりね。
おや?と思ったのは、現実にありえないことを言ったときですね。僕が仕事から帰ると、「病院から明日の予約がとれたと電話があった」と言うんです。そんなはずはない、と疑いながら病院に連絡を入れると、やはり予約などない。これはふつうではないな、と思って、すぐに脳のCTを撮りに行ったんですけれど、特に問題はないと。もちろん、高齢者ですから、それなりの脳の萎縮や小さな梗塞のあとはあるけれど、異常は特に見られないということで、そのまま帰ってきました。それが、1990年、母が78歳ぐらいのときですね。

――お母様はそれまで、どんなふうに暮らしていらっしゃったんですか?

我が家はいわゆる母子家庭でした。僕が生まれてまもなく、父は第二次世界大戦で戦死したんです。必然的に母は働かねばなりません。そこで、母の姉のはからいで、日比谷公会堂などで行われる音楽会の受付や切符のもぎりの仕事を得て、以来ずっと、仕事を続けていました。
仕事をやめるきっかけは、79歳ぐらいのときかな、仕事帰りに転んで骨折してしまってね。自分でも忘れっぽさなどを自覚していたようで、骨折を期に、「もうやめないと」と。それで、家で暮らし、僕が仕事から帰るのを待つようになりました。


仕事を減らして介護に取り組んでいく

――80歳直前まで働いていらしたのですね。そんな気丈なお母様だからこそ、その後もおひとりで竹内さんの帰りを待てたのでしょうね。

はい、僕はフリーランスでマーケティングの仕事をしていましたから、多少、時間の融通がついたことも、幸いしていましたね。
そんな暮らしが続いていましたが、2000年の春、仕事から帰ると、母がペタンと畳にすわっていた。また骨折したんですね。当時、86歳でしたから、もう回復も難しく、車椅子になった。来るべきときが来たわけです。けれど、葛藤はありませんでした。年齢が年齢でしたしね。
2000年ですから、ちょうど介護保険が始まっていた年です。すぐに介護認定調査をしてもらい、要介護3となり、介護保険サービスを使うことになりました。以来、訪問介護とデイサービス、ショートステイを使って、最後まで自宅で介護をしました。


仕事場に車椅子で母親を連れて行くことも

目黒認知症家族会「たけのこ」。月に2回の集まりには毎回20~30名が参加します。
目黒認知症家族会「たけのこ」。月に2回の集まりには毎回20~30名が参加します。

――仕事をしながらの介護、大変ですね。

僕も当時、55歳でしたから、仕事をじょじょに整理して、引退に向かっていこうと考えました。
とはいえ、すぐにやめるわけにもいきませんから、仕事で外出することも多々ある。介護サービスの都合が付かないときは、車椅子にのせて、仕事場に連れて行くこともありました。母は静かに本を読んで待っていることができたので、みなさんにもよくしてもらえて。「穏やかないいお母さんですね」なんて言われていましたね。

ただ、夜は大変でしたよ。妄想が激しくてね。見えないものに説教したり、「子どもがそこにいる」と言い出したり。ふすま1枚隔てて寝ていましたので、毎夜、3回ぐらいは起こされましたね。その都度「大丈夫だよ、僕が隣にいるよ、ひとりじゃないよ」となだめましたが、それでも翌日はまた同じで。もちろん、認知症ですから、なだめても変わるものではないですからね(笑)。しょうがないですよね。

――そんな中、またお母様が亡くなられた後も、認知症そのものに興味をもたれて勉強をされ、家族会で世話人を務めるなど、認知症の人と家族との交流などに力を注がれました。それはどういうきっかけからでしょうか?

母が介護認定調査を受けてすぐ、10日ぐらい、ぶっつづけで朝から晩までの仕事をしなければならなくなり、特別養護老人ホームでのショートステイをお願いしました。そこで、本当にさまざまな認知症の方を拝見したんですよね。
うちの母は穏やかでしたが、大声を上げる方、失語状態の方もいる。ひと口で認知症といっても、同じではないのだ、ということが実体験としてわかり、また、書物からもさまざまな認知症の種類や症状があることを知って、これはもっと勉強しなければと思うようになりました。
また、我が家の担当の保健師さんが、家族会に入会することをすすめてくれました。当初はあまり気が進まなかったのですが、入会して会合に出てみると、こちらにもさまざまな認知症の方やご家族がいる。教えていただくこともたくさんあり、次第に興味が強く向かって行きました。

次回は、竹内さんの認知症支援の活動について語っていただきます。

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