利用者さん本位の介護で、新人ながらホーム全体を変えていったKさん。その手腕に驚き、嫉妬する先輩たちにも、だんだん認められてきました。そして、副リーダーとして別の事業所に異動。そこで介護職としてKさんは羽ばたいていきます。経営力も発揮して本部からも期待されるKさんの活躍ぶりを読んで、ぜひ参考にしてください。
*M・Kさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
M・Kさん(32歳)のプロフィール・転職経験
●介護業界歴…10年
●転職回数…1回
●今までの勤務先…有料老人ホーム
●現在の勤務先…自営業(ファイナンシャルプランナー)
●保有資格…介護福祉士、介護支援専門員、ファイナンシャルプランニング技能士
生活相談員としてホーム全体を見渡す
オープニングスタッフとして東京の事業所に異動になったのは、入社して2年目でした。130床の大型施設で、何もかも一からのスタート。副リーダーに任命され、緊張感と期待を胸に、職場に入りました。
しかし、リーダーのやり方に疑問を持ちました。その人はとことん「利用者さん本位」。すばらしいと思うのですが、現実的ではなくて。「週2回の洗濯を毎日にしよう」「お風呂は常に1対1対応にしよう」。それはもちろん、利用者さんにとって快適です。しかし、当初利用者さんが少なかったときには対応できても、どんどん新しい利用者さんが入居してくると、手が回りません。どれだけ頑張って働いても、仕事をやり残す。
洗濯に時間を割きたいわけではなく、丁寧に利用者さんに接したいのです。それなのに、手を動かす業務に追われ、みんな疲弊していきました。そして、洗濯の回数を多くすれば水道代がかさむ、お風呂を丁寧にし過ぎれば、水道代も電気代もかさむ。ホームのランニングコストはどんどん上がっていきました。
リーダーにやんわりと相談しても、自分のやり方を信じて突き進み、とりあってもらえません。やる気のある子たちも理想と現実とのギャップに失望し、辞めていってしまいます。また、リーダーへの不満を僕に訴える後輩が多く、僕は板挟みになって苦しみました。
2年後、リーダーは異動し、僕が現場のリーダーになりました。そこからようやく業務改善に手が付けられるようになりました。コストを考え、職員の力量に合わせた無理のない勤務を目指す。そうすることで余裕が生まれ、小さな事故や間違いも減っていきました。
以前は薬の誤飲などもあったのですが、毎日の薬の担当を決め、その人しか薬を触らないようにすることで、事故は劇的に減っていきました。こうして改善をしているうちに、ホーム長が異動。副ホーム長がホーム長の座についた半年後、僕は副ホーム長として昇進しました。
自分でも驚くほどのスピードで昇進していき、びっくりしました。会社の期待に応えられるようにと襟を正しました。実際の仕事は生活相談員で、現場の介護職からは離れました。当時は人気のあるホームで、入居したい方との面談が多く、それが主な業務。相談員は、これまでの現場とは違い、ホーム全体を見渡せたことが、自分にとって貴重な経験でした。
電球が切れた、設備が壊れた。あるいは、このユニットの利用者さんのメンバー構成のバランスが、他のユニットと比べて悪い。厨房とユニットの職員同士が対立している…など。今まで現場にいたときには見えなかったことに注目し、問題解決していくことで、経営に近い部分を学べたと思います。
ただ、相変わらず、業務の過酷さが続いていました。職員がすぐに辞めてしまうので、その穴をカバーするために、残った職員の残業時間が増えていきます。すると、職員が心身共に疲れ、燃え尽き症候群になって辞めてしまう。その悪循環が続き、当時の離職率は30%になっていました。
いきなりホーム長に。人事改革で職場の雰囲気が一新
そんな折、ホーム長が「辞職する」と言い出したのです。どこかに引き抜かれたというのがもっぱらの噂でした。しかも、辞めるまで1カ月程度しかありません。副ホーム長だった自分がホーム長に任命され、そこからが大変でした。引継ぎ、必要な資格の取得、目が回るほどでした。
高すぎる離職率をなんとかしようと、強く思っていたので、ホーム長になってからは人事の改革に手をつけました。これまでは、経験や技術のある人を上に置いていましたが、やる気のある子をリーダーにしていきました。頑張っている人がバカをみる悪循環を変えたかったのです。それには、職員を評価する基準を変えなければならない。難しい技術面などを評価基準にするのではなく、心掛けさえすれば誰でもできることを掲げました。
1. 明るく元気に挨拶する
2. 無断欠勤、無断遅刻をしない
3. 前向きな言葉を意識的に使う
この3つができていなければ、給料を下げる、できていれば給料を上げると。そうしたら、どんどん雰囲気が良くなっていきました。辞めた子も戻って来てくれて、気づいたら離職率が7%にまで下がり、本社が認定する「代表ホーム」のナンバー1に選ばれたのです。
自分は経営面でも力を発揮できるのだな、という自覚を持ちました。このままホーム長としてやっていっても、きっとうまくいくだろうという自信も持ててきました。しかし、本当に自分がやりたいことはなんだろう。その思いがどんどん強くなっていき、ホーム長というポジションへのこだわりが、いつの間にか消えていったのです。
最終回の次回は、ファイナンシャルプランナーとして独立したKさんの思いをお伝えします。
*M・Kさんの「私が転職した理由」…
1回目、
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