地元で就職した特別養護老人ホームでの人間関係に疲れ、ひとりで長野県にある八ヶ岳に登り始めたYさん。やがて、八ヶ岳に住むようになりました。次の職場は「生活のため」と割り切っていましたが、研修などに参加するうち、仕事への向かい方が変わりました。介護を勉強すれば、今の仕事への取り組み方を変えることができる。それが悩みを解決することになる――。介護職として生きるヒントを、Yさんから教えてもらいました。
*Y・Yさんの「私が転職した理由」…1回目、2回目、3回目、4回目(最終回)はこちら
Y・Yさん(34歳)の転職経験
音楽関連の専門学校を卒業後、一度は祖父の経営する会社に勤務
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横浜のレコード店にアルバイトから勤務を始め、契約社員として5年間勤務
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ヘルパー2級を取得し、横浜の特別養護老人ホームに正社員として5年間勤務。その間に介護福祉士の資格取得
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仕事のストレス解消として夜勤明けに長野の山に出かけることを趣味とする。次第に八ヶ岳へ移住を考える
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長野県で有料老人ホーム・グループホームを運営する法人に正社員として転職。現在はユニットマネジャーとして後進の指導も行う
勉強すれば利用者さんと深く付き合える
都内で開催される介護の勉強会や介護職の交流会などに出席するようになり、同じ介護職の人と知り合うチャンスが少しずつ増えていきました。そういう場に自ら来る人たちですから、みなさん非常に勉強熱心。介護という仕事によりよく取り組みたいという熱意にあふれています。勉強会での発言を聴いて、「こんな取り組み方があるのか!」とヒントになることもたくさんありました。また、同じ介護職のほかに、介護に関わる著名人や行政・企業の要になる方々とも名刺交換する機会が増え、世界が広がった感じがしました。
勉強して介護の知識が増えると、利用者さんのことをより理解できるようになります。認知症の方の心理や行動の意味がわかる、といいますか。すると、不可解な行動があっても「面倒だな」などと思わず、利用者さんの気持ちに寄り添うことができます。周囲のスタッフが「あの利用者さん、また、変なことをしている」と思っているようなときに、「きっとこういう意味でやってるんだと思うよ」と伝えることもできる。すると、周りの人たちも少しずつ変わっていきます。自分を含め、スタッフ全員のボトムアップ(=下からの意見を吸い上げ、全体をまとめていく管理方式)につながるんですね。
同じ頃、仕事に前向きに取り組んでいるスタッフを集めた、”会社をよくしていくミーティング”に参加するようになりました。スタッフ同士、意見を率直に出し合うミーティング。自分が勉強してきたことをベースに意見を言うと、みんなが聞いてくれ、反映されるのが楽しくなりました。また、ほかのスタッフの意見も参考になり、話すことでスタッフ同士の気持ちがひとつになっていくことも実感しました。就職して2年半。自分の中で「介護の仕事」が大きく変わっていくのを感じ始めていました。
場づくり、町づくりをしていきたい
今は、グループホームのユニットマネジャーをしています。現場スタッフとしても働きながら、2つのユニットを、僕ともうひとりのスタッフとで、運営しています。後輩スタッフに、ケアの仕方の根本を話すことも多くなりました。ただ、「こうすべき」と言う言い方では窮屈になってしまうので、みんなで考えていく形を取ろうと思っています。
後輩に「Yさん、このケースではどうしたらいいんですか?」と聞かれたときには、「どうしたらいいのかなぁ?」とオウム返し。「オレが正解じゃないよ。利用者さんに答えがあるんじゃないかな。そんなふうにみんなで考えて行こうよ」と言っています。自分自身も試行錯誤しながら、よりよいケアを目指しています。
あんなに山が好きで登りたくて八ヶ岳に移住してきたのに、考えてみれば、今、山にぜんぜん行っていませんね。なんでかな、解消するストレスがないからかな(笑)。
都会にいたときは、蒸し暑くて、道は渋滞していて。激混みの道を40分もかけて車で通勤していましたが、今は渋滞とは無縁の状態で、家から職場まで10分。途中、ずっと山を眺めながらのドライブだから、登らなくても満足しているところもあります。ここは、自分みたいに、田舎暮らしを求めて移住やUターンをしてきた人も多いですね。みんなこの土地が好きで、ここで楽しく暮らしていこうと思っていて。それも住みやすい理由になっているのでしょう。
今、自分は認知症ケアを軸に活動を深めていき、認知症を切り口に、いろんな人にアプローチしていきたいと思っています。専門性を高めるような勉強会にも数多く出席していますし、人とのつながりもたくさんできました。さまざまな人たちに自分を持ち上げてもらったという実感があるから、いただいたものを地域に還元したい。自分の住んでいるこの町を、「認知症にフレンドリーな町」にしていきたいと思っています。
さらに、介護事業というくくりに縛られない活動もしたいと思っています。今年になって、僕と同じようにIターンでこちらに来た女性と結婚をしました。彼女とも、将来的には、地域で「場づくり」がしたいね、と言っています。どんな場なのかは、これから考えていくのですが、人と人とをつなぎ、考え方や行動をつないでいくようなことをしたい。この地域にも、面白い人がたくさんいます。その人たちを、ほかの地域の人たちにつなげていけたら、面白い事が起こると確信しています。
仕事のストレスを感じてウツになっていた自分は、もうここにはいません。
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