介護業界でがんばる人たちの転職体験をお届けするこのコーナー。
グループホームから研修企画の仕事へ転職したR・Tさんの体験談を、全4回の連載で掲載します。
第2回では、新卒で就職したグループホームでリーダーに抜擢されたRさんの工夫と苦悩をお伝えします。
◆グループホーム(介護職→ユニットリーダー)→介護・福祉関係企業(研修企画)
R・Tさん(女性・26歳)
介護業界での経歴詳細
●グループホーム(勤務期間:3年/月給約20万円(夜勤手当含む)+ボーナス約1.5カ月分)
●介護・福祉関係企業(勤務期間:6カ月/月給約27万円+ボーナス約4カ月分)
保有資格:介護福祉士、社会福祉士
家族構成:夫と二人暮らし
*R・Tさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目(前回)はこちら
【就職直後のホンネ】スタッフの愚痴が多い…
大学を卒業してすぐ、グループホームで働き始めました。3つのフロアがあって1フロア9人定員。各フロアに正職員のユニットリーダーが1人、あとは全員年配のパート勤務の方、という構成でした。
パートの方たちは新人である私のことはかわいがってくれ、仕事も教えてくれました。
でも、その年代特有の愚痴の多さが気になりました。
施設長のちょっとした一言を取り上げて、「ぜんぜんわかっていない」と悪口を言い、ほかの職員にも同意を求める。
利用者さんについても、他の人に比べて要望が多い方や気難しい方、意思疎通がしにくい方について、あれこれ文句を言っていました。
私はそういう愚痴は聞き流せるタイプですし、年齢で人を見るのはやめようとか、この人だって家に帰ればきっといいお母さんなんだとか、思えるタイプです。
だから人間関係でヘコむことはあまりありませんでした。
しかし、福祉の世界で頑張っていこうと思っていた私にとって、「この世界で仕事をしていても必ずしも介護の仕事が好きな人ばかりではないんだな」と感じて、少なからずガッカリしました。
【介護職のやりがい】利用者さんからたくさんのことを学べました!
認知症の方への対応に最初はとまどったけれど…
グループホームでの利用者さんたちとの関係性はとても楽しかったです。
一緒に買い物に行き、食材を見て選んで、その食材でご飯を作る。
ワイワイ言いながら作り、いい匂いに囲まれて、みんなで食べる食事は格別でした。
認知症の方とじっくり接するのは始めてだったので、夜勤のときに、利用者さんのおじいちゃんと部屋で話していると「ティッシュがない!あんたが取ったんでしょう」と言われたときはびっくりしました。
でも、そういうことはあるのだ、と勉強してきましたし、すぐに慣れて、ティッシュの箱がなくなって心配なんだよね、と思えるようになりました。
家族との関係性について利用者さんから教わったこと
利用者さんと仲良くなるきっかけのために、自分の家族の話もよくしました。
「うちの母は、国立の大学に入れ、大学に入ったのになぜ介護の仕事をしているんだ、どうせ介護業界なら業界ナンバー1のところで働け、みたいに言うんですよ」というような感じで。母からの過剰な期待がプレッシャーで、なんでも自分の考え方で決めつけるのがちょっといやで、「私のことをいつもうまく理解してもらえない」と思っていました。
でも、利用者さんに家族の話を聞いてもらい、慰めてもらったり、また、利用者さんの家族の話を聞いたりして、気づかされることも多かったのです。
女性の利用者さんに、「きっと心配なんだよ、お母さんはあんたのこと大事に思ってるんだよ」とやさしく諭されたこともありました。
ハッとしました。
自分の側から考えて、「お母さんはわかってくれない」と思っていたけれど、母は母で、「こんなに心配しているのにわかってくれない」と思っていたかもしれないなって。
「家族」というものは、仲がよいもの、よくなくてはいけないものと思っていたけれど、世の中の家族はそうでもない、いろんな家族があるんだなと。
実際に、ほとんど面会に来ないご家族もいました。
いったいどんなことがあって、そういう家族になってしまったのか。
何もなくてもそういう家族があたりまえだったのか。
利用者さんから、自分の知らない世界を教えてもらいました。
【突然の転機】3年目でユニットリーダーに昇進!
施設長が何人も辞めるグループホーム。その原因は?
新卒で入社したグループホームは、長く勤めているパート職員が多く、パートをまとめる正職員がなかなか定着しないところでした。
施設長も、3年で4人変わっていました。
職員同士のギクシャクした雰囲気、利用者さんへの冷たい態度などをなんとか立て直そうと新しい施設長がやってくるのですが、なかなかうまく職員をコントロールできていない様子でした。
施設長が定着しないので、ユニットリーダーが自分たちの勝手なやり方でフロアを運営し、フロアごとに雰囲気がぜんぜん違う状態です。
3フロアのリーダーが次々辞職。次のリーダーは、私?!
1階フロアのリーダーはとても厳しく、きっちりしているから、現場での事故などは起こりにくいですが、職員たちは息をつく暇もなく働く感じで忙しく、怒られることも多いので、笑っている人がいないんです。そして、すぐに辞めてしまう。
一方、2階フロアのリーダーは職員に何も言わない。自由といえば自由なのですが、職員の統率が取れず、事故も多い。
パートさんたちが自分勝手に介護をしている感じで、虐待すれすれだと思うこともありました。
そして私がいた3階フロアのリーダーはすごくドライで、利用者さんのことも職員のことも、あまり深く関わるタイプではありませんでした。
とにかく早く仕事を終わらせてみんな早く帰ればいいんだと。
じっくり人の話を聞くこともなく、殺伐とした雰囲気の中で働いていました。
3人のリーダーが1カ月おきに辞めたのが、私が3年目の年です。
当時、私のいたフロアでは、正職員で最も長く働いていたのが、3年目の私。必然的に私にリーダー職が回ってきました。
【私が目指したリーダー像】人を褒め、さりげなくフォローする
介護現場のリーダーの役割とは?
以前のリーダーが、職員の話も聞かないし、立場もわかってくれない人だったので、私はみなさんの意見をしっかり聞くリーダーになろうと決めました。
長く働いているスタッフは、私の母親くらいの年齢の方がほとんど。
若い女の子に命令される、と受け取ったら、今度は私が愚痴や悪口の種になります。
それぞれのスタッフのいいところ、得意なところで活躍してもらおう。
そのためにさりげなくフォローできるリーダーになればいいのだと思い、実践しました。
良い所は「良い」と伝え、話をよく聞くリーダーを目指す
たとえば、陰口が多くていやだな、と思っていた人が、実は利用者さんの食事にとても気配りができ、たくさん食べられるように盛り上げてくれる人だったり。
彼女の持つ“良さ”を発揮してもらうために、私はこまごまとした業務を請け負いました。
利用者さんが完食すれば、「さすが●●さんの介助のおかげです」と伝えるので、うれしく思ってくれて、意欲を持って食事介助をしてくれるのです。
その人だけでなく、フロアのスタッフ全員に活躍してもらうわけですから、自分はフォローに忙しく、ちょっと大変でした。
でも、とにかくスタッフの話はよく聞こうと決めていたので、どんなときでも相談を持ちかけられれば聞くようにしました。
そうすると、夜勤明けでも3時間くらい話し込むこともあり、本当に大変でしたね。
それでも、スタッフからの信頼を得るために、自分は一生懸命に働きましたし、それが結果的には自分にとってよい経験になったと思います。
【介護の理想と現実】自分が犠牲になるリーダー職を続けることへの迷い
リーダーとしてはある程度信頼され、よかったのですが、だんだん自分自身は行き詰まってきました。
できあがっている組織を改善しようと思っても、ほんの少しずつしか変わらない。
変えようと思うと、自分がものすごく犠牲にならないといけない。
それでいて、新しいことはなかなか取り入れることができません。
新しい環境で、一から介護現場を作っていきたい。
その思いが強くなり、オープニングスタッフとして異動したいと、会社に願い出ました。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
次回は、Rさんの異動先での仕事内容や、転職を決意したきっかけをお伝えします。
次回「「働きやすい介護現場に必要なもの」を求めて転職を決意~転職体験Rさん3」は、3月4日に公開予定です。
*R・Tさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目(前回)はこちら
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