介護業界でがんばる人たちの転職体験をお届けするこのコーナー。
グループホームから研修企画の仕事へ転職したR・Tさんの体験談を、全4回の連載で掲載します。
第3回では、グループホームのユニットリーダーを辞めて、転職することを決意したRさんの経緯をお伝えします。
◆グループホーム(介護職→ユニットリーダー)→介護・福祉関係企業(研修企画)
R・Tさん(女性・26歳)
介護業界での経歴詳細
●グループホーム(勤務期間:3年/月給約20万円(夜勤手当含む)+ボーナス約1.5カ月分)
●介護・福祉関係企業(勤務期間:6カ月/月給約27万円+ボーナス約4カ月分)
保有資格:介護福祉士、社会福祉士
家族構成:夫と二人暮らし
*R・Tさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目、
2回目(前回)はこちら
【この仕事、辞める?辞めない?】オープニング施設への異動を希望
新卒でグループホームに就職して3年目。
ユニットリーダーに抜擢されたのはよかったけれど、すでにできあがった環境で、長く勤めているパートのスタッフをなだめながら仕事を進めていくことに、少し疲れてしまいました。
いろいろな改革をしようと思っても、スタッフたちが慣れた仕事の仕方を踏襲するしかないですし、何か変革しようと思っても不満が出てしまう。
私が一番後に入職したので、仕方がなかったのかもしれません。
そんな中、「新規にオープンするグループホームを自分の手で一から作って行きたい」という気持ちがムクムクと沸いてきました。
そこで、異動願いを出し、オープニング施設のリーダーとして新たな環境で働きたいと希望を出しました。
正職員なら、働く環境を変えたければ、異動するのが手っ取り早いと考えたんです。
特に、オープニングスタッフなら、新しい環境をみんなで作って行けるので、新鮮味があります。
【新しい仕事は?】新規オープンのグループホームへ異動
ユニットリーダーとしてグループホームのオープニングスタッフに!
異動の希望は受け入れられ、東京西部の新しいグループホームに配属されました。
施設長は私より5つ年上の大卒の男性。
そのほかに、ケアマネジャーがひとり。
介護職の中で正社員として入職したのは私1人だったので、私が2フロアのリーダーを兼ねる形でスタートしました。
ただ、利用者さんが、最初は3人しかいなかったのです。
利用者さんを増やして満床にするのが、私たちのミッション。
まずは営業から始めました。
近隣の居宅介護支援事業所を中心に、ご挨拶に行きがてら、利用者さんの紹介をお願いするのです。
施設長・ケアマネジャー・私の3人でそれぞれ営業をするうち、いくつかのご紹介をいただきました。
けれど、施設長は認知症が重い方や精神病が強く出ている方などを打診されると、「大変だから」と断ってしまうのです。
スタッフの負担を考えて、というのですが、それは正しいのでしょうか。
たしかに、難しい方をお受けすると、スタッフはその方への対応に時間をとられます。
けれど、一度断ってしまったら、そのケアマネジャーさんからは次の紹介はなかなか来ません。
ちょっと難しい方をお受けしたら、「助かったわ」と感謝され、次はもう少し穏やかな方を紹介してもらえるかもしれない。
そういう駆け引きというか、営業の機微ってあると思うのです。
それなのに、難しいケースはすぐに断ってしまうので、利用者さんは集まらず、いつまでもグループホームは赤字のままでした。
地域への営業活動も、現場のケアも。忙しい日々にある思いが…
利用者さんの獲得以外の部分でも、何かと引っ込み思案な施設長。
彼に任せておくと、物事がなかなか進まないので、自分もずいぶん動きました。
行政とのやりとり、パートさんの採用。
施設長と同じくらいの仕事内容、そして介護職としての仕事もあるので、毎日めいっぱい働いていました。
地域にこのホームのことを知ってもらうにも、利用者さんを獲得するにも、地域と仲良くすることが大切です。
それで、地域の自治会長さんのところにご挨拶に行ったり、地域のおまつりに呼んでもらい、ホームのアピールをしたり。
地域の避難訓練にも参加し、なんとかつながりを作ろうとしました。
その上で、スタッフのシフト組みの役目もあれば、現場職として夜勤もこなしました。
毎日がめまぐるしく過ぎていき、かといって成果が上がっているという実感も持てずにいられない日々。
こうなったら、もっとがんばって自分が施設長になろう。
権限がなく、現施設長の思うままに動かなければならない自分がもどかしく、もうこんな状態はいやだと思ったのです。
じりじりしながら日々を過ごしていました。
【仕事のやりがいは?】外部の研修会で感じた充実感
職場での仕事が充実していない分、刺激は外に求めるようになりました。
異動になる前から、学びのために外部の勉強会や研修に出るようにしていましたが、ますます多くの勉強会に出席するようになりました。
自分でボランティア活動を運営することもしました。
きっかけは大学時代に「利用者さんの話を聞くのも大事な介護の仕事。しかも、介護の資格も必要ない」と思ったこと。それで、大学生が中心のボランティアを集めて利用者さんのお話を聞きに行く会を立ち上げました。
これまでお年寄りたちの話を聞く機会がなかった学生たちも、いざお年寄りと話してみると「長く生きてきた人の重みを感じる」「いろいろなことを教えてもらった」と感動するようですし、お年寄りのほうも、「若い子たちが来て話を聞いてくれて楽しかった」と。
双方にとっていい効果が生まれているのを目の当たりにしました。
前向きに介護に取り組めない職場のスタッフだけと付き合っているより、こうした活動をしたほうが、ずっと充実感を感じる。
仕事に空しさを感じるのと比例して、こうした勉強会にのめり込むようになりました。
【転職のきっかけ】介護の理想を語り合える“ある人”との出会い
まずは介護職が幸せになれる環境を作りたい、という理想
そんな中、介護業界の大手企業の方と知り合い、一緒にお酒を飲みに行くことになりました。
介護についてどう考えるか、どんなグループホームを作って行きたいか。
語り合うほどに意気投合しました。
リーダーになって、介護職の人たちをまとめる立場になってから、仕事を楽しいと思えない人は、自分のことをよく知らないんだな、相手の世界を知ることにも興味がないんだな、と思うようになりました。
介護というのは、利用者さんを幸せにすること。そうだとしたら、自分が幸せでなければならないと思うのです。
自分が幸せでないと、人のことを優しく思ったり、大事にしたいと思ったりすることができないと思います。
「まずは介護職が安心して仕事ができる環境・充実した生活ができるような環境を作りたい」とその方に話したところ、「それならぜひ、うちに来てほしい」と言われたのです。
「全国の介護職のため、一緒に研修を作ってほしい」
その方は、社内研修を企画するような部署にいて、全国に5,000人以上いる職員の研修を一手に取り仕切っていました。
職員の心に響く研修を作って行きたいと思っていた矢先に私と知り合い、話をする中、「一緒に研修を作るなら、こういう若手がいい」と思ってくれたようなのです。
私、スカウトされたんだ……。
自分でもびっくりしました。
自分の職場にだけ目を向けていると、出会う人も少なくなる。
でも視野を広げれば、こんな展開になるのだと、改めて思いました。
【転職を決意】転職するのは身勝手なこと?
もちろん、うれしさは感じました。自分が日頃思っていることが、仕事に結びつき、実現されるなんて、ものすごく幸運なことです。
ぜひともこのチャンスを生かしたい。
でも、迷いもあったのです。
自分から異動を願い出て、オープニングスタッフとしてホームを作り上げていきたい、と宣言したのに、それからまだ半年しかたっていませんでした。
「成果も出ていないのに逃げ出すのか」と自問自答しました。
もし、今辞めると言ったら、異動の希望を叶えてくれた本部の上司にがっかりされ、軽蔑されるだろう。
私がいなくなったら、ユニットリーダーは誰が勤めるのか。
少しずつ増えてきた利用者さんやその家族から引き出してきた思いや目標、夢はどうするのか。
そんな利用者さんを振り切ってほかの企業に転職していいのか……
考えれば考えるほど、転職することが身勝手に思えてきました。
けれど、どうしても行きたい自分もいる。
1カ月くらい葛藤しました。
いったりきたり、どちらに決断していいかわからない。
でも、一度きりの人生、やりたいことをやらせてくれるのなら、転職して新天地でがんばるべきなのではないか?
最後はこのように結論づけました。
そして、後ろめたい気持ちを抱えながら、私は退職願を提出しました。
転職することを伝えたときに、涙を流して別れを惜しみ、
「若いうちにたくさんチャレンジしてまた戻ってきて。
会社は変わっても、会いに来てやって」
と言ってくださったご家族の方々のことは、今でも忘れられません。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
最終回の次回は、転職先での仕事内容や今後の抱負について語っていただきます。
次回「介護現場から離れても、利用者さんのための仕事はできる!~転職体験Rさん4」は、3月11日に公開予定です。
*R・Tさんの「転職 成功・失敗 体験談」…
1回目、
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