特別養護老人ホーム・介護老人保健施設の介護職を経て、看護師資格を取得する決意をしたOさんの転職体験談の第3回。
病院で看護師として働きながら「介護」でできるケアの魅力を再確認したOさんが、介護現場へ転職するまでの心境の変化とは…?
◆特別養護老人ホーム(介護職)→介護老人保健施設(介護職)→病院(看護師)→デイサービス(看護師・介護職)
O・Hさん(女性・39歳)
介護業界での経歴詳細
●特別養護老人ホーム(介護職)(勤務期間:5年/年収約330万円)
●介護老人保健施設内のデイケア・グループホーム(介護職)(勤務期間:4年/年収約350万円)
●国立病院(看護師)(勤務期間:5年/年収約450万円)
●デイサービス(看護師・介護職を兼務)(勤務期間:3年/年収約380万円)
保有資格:介護福祉士、看護師
家族構成:夫、長女(5歳)、長男(1歳)
*O・Hさんの「転職体験談」
第1回:
人に寄り添う介護がしたい!特養での「3年目の壁」
第2回:
介護の仕事をしながら看護師を目指した私の決断
【看護学校の学生に】ハードな勉強とグループホームの夜勤を両立
国立の看護学校に入学し、看護師を目指して勉強をし始めたのが、29歳の頃。
学費を最小限にしたかったからこその国立の学校でしたが、とにかく勉強が大変でした。
朝から夕方までフルに授業があり、宿題も山ほど出ます。
家で勉強しようと思っても寝てしまうので、ファミレスなどで必死にこなしました。
その合間にグループホームの夜勤をしていたので、正直きつかったですね。
でも、「少しでも収入を」と考えてくれた職場の先輩たちに今でも本当に感謝しています。
たしかに身体はきつかったけれど、それでも、日曜日に友達と会う時間も、金銭的な余裕もできたのですから。
当時は若くて体力があったと思います。
【2度目の転職】国立病院へ看護師として転職!
看護学校卒業後は、老健を辞め国立病院へ
留年や国家試験など不安なことが多い学生生活でしたが、3年後、なんとか看護学校を卒業でき、国家試験も合格。
晴れて看護師になることができました。
お世話になった介護老人保健施設(老健)で看護師として働くというのは、正直、考えていませんでした。
私が卒業した国立の看護学校では、卒業後は国立の病院に勤務するのが当然と考えられ、またそれが花形でもありました。
私は運良く国立の病院に就職できたので、老健の法人に報告すると、とても喜んでくれました。
「いつか戻るときが来たら歓迎するから」とも言ってくれました。
国立病院での看護師の仕事は本当にキツイ!
しかし、国立病院での新米看護師の仕事は、本当にきつかったです。
私は呼吸器内科に配属されたのですが、専門用語が飛び交い、命じられた仕事内容も正直よくわからないことがあり、先輩たちから叱られてばかりの日々でした。
「国立病院は厳しい」という通説は正しかったと身をもって知りました。
国立病院機構は、指導カリキュラムがしっかり体系されているので、仕事をしながらそのカリキュラムをこなすのが大変なのです。
その分、指導は丁寧です。
ただ、その大変さについていくのが難しくなった人は、民間病院で比較的ゆるやかに教育を受けられる道を選んでいきました。
私も、何度叱られてもできない自分が情けなくもどかしく、よくトイレで泣きました。
もう辞めてしまおうかと思ったこともありました。
けれど、とにかく周囲の人たちに少しは認められたい一心で、なんとかついていきました。
「看護のケアには正解がある」そう感じて看護師の仕事が楽しくなった
そうしてがんばっていると、次第に先輩たちの言うことがわかるようになってきたんです。
看護師長から「最初はすぐに辞めると思ったけれど、根性あるわね」と褒められたのを覚えています。
それからは、看護師という仕事に邁進し、介護よりも看護の世界のほうが自分には合っている、と思えるようになりました。
介護の仕事は、人間の生活や心情のケアが中心なので、正解がありません。
なんとなくふわっと理解し、マニュアルのないケアをしているな、と思うことも多かったです。
論理的に物事をすすめたい私には、介護より、医学的根拠に基づいて行動する看護師のほうがしっくりきたのです。
そう実感できるようになると、看護師の仕事がますます面白くなり、結局泣くほどつらかったその病院に5年間勤めることになりました。
途中結婚し、子どもを産んで産休・復職するなど、私生活の面でも変化があり、めまぐるしく時は過ぎていきました。
【転職のきっかけ】介護の魅力を再発見したデイサービスでの支援
デイサービスで、要介護度が軽くなる・歩けるようになる?!
自分は国立病院の看護師として頑張っていくのだと確信し、仕事に励んでいて、介護の世界に戻ろうなどとは思ってもいませんでした。
ところが、あるとき、デイサービスの社長さんに出会い、施設を見学させてもらって衝撃を受けたのです。
最初は車椅子で来ていた利用者さんが、そのデイサービスでリハビリを受けると、歩けるようになっていたのです。
聞けば、利用者さんの半数以上がADL(日常生活動作)のレベルを上げ、要介護度もどんどん軽くなっているとか。
特別養護老人ホームで働いていたときも、寝たきりのような衰弱した状態で入居してきて、元気になって歩けるようになった人をひとりだけ見たことがありました。
でも、同じ場所でこんなに何人も回復する、という状況は見たことがなかったのです。
『なぜこのデイの利用者さんはこんなに回復するの?』と疑問に思いながら何度か足を運んで見学させてもらうと、やはりここでも「個別性」がキーワードになっていました。
その人らしさをよく理解し、その人にピッタリ合ったリハビリテーションを行っていたのです。
利用者さん同士の「自分にもできるかも」の連鎖
そこのデイサービスでは、日常生活の介助などの業務は介護職が行うのですが、リハビリは理学療法士や作業療法士の手法をもとに、ひとりひとりをモニタリングし、本人に見合ったトレーニングの内容を決めていました。
それも、「こうしてください」ではなく、
その人がやりたいことをリハビリに組み込み、自ら目標設定をしてもらうのです。
畑仕事が好きな人は、「しゃがんで野菜の世話ができるようになりたい」というのが願望でした。
腰痛が激しく、しゃがめなかったその人は、個別のスペシャルメニューのトレーニングでみるみる体力がつき、しゃがめるようになるのです。
奇跡のような改善ぶりは、職員だけでなく、利用者さんをも感動させます。
「自分にもできるかも」と思い始め、積極的に個別のトレーニングに励んだ結果、願いがかなう。
生きていてよかったと思える瞬間でしょう。
そんな仲間を見ているほかの利用者さんも、「自分にもできるかも」と前向きになれます。
そんなふうに利用者さん同士が刺激され合い、どんどんよい状態になっていっていたのです。
このデイサービスで働きたい。
その気持ちがどんどん強くなりました。
【3度目の転職】「介護」だからこそ、個人に合わせてケアできる
個別ケアで利用者さんの「元気」を支えたい
病院では看護師として安定した仕事を持ち、年収420~450万円を得ていました。
そもそも、収入を高くしたいのも、看護師になる目的でした。
それなのに、なぜ私は介護の世界に戻りたいのだろうか。
自分でも不思議でした。
しかし、個別ケアが利用者さんをこんなに元気にする現場に、自分を置いてみたい。
その願いが強くなったのです。
病院ではできない、生活に密着したケアがしたい!
また、デイサービスは在宅高齢者が利用する場です。
デイケアで働いていたときと同様に、その方の自宅での生活を考えながらケアすることができます。
ご家族とも連携しながら、その方のよりよい暮らしをコーディネートしていける仕事の手応えを、もう一度感じたい、という気持ちもありました。
病院ではできない、地域密着の仕事がここにある。
社長は、迷っている自分に、「ぜひうちの看護師として働いてほしい。仕事内容は介護職に近いけれど、介護と看護のよりよい融合を考えられるのはあなたしかいない」と言ってくれました。
こうして、国立病院の看護師というポジションを捨て、私は小さなデイサービスに勤務することになったのです。
<三輪 泉(ライター・社会福祉士)>
最終回の次回は、デイサービスで看護師として勤務するOさんの姿と今後の目標について伺います。
次回最終回「特養・老健・病院・デイ…すべてが理想の介護のための良い経験~転職体験Oさん4」は、7月1日に公開予定です。
*O・Hさんの「転職体験談」
第1回:
人に寄り添う介護がしたい!特養での「3年目の壁」
第2回:
介護の仕事をしながら看護師を目指した私の決断
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