公開日:2021/8/30 最終更新日:2024/10/31
医療機関でリハビリ関係職に就いていた経験がある方は、「機能訓練指導員」としてその知識・スキルを介護業界で活かすことも大いに可能性です。
今回は、介護業界における機能訓練指導員の仕事内容やなるための方法、働き方などについて詳しく解説します。これから機能訓練指導員を目指す方はぜひ参考にしてみてください。
機能訓練指導員は、利用者一人ひとりの状態に応じてリハビリプランを立て、日常生活を営むのに必要な自立性を保てるように支援していく仕事です。資格の名称ではなく、介護保険法によって定められている職種の1つとなります。
定義がリハビリと似ていることから混同されやすいのですが、リハビリは医師の指示に基づいて身体機能の維持や回復を目的に行われる訓練のことを言うのに対し、機能訓練はケアプランに基づいて作成された機能訓練計画書に則り身体機能の減退防止のために行う訓練のことをいいます。
機能訓練指導員は、通所介護事業所や特別養護老人ホームなどの介護施設において、最低でも1名は人員配置する必要があります。
そのため、以下の施設では機能訓練指導員を必要としています。
・通所介護(デイサービス)
・短期入所生活介護(ショートステイ)
・認知症対応型通所介護(グループホーム)
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)
・特定施設入居者生活介護
また、介護予防通所リハビリテーションなどの介護予防施設でも、機能訓練指導員が配置されるケースも増えてきており、機能訓練指導員が活躍できる場は広がっていると考えられます。
機能訓練指導員はその業務の専門性が高い職種であることから、以下のいずれかの資格がなければなることができません。
・理学療法士
・作業療法士
・言語聴覚士
・看護師
・柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師
・一定の実務経験を有するはり師及びきゅう師
>「機能訓練指導員」の求人情報に記載されている応募条件は?
元々、機能訓練指導員になるために必要な資格は理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護職員、柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師のみでした。
2018年度(平成30年度)の介護報酬の改定により、機能訓練指導員の確保を促進し利用者の心身機能の維持を促進する観点から、はり師及びきゅう師も機能訓練指導員の要件委加わることとなりました。
ただ、はり師及びきゅう師が機能訓練指導員になるためには以下の条件を満たさなければなりません。
人員配置基準上、機能訓練指導員が必要となる介護保険サービスは以下のとおりです。
・通所介護(デイサービス)※地域密着型を含む
老人デイサービスセンターなどで提供される、入浴・排泄・食事などの介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービス及び機能訓練をいいます。
・短期入所生活介護(ショートステイ)※介護予防を含む
特別養護老人ホームなどの施設で短期間生活してもらい、その施設で行われる、入浴・排泄・食事などの介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービス及び機能訓練をいいます。
・認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)※介護予防を含む
認知症の方が、老人デイサービスセンターなどを訪れて利用する、入浴・排泄・食事などの介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービスなどや機能訓練をいいます。
・特定施設入居者生活介護(介護予防及び地域密着型を含む)
特定施設に入居している要介護者を対象として行われる、日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話のことであり、介護保険の対象となる。特定施設の対象となる施設は以下の通りです。
1.有料老人ホーム
2.軽費老人ホーム(ケアハウス)
3.養護老人ホーム
・介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)※地域密着型を含む
介護老人福祉施設とは、特別養護老人ホーム(入所定員が30人以上であるものに限ります)のことであり、その施設が提供するサービスの内容、担当する者などを定めた計画(施設サービス計画)に基づいて、入浴・排泄・食事などの介護、そのほかの日常生活を送るうえで必要となるサービス、機能訓練、健康管理及び療養上のサービスを提供することを目的とする施設です。
これらの介護施設・事業所では、機能訓練指導員がいなければ利用者へ適切な介護保険サービスを提供できる体制ではないと判断されるため、指導監査にて指摘されることがあります。
実際に機能訓練指導員はどのような仕事をするのでしょうか。ここでは、機能訓練指導員が行う基本的な仕事の内容について紹介します。
◆機能訓練計画書の作成
機能訓練指導員の主たる業務は、機能訓練計画書の作成になります。
機能訓練計画書とは、利用者ごとに心身の状態や居宅の環境等をふまえて、ケアプランや利用者へのアセスメントなども参考に「利用者の基本情報」「個別機能訓練の目的と個別機能訓練項目の設定」「個別機能訓練実施後の対応」について、多職種(機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種の者)が共同して作成する計画書のことをいいます。
なお、3ヶ月に1回以上は利用者宅に訪問して機能訓練計画書に対する評価を行い、必要に応じて計画書の改定を行います。
◆個別リハビリ
医療機関のリハビリ職は医師の指導に基づいて利用者の身体機能の維持・回復のためのリハビリを行いますが、機能訓練指導員が行う訓練はあくまでも機能訓練計画書に基づいて行われ、機能の減退防止を目的としています。
個別に行われる訓練については、機能訓練計画書の個別機能訓練プログラムに沿って訓練されます。プログラムの実施に関しては必ずしも機能訓練指導員である必要はありませんが、立案に関しては機能訓練指導員の仕事となります。
◆集団リハビリ(体操など)
機能訓練指導員の仕事は個人を重視しますが、介護施設・事業所の利用者全体の基礎的な身体機能の底上げを目的として集団での体操や筋力トレーニングを機能訓練指導員が中心となって行っているところもあります。
個別での訓練に入る前に集団で体操をすることで介護施設・事業所内で一体感が生まれ、身体の調子も上がるため、利用者がより個別の訓練に励んでくれる効果もあります。
機能訓練指導員として勤務する前に必須の研修は決められていません。
しかし、機能訓練指導員として働く前の心構えとして、機能訓練指導員の基礎となる介護保険サービスで求められる役割は何かをしっかりと理解しておくことは大切なことです。
特に研修では、実際に働いている人たちが講師となり、機能訓練の実践方法を学ばせてくれる機会となるので利用者の様々なニーズに対応し、より効果的な機能訓練を実施するために役立ちます。
このように、働く前に研修を受けることで機能訓練の目的と意味についての理解がより深まるため、研修はぜひとも受けておくとよいでしょう。
機能訓練指導員になるための資格には、介護福祉士は含まれていません。
機能訓練指導員はあくまでも機能訓練を目的とした職種であり、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士などの福祉系資格とは性質が異なるためです。
介護福祉士から機能訓練指導員になるためには、機能訓練指導員として必要な資格を取得しなければなりません。
ただ、介護福祉士からのダブルライセンスは福祉のみならず、リハビリや機能訓練にまで対応することができるようになるため、より自らの能力の幅を広げることが可能となります。
介護福祉士が機能訓練指導員になるためには、いくつかの方法があります。ここでは、機能訓練指導員になるのに必要な資格ごとに取得方法を紹介します。
1.理学療法士
理学療法士になるためには養成校で3年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
2.作業療法士
作業療法士になるためには養成校で3年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
3.言語聴覚士
言語聴覚士になるためには、高校卒業者の場合、養成校で3年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
一般の4年制大学卒業者の場合は、養成校で2年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
4.看護師
看護師になるためには、高校卒業者の場合、看護学校で3年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
中学卒業者の場合、一貫看護師養成学校で5年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
5.柔道整復師又はあん摩マッサージ指圧師
柔道整復師になるためには、高校以上の卒業者であって養成校で3年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
あん摩マッサージ指圧師になるためには、養成校で3年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
6.はり師及びきゅう師
はり師及びきゅう師になるためには、養成校で3年以上学び、国家試験に合格すれば取得できます。
ただし、機能訓練指導員として働くためには、はり師・きゅう師の資格を取った後、6カ月以上の実務経験が必要です。
介護労働安定センターの「令和5年度 介護労働実態調査結果」によると、介護事業所で働く理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、87.4%が正職員となっています。
介護事業所では生活相談員の 85.0%、サービス提供責任者の81.9%とともに、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は正職員として働く人の割合が高いということがわかります。
勤務状況についてみてみると、1週間の平均残業時間数は2.0時間で介護業界全体の平均1.6時間を上回っており、生活相談員の2.9時間、サービス提供責任者の2.3時間に次いで多いことがわかります。
そして、有給取得率は平均56.2%となっており、看護師の57.1%に次いで高い水準となっています。
(参考:公益財団法人 介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査 介護労働者の就業実態と就業意識調査 結果報告書」)
機能訓練指導員については業務の専門性の高さから専従でなければならないと思われるかもしれませんが、他の職種との兼務は可能です。
・指定通所介護等事業所の管理者との兼務について
通所介護等事業所において配置が義務づけられている管理者は、指定通所介護等事業所の管理上支障がない場合、管理者としての職務に加えて、機能訓練指導員として就業することも可能になっています。
・指定通所介護等事業所の看護職員との兼務について
配置が義務づけられている以下の指定通所介護等事業所の看護職員においては、各々の介護保険サービスについて条件がありますが、基本的には看護職員としての業務に従事していない時間帯において、機能訓練指導員として勤務することは差し支えないとされています。
・指定通所介護事業所
・指定地域密着型通所介護事業所(定員が11名以上である事業所)
・指定地域密着型通所介護事業所(定員が10名以下である事業所)
・認知症対応型通所介護事業所(単独型・併設型事業所に限る。)
・介護予防認知症対応型通所介護事業所(単独型・併設型事業所に限る。)
(参考:介護保険最新情報vol.952「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)(令和3年3月26日)」)
・指定通所介護等事業所の生活相談員又は介護職員との兼務について
機能訓練指導員に関する解釈通知では「利用者の日常生活やレクリエーション、行事を通じて行う機能訓練は、当該事業所の生活相談員又は介護職員が兼務して行っても差し支えない」とされ、生活相談員や介護職員が機能訓練指導員を兼務することは可能となっています。
ただし、機能訓練指導員の配置が不要という意味ではないので注意してください。
また、過去には無資格の介護職員を機能訓練指導員としていたケースもみられましたが、全ての指定通所介護等事業所において、有資格者の機能訓練指導員の配置が必要となります。
ここでは、実際に介護求人ナビに掲載されている「リハビリ・機能訓練職」の求人をもとに、機能訓練指導員の平均給与について紹介します。
◆月給
平均月給は24万円となっています。求人数では25万円から29万円までが最も多く、次いで20万円から22万9,999円まで、23万円から24万9,999円までと続きます。
介護職やヘルパーが21万円なので、専門職であることもあり、比較的給与水準は高いといえます。
◆時給
平均時給は1,516円で、実際の求人もほとんどが1,500円から1,999円までとなっています。時給で募集をしている会社も意外と多い傾向にあります。
時給での求人が多い理由としては、サービス提供時間帯の全てで機能訓練指導員を配置する必要がないということが影響しています。
◆年収
平均年収は343万円で、こちらも実際の求人では300万円から349万9,999円までがほとんどとなっています。介護職員やヘルパーの平均年収が330万円であるため、比較的給与水準は高いといえます。
また、夜勤がある介護職員の場合は夜勤手当の割合も高いため、夜勤の時間に応じて毎月の給料が変動しますが、機能訓練指導員の場合は夜勤がないので大きく変動することはありません。
医療機関でのリハビリは、身体機能の維持や回復を目的としているため、元の状態に戻るかあるいは限りなく元の状態に近づけるための訓練を行います。
一方、介護施設の機能訓練指導員の仕事は、減退予防のための訓練を行うことを目的としているため、身体機能・体力の低下を抑えることが役割としてあります。
身体機能・体力が長く維持できればできるほど、利用者も普段通りの日常生活を営める期間が長くなることになります。利用者の高齢による身体機能・体力の低下や、障害の進行などにより日常生活を普通に送ることができなくなると、精神面にも影響を及ぼしてしまいます。
機能訓練指導員として機能訓練の計画を作成し実行していくことは、利用者の身体機能や体力、意欲が減退してしまうのを防ぎ、精神面の安定にもつながります。体力面と精神面の両方が安定すると、利用者の表情は生き生きとし、充実した人生を送ることができるようになるため、そこに喜びとやりがいを見出す方が多い職種です。
機能訓練指導員は医療機関のリハビリ職とは違い、医師の指示があるわけではなく、基礎となる計画がケアプランとなるので、比較的自由に機能訓練の計画を組み立てることができます。
同時に、機能訓練を行うための知識や技術、アイデア、対応力などが求められることになるので、自身の判断で主体的に動き、機能訓練の経験をある程度積んでいる方が向いているといえます。
また、医療機関のリハビリ職は利用者の身体機能の回復がゴールとなりますが、機能訓練指導員の場合は常に利用者の状態に応じて計画を改定していくことになるので明確なゴールというものはありません。
つまり、一人の利用者に携わることができる期間が長くなる傾向にあるので、一人ひとりの利用者と関係を深め、個々を重視する方には向いているといえます。
機能訓練計画書の作成も機能訓練指導員の仕事の1つですが、最終的には多職種(機能訓練指導員、看護職員、介護職員、生活相談員、その他の職種の者)が共同して完成させます。
それぞれの立場の人たちが連携しながら利用者の生活を支援していくため、その調整役として連携がスムーズにいくよう機能訓練指導員はサポートしていかなければなりません。
そのため、機能訓練指導員にはコミュニケーション能力も必要となります。
機能訓練指導員として介護施設に就職したあとのキャリアについて紹介します。
●機能訓練指導員の専門家として活躍する
機能訓練指導員に必要な資格は介護保険サービスのみならず、医療などその他の分野でも活躍できる資格であることから、介護サービス以外の仕事をしている割合が他の職種に比べて高いのが特徴です。
機能訓練指導員として得た知識や技術をより深いところまで突き詰めていくことで、専門家として多方面での活躍が期待できます。
●介護施設・事業所のリーダー層やその先の施設長を目指す
機能訓練指導員は多職種との連携が求められる立場であることから、勤め先でのキャリアを積み上げていくことで主任や課長、部長などのリーダー層を目指すことができます。
リーダーになることで責任業務が増えることになりますが、その分やりがいや給与などが充実し、より高みを目指す気持ちがわいてくるでしょう。
●自分で独立する
なかには機能訓練指導員として培った高い専門性を活かして独立する方もいます。
特に、柔道整復師から機能訓練指導員になった方の場合は、柔道整復師の資格に開業権があるため、整骨院として独立することが可能です。
また、リハビリ専門職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の場合、開業権はないものの、法人格さえ有していれば誰でも開業が可能なデイサービスを行う方もいます。
機能訓練指導員として最もスキルアップする方法は、他の機能訓練指導員の方の話を聞き、実技指導を受けることです。
特に、機能訓練指導員は持っている資格によって考え方が異なります。
理学療法士なら理学療法士の視点、看護師なら看護師の視点などそれぞれの職種から見た異なる視点があります。
それらを研修の中で学び、情報共有していくことでこれまで以上に利用者の様々なニーズに対応できるようになり、効果的な機能訓練を実施することが可能となります。
高齢の利用者さんが普段通りの日常生活を長く維持するには、一人ひとりに合った訓練が求められます。そのためには、日ごろから利用者さんの身体能力、生活能力を評価するリハビリ関連職が必要不可欠です。
利用者さんがいつまでも元気で健康に暮らせていける機会を作ることが、機能訓練指導員の役割であり、やりがいになります。機能訓練指導員に興味がある方はぜひ転職を検討してみてください。
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