ひとえに看護師と言ってもその勤務先は多岐に渡ります。今回は看護師の国家資格をお持ちの方に向けて、病院で働く看護師、介護施設で働く看護師の違いを解説します。
役割や業務内容はもちろん、給与の違いやそれぞれに向いている人の特徴にも触れるので、自分に合う働き方を見つける参考にしてください。
1 看護師の主な就業先
2 病院の看護師と介護施設の看護師の役割の違い
3 病院で働く看護師の業務内容
4 介護施設で働く看護師の業務内容
5 病院で働く看護師の1日のスケジュール例
6 介護施設で働く看護師の1日のスケジュール例
7 病院で働く看護師と介護施設で働く看護師の給与の違い
8 看護師が病院で働くメリット・デメリット
9 看護師が介護施設で働くメリット・デメリット
10 病院勤務に向いている看護師と介護施設勤務に向いている看護師の違い
11 病院から介護施設、介護施設から病院に転職はできる?
12 同じ看護師でも目的や対象者が違う!自分に合った働き方を選択しよう
主な就業先 | 割合 |
病院 |
70.9% |
診療所 |
12.0% |
介護保険施設等(※) |
7.0% |
訪問看護ステーション |
5.1% |
その他 |
5.0% |
※「介護老人保健施設」「介護医療院」「指定介護老人福祉施設」「居宅サービス事業所」「居宅介護支援事業所」等
(厚生労働省「令和4年 衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」)
看護師の就業先として最も多いのは病院と診療所です。次いで介護保険施設、訪問看護ステーションと続きます。
病院や診療所の看護師は、ケガや病気で来院や入院した患者のケアにあたります。訪問看護ステーションでも患者のケガや病気のケアをしますが、患者の自宅でケアを行う点が異なります。両者とも病気やケガの治癒を目的として子どもからお年寄りまで老若男女全ての方に対応する点が特徴です。
一方、介護保険施設は、原則として要介護認定を受けた65歳以上の高齢者が入所・利用できる施設です。そのため介護保険施設に就業する看護師が対応する方は要介護の高齢者に限られます。
病院 | 介護施設 | |
施設の特徴 |
・病気やケガの治療を目的とする |
・生活機能の維持、向上を目指しながら日常生活の支援を行う |
対象者 |
・病気やケガで来院・入院した患者 |
・原則的に65歳以上の要介護認定を受けた高齢者 |
役割 |
・ 医療チームの一員としての患者ケア |
・利用者の 健康管理 |
一緒に働く人 |
・医師 |
・医師(必要な施設の場合) |
病院・クリニックは治療を目的としているのに対し、介護施設は「生活の場」です。そのため、病院で働く看護師と介護施設で働く看護師とでは、業務内容にも大きな違いがあります。
病院看護師は、患者の病気やケガの治療のため、医師の補助を行います。
一方、介護施設勤務の看護師は比較的医療ケアを行う場面が少なく、利用者の日々の健康管理が主な業務です。利用者の日常生活と治療のバランスをとるため、他の介護職員や利用者自身と上手くコミュニケーションを取りながら業務にあたる必要があります。
病院で働く看護師の業務を詳しく見てみましょう。病院看護師は病棟か外来かなど勤務場所によって業務内容が変わりますが、主に診療補助と入院患者のケアが業務の二本柱です。
医師が診療を滞りなく行えるよう、医療器具の準備や記録を行います。基本的には全て医師の指示を受けた際にのみ行うことが可能です。
病院で行う医療行為には、医師だけが行える「絶対的医行為」と、看護師をはじめ、ほかの医療従事者が医師の指導のもとで行える「相対的医行為」がありますが、診療に伴う「相対的医行為」の多くを看護師が担います。通院患者の診療を行う病院・クリニックで働く外来看護師の主な仕事は、診療補助です。
注射や点滴、投薬は、医師から指示を受けた看護師のみが行える医行為です。一方、食事・入浴・排泄介助や体位交換などは「療養上の世話」と呼ばれ、入院患者が安静に療養し、治癒に向けて過ごす環境を整える仕事です。ときには、准看護師と分担して業務に当たったり、准看護師へ指示を出したりします。
このような入院患者への対応を中心に行う看護師を病棟看護師とも呼びます。
介護施設で働く看護師の業務内容は大きく分けて3つあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
介護施設で働く看護師の主な業務は、利用者の健康管理です。
利用者の体調変化を見逃さないよう日々バイタルチェックを行い、体調はどうか、清潔かなどを確認します。介護が必要な利用者は、自分一人で口腔ケアや爪切り、耳垢の除去などをできないことも多いので、必要に応じて看護師が介助します。
また介護施設には、基本的に医師が常駐していません。そのため、利用者が急に体調を崩したり、ケガをした際は、現場の代表として看護師が対応する必要があります。迅速かつ冷静な判断が求められるでしょう。
介護施設で働く看護師は、医師の指示のもと「相対的医行為」と呼ばれる一部の医療業務を行います。医師が常駐していない介護施設において、これらの医療行為を行えるのは原則として看護師のみなため、医療行為を必要とする利用者に対しては看護師が大きな責任を担っているといえるでしょう(※)。
※痰の吸引・胃ろうの管理は一定の研修を修了した介護職員も可能
急性期の病院病棟のように、利用者の容態が急変することは比較的少ないため、ルーティーンを守り、わずかな変化や不調をとらえることに重点がおかれます。
規模が小さな有料老人ホームやデイサービスなどの介護施設では、看護師が介護業務を行うこともあります。基本的に食事・入浴・排泄介助は介護士が行いますが、看護師も連携して利用者の健康をサポートするケースもあります。
レクリエーションは利用者の生活維持・向上に大きな役目を果たす活動です。原則、介護士やリハビリ職が行いますが、看護師も進行のサポートや、利用者の様子を観察するために参加することがあります。
また施設内の介護士やほかのスタッフとの打ち合わせを通して、利用者の体調などの情報を共有することも重要な業務のひとつです。
外来看護師は日勤のみですが、病棟看護師であれば2交替または3交替制勤務の夜勤や準夜勤があります。1回の勤務時間が最も長いのは2交替制の夜勤です。
日本医療労働組合連合会の「2023年度 夜勤実態調査結果」によると、ひと月の平均夜勤回数は、2交替制で4.28回、3交替制で7.42回という結果が出ています。詳細は各病院・病棟によっても異なります。
―――――――――――――――――――――――――
日勤(2交替制)の勤務時間例:8:00~18:00
日勤(3交替制)の勤務時間例:8:00~17:00
―――――――――――――――――――――――――
3交替制の日勤者は2交替制の日勤に比べ勤務時間が若干短くなりますが、夜勤・準夜勤に比べるとその差は大きくないでしょう。
清潔ケアは患者の入浴、シャワー浴の介助や清拭(患者の体を蒸した綿タオルなどで拭く)を指します。患者の体を清潔に保つための業務です。病院や患者の状態により、午前中に行う場合と午後の早い時間に行う場合があります。
―――――――――――――――――――――――――
夜勤(2交替制)の勤務時間例:16:30~32:30(翌8:30)
準夜勤(3交代制)の勤務時間例:16:00~25:00(翌1:00)
夜勤(3交替制)の勤務時間例:24:30~32:30(翌8:30)
―――――――――――――――――――――――――
3交替制の場合は、夕食から日付が変わる頃までの巡回を準夜勤者が行い、翌朝までの巡回や患者ケアを夜勤者が行います。一方、2交替制の夜勤者は夕方から翌朝にかけて業務を担当します。
病院や業務状況によっても異なりますが、通常2交替制の夜勤者は24:00頃から、3交替の夜勤者は26:00(2:00)頃から仮眠を交替で取ります。日本看護協会では「長時間の夜勤では2時間以上の仮眠をとることが望ましい」としています。
介護施設で働く看護師に夜間の常駐義務はありません。
しかし一部の介護施設では、利用者に安心した生活を過ごしてもらうため、看護師の24時間常駐を実施しています。また夜間常駐がない施設の場合、緊急時に施設から連絡が来たら出勤できるように待機しておく「オンコール体制」を取り入れていることもあるので、施設の勤務体制を確認しましょう。
介護施設で働く日勤の看護師のスケジュールは、病院の看護師と比べて固定的です。急な検査の用意や容態の急変といった突発的な出来事が起こる機会は病院よりも少ないので、休憩時間が大幅にずれたり、残業で業務終了時間が大きく遅れることは少ないでしょう。
一方、新しい利用者が増える時期であれば特別なスケジュールが組まれることもあります。
日勤者と同様に、病院看護師と比べてスケジュールはあまり流動的ではありません。
仮眠については病院と同様、長時間の夜勤の場合は2時間以上まとめてとることが推奨されています。
業務内容としては、食事介助や排泄介助は原則、夜勤の介護士が行います。ただし、夜勤の介護士も人数が限られているため、施設や状況によっては看護師が介護士と同様の業務を行う場合もあります。
利用者の容態が急変するなどの緊急時には、医師への連絡や応急処置など、現場の中心となって対応する必要があります。
厚生労働省の「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の平均給与は月額35.2万円です。
病院と介護施設では給与にどのような違いがあるのでしょうか。また、病院や介護施設の種類によって給与に違いはあるのでしょうか。それぞれの給与について詳しく見ていきましょう。
勤務先 | 税込み給与総額 |
病院 |
386,046円 |
診療所 |
354,563円 |
※勤続 9.15年・平均年齢42.2歳・正規雇用(フルタイム)の看護職員の場合
(出典:日本看護協会「2021年 看護職員実態調査」)
ベッド数が多い病院は夜勤も増えるため、診療所に比べ平均給与が高い傾向にあります。病院のなかでも救急医療に対応する病院はオンコールも多いため、さらに手当等で給与の総額が増えるのが一般的です。
施設 | 平均給与 |
介護老人福祉施設 |
436,875円 |
介護老人保健施設 |
462,955円 |
特定施設入居者生活介護 |
419,753円 |
認知症対応型共同生活介護 |
379,779円 |
通所介護 |
372,883円 |
訪問看護 |
452,951円 |
看護小規模多機能型居宅介護 |
437,003円 |
(出典:厚生労働省「令和5年度 介護事業経営実態調査結果」)
上記データは施設から看護師一人当たりに支払われている平均額を示しています。各種手当や時間外勤務分の給与も含まれていると考えてよいでしょう。
介護施設は勤務する施設や事業所の違いによって看護師の給与が異なります。通所介護事業所(デイサービス)のように、夜間の稼働がなく夜勤手当が発生しない施設や事業所では平均給与は低い傾向にあります。
病院で働く看護師といえば花形のようなイメージもありますが、実はメリットもあればデメリットもあります。それぞれを比較してみましょう。
看護師が病院で働くことの大きなメリットは医療行為を行う機会の多さです。
医療に携わりたいと志して看護師になったのであれば、外せないメリットといえるでしょう。回復していく患者の様子を間近で感じられると大きなやりがいになるはずです。
また近くに先輩看護師や医師が多くいるので相談もしやすく、スキルアップに繋がりやすい環境です。
病院勤務のデメリットとしては、夜勤やそれに伴う生活の不規則化でしょう。
入院病棟がある病院では基本的に夜勤が発生します。平均して月4・5回ほどですが、病棟によってはこれよりも多い場合も。
また、夜勤がない病院でも、呼び出しがあればすぐに出勤しなくてはならないオンコール体制をとっている可能性があります。
さまざまな職種のスタッフと働く介護施設での勤務にはどのような特徴があるのでしょうか。介護施設で働く看護師のメリットとデメリットを比較してみましょう。
病院勤務ではよくある急性期の患者を担当することがないので、心身ともに負担が少ない点は介護施設勤務のメリットでしょう。それに伴い医療行為を行う場面も病院勤務と比べて格段に少なくなります。医療行為の経験が少ない、またはブランクがある看護師にとっても働きやすい職場です。
また、介護施設の看護師は残業がほとんどなく、夜勤がない施設も多いため、プライベートで子育てや介護を担っている人も仕事との両立がしやすいといえます。
介護施設には基本的に医師が常勤していないので、ひとたび利用者の容態が急変すると看護師が先頭に立って対応しなければなりません。回数が少ないとはいえ、大きな責任が集中するので、人によってはプレッシャーに感じるでしょう。
また、通常業務で医療ケアを行う場面が少ないため、医療面でのスキルアップに繋がりにくいというデメリットもあります。病院と比べ、勤務している看護師数も少ないので相談したりスキルを学ぶ機会が少ない点も注意が必要です。
病院 | 介護施設 |
・多くの患者さんと接したい人 |
・コミュニケーションをとるのが好きな人 |
役割や働き方が異なる病院の看護師と介護施設の看護師。それぞれに向いている人の特徴を見ていきましょう。
病院は患者が代わる代わる入院や退院、通院を繰り返す場所です。介護施設と比べて入れ替わりが激しいので、多くの患者や症例に触れたい人に向いているでしょう。
また医療従事者としてスキルアップしたい人にとっても、同僚たちの技術や経験を間近で学べる場所といえます。
さらに、夜勤やオンコールに対応できる十分な体力を持っていることも欠かせません。
介護施設では利用者とこまめにコミュニケーションをとり、日々の体調を把握する必要があります。コミュニケーションに積極的な人、そこからさまざまな変化に気づくことできる人は介護施設の看護師に向いているでしょう。
また介護施設は夜勤が少ないため、子育てや介護といったプライベートと仕事を両立したい人にもおすすめです。
病院・介護施設どちらで働くにしても、必要なのは看護師の国家資格なので、両者間での転職は可能です。
どちらに転職するにしても、働き方や給与、同僚の人数など自分にとって大切なものの優先順位を考えて選びましょう。
特に介護施設の看護師は比較的定員が少なく、入れ替わりもあまり発生しないため、求人が少ない傾向にあります。介護職の求人サイトなどをこまめにチェックしておくとよいでしょう。
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病院勤務の看護師と介護施設勤務の看護師の間には、目的や対象者のほか、給与などの待遇にも違いがあります。
ただし対象者へ医療ケアを行うという業務の根本は同じなので、どちらを選択しても看護師としての仕事を充実させることはできるでしょう。またどちらかで働いた経験がもう一方で役に立つこともあります。自分が希望する働き方を洗い出し、どちらが合っているのか考えてみるとよいでしょう。
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